「popIn Aladdin」を開発し、売り上げも好調でしたが、40歳を機に新たなことに挑戦したいという思いと、近年健康診断の結果が右肩下がりだったことから、自身の健康と家族の健康を守れるような事業を始めたいと考えました。そこで、子供から高齢者まで幅広い世代が無意識に健康管理ができるサービスとして、体重計とバスマットを一体化した「スマートバスマット」を開発しました。

中国に住む両親とインターネット通話でコミュニケーションを取っていましたが、父が、亡くなる3カ月くらい前からやせていったんです。しかし、自覚症状も違和感もなかったため、本人も周りも気付かなかった。そんな経験から、意識せずとも体重を管理できるものがあれば、異変に気付くことができたのでは、と離れていても家族の体重の変化を共有できるものを作りたいと考えました。

「体重測定」ではなく体重の増減が分かる「体重管理」をすることと、それがストレスなく続けられることが重要だと考えました。そこで30個ほど体重計を購入し、自宅の台所や玄関、リビングなどさまざまな場所に置き、どこに置くと邪魔にならないのか、家族の反応を見ながら試行錯誤して、発想してから約1年で「スマートバスマット」が完成しました。

100年後の世界では、自宅にさまざまなセンサーが付けられ、生活の中でバイタルデータを検知し、変化が起きた時だけ知らせてくれるようなシステムが構築されるのではと予測しています。例えば、歯磨きをすると、ウイルスや菌を検出したり、鏡をみたら、血圧や体温を測定できたり、日常生活に溶け込んだヘルスケアが実現できると考えています。

そして、健康を考える上で一番簡単で、基本となるのが「体重管理」です。世界でも生活習慣病は大きな問題であり、体重と相関関係があることが分かっています。肥満はもちろん、睡眠の質も体重によって変化します。「体重管理」ができると、さまざまな病気のリスクを下げられます。しかし、体重計は多く普及していますが、体重を測定するものであって体重を管理するものではありません。

さらに、アンケートで、女性は現実逃避、男性は面倒くさいという理由から、体重計を持っていても乗らないことが多いという結果が出ました。体重計に乗らなければ体重管理はできないので、毎日乗り続けることが重要です。ある一定期間は意識することでできても、それを続けるためには日常生活の中に溶け込んでいる形がいいと考えました。また、同じ時間帯に同じ状況で測ることを考え、入浴後に自然と乗ることが可能な「スマートバスマット」にたどりつきました。

開発に当たって、最も重要視したのが、プライバシー保護です。家族で「体重管理」は共有しても、数値まで見せる必要はないと思いました。お互いにアカウントを作り、リクエストし合うことで、離れていても見ることは可能ですが、数字は非表示にして体重の増減の傾向のみ共有することができます。

また、家族一人一人のニーズに合わせた体重管理ができます。「ダイエットモード」「健康維持モード」のほかに、子供の成長を記録できる「チャイルドモード」や、おなかの子供と母親の体重が管理できる「マタニティモード」を用意しました、これらすべてのモードでは、遠く離れて暮らす家族の体重を見守ることもできます。また、持病に関与するデータを管理する「持病ケアモード」を準備しています。

このように日常生活に溶け込んだ健康管理をすることで、家族の思い出になる楽しい時間が増えると思います。日本は、平均寿命では世界トップといわれていますが、健康寿命は短く介護が必要な方が多いのが実情です。しかし、一人でも多くの方の健康意識を高められれば変化が期待できます。また、ダイエットはどのようにして太ったかを見て、生活習慣を見直すことが重要なので、今後はヘルスコーチングなど、ユーザーに寄り添ったサービスを提供していきたいと思っています。