2023.01.18

Googleの新オフィスに見るサスティナブル。

世界各地で個性的なオフィスを展開しているGoogle。2022年には、かねてより進めていた本社新社屋の内部を報道陣に公開した。2017年の着工から5年の歳月を費やした社屋は、自由で開放的な雰囲気を持ちながら、レイアウトフリーの柔軟さを持つ。最も大きな特徴は環境への配慮だ。最新技術を導入し、外部からの電気や水の使用を極力抑えている。公開した新社屋に、サスティナブルにも配慮するGoogleの本気度を垣間見た。

構想から14年を費やした新オフィス「Bay View」

2022年6月27日、Googleは米カリフォルニア州マウンテンビュー市に建設した新オフィス「Bay View」を公開した。名前の通り、サンフランシスコ湾に面したオフィスは近未来的な外観が特徴だ。Google社が新社屋の計画を発表したのは2008年のこと。そこから14年を費やした一大プロジェクトである。2015年に一度完成予想図を発表しているが、かなり趣を変えている。広さ170万平方メートル、およそ東京ドーム36個分の敷地内には8万平方メートルのオープンスペースと、2つのオフィスビル、イベントセンター、短期従業員用宿泊施設を備えた。オフィスビルの外観は、まるでテーマパークやパビリオンを思わせるデザインとなっている。

人と人がつながるオフィス

最も大きな建物は2階建てだ。窓が多く明るく開放的な室内は、1階部分に会議室やカフェなどの共有スペースを設けるとともに、一定の間隔でソファなどを置いた中庭と呼ばれるスペースを配置。ミーティングや談笑など、思い思いの方法でコミュニケーションを取ることができる。窓が多い造りになっているが、自動ブラインドを設置しており、光量を調節し明るく、かつ働きやすい環境づくりを徹底。2階は主に執務室で、ミーティングルームのほか、一人ひとりの執務スペースも設けている。周囲の音を遮断し、集中して仕事をしたい場合にはボックスタイプのスペースも用意。少人数での会議ができるスペース、ビデオ会議ができるスペースなど、ミーティング一つとってもさまざまなシーンに対応している。2階全体に壁を設けず、大きなひとつなぎの空間とすることで、人とのつながりを感じられるようにしたという。

フレキシブルな構造

また、執務エリアは業務の柔軟性にも対応している。オフィスの机は可動式で、間仕切りなども簡単に変えられるフレキシブルな構造を採用。自由に配置の変更が可能で、打ち合わせスペースのレイアウト変更も容易にできる。Bay ViewはGoogleとして初めての自社設計となる社屋だが、開発担当ディレクターは事業のスピードに合わせて進化させられるオフィスを目指したという。さらに敷地内には、240室の宿泊部屋を有する「Bay View Suites」を設置、泊りがけの滞在も可能だ。広い駐車場に加え、1000人が収容できるイベントセンターも併設される。この社屋を使用するのは基本、約4000人のGoogleマーケティングチームだ。

環境エネルギーの活用

新社屋でもっとも大きな特徴となるのが、環境への配慮と言える。広大な建物の屋根には「ドラゴンスケール」という太陽光パネルを一面に配置し、まるで龍の鱗を思わせるパネルは総数9万枚に及ぶという。オフィス全体の太陽光発電パネルの供給エネルギーは7メガワット。これだけで敷地内で必要な電力の4分の1を賄うことができてしまう。さらに近隣の風力発電システムも併用すれば、運営の9割を再生エネルギーだけでカバーすることが可能だ。使用する太陽光パネルは特殊なコーティングをしたプリズムガラスのパネルで、近隣を通過する飛行機や車の妨げとなる光の反射を抑えているという。もちろんキャンパス内はオール電化。7カ所あるカフェテリアでもガスは使用せず、全て電気コンロを使用している。地熱を活用した冷暖房を導入しており、従来に比べ冷却水を90%削減している点も特筆すべきところだろう。

サスティナブルな社会をめざす

環境への配慮は電力だけではない。トイレ排水、冷房など、キャンパス内で使用する非飲料水は地域にあるインフラは使用せず、敷地内で排出した水を再利用する。すべての雨水と排水を収集、処理、再利用するため、独自の排水システムを構築したのである。また、屋根の形状は雨水を集めやすい「ウォーターポジティブ」をめざした形状になっている。
Googleは2007年にカーボンニュートラルを達成。2017年には電力を100%再生可能エネルギーに切り替えた。今後、サスティナブルへの取り組みとして、2030年までに自社データセンターやオフィスで使うエネルギーを常時再生可能エネルギーで賄うと宣言している。新オフィス「Bay View」はその試金石となるに違いない。