2022.09.05

AI時代の到来に伴う、 ダイバーシティの動向を探る旅。

AIの時代が到来した。とは言いつつも、その言葉だけが一人歩きしている印象は否めない。私たちの日常に人工知能を備えたロボットが馴染むまでは、もう少し時間がかかりそうだ。しかしながら、その発展は日進月歩。グローバルビジネスの先端を走るシリコンバレーに至っては、AIの研究開発が日々重ねられ、様々なAI実用化に向けた取り組みが着々と進められている。 そうした進化を探るべく、2018年の夏に我々は渡米。有名IT企業ひしめくシリコンバレーを訪れ、今もっとも熱いダイバーシティの動向を探ってみた。

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シリコンバレーに見る、企業の現在地

そもそもシリコンバレーとは、アメリカ西部のカリフォルニア州サンフランシスコ沿岸周辺に位置するサンタクララバレーおよびその周辺地域の名称だ。
特定の一箇所を公的に指す地名ではなく、ある程度広い地域一帯の通称として使用されている。
 名称は、多数の半導体メーカー(半導体の主原料はケイ素、英: Silicon)が集まっていたこと、および地形(渓谷、英: Valley)に由来しているそうで、Facebook、Google、Apple、Intel、Yahoo!といった、誰もが知っている超有名企業が乱立している地域としても知られるようになった。グローバルビジネスの最先端と言われる所以も頷けるが、また一方で、近年ではサンフランシスコ側に数多くのスタートアップ企業も進出しており、airbnb、Uber、Twitter、pinterestをはじめ、日本でも馴染み深いメルカリもまた、その一つに名を連ねている。

Googleが模索する、AIサービスの強化

 グローバルビジネスの動向を探る上で、まずはじめにご紹介したいのがGoogleだ。企業や開発者向けにAIサービスの強化を図っているこの世界的企業は、2018年7月に開催された「Google Cloud Next ’18」においても、AIを開発者にもたらすこと、さらなるAI機能を自社のクラウド製品全体に統合することなどについて具体的な戦略を明らかにしている。
 AIはこれまで、Google Cloudにおいて顧客視点で差別化を図るために必要な基盤となっているが、さらなる顧客を獲得するには、これらの機能をより利用しやすいものにする必要がある。Amazon Web Services(AWS)や急成長中の「Microsoft Azure」もその類で、こうした一連のサービスは自社のAI技術を利用した製品を構築しており、利用を開始する上での障壁を下げようと独自の計画が作られている。

機械学習モデルが世界を変える

「Google Cloud Next ’18」イベント初日の基調講演では、Google Cloudの最高経営責任者(CEO)であるDiane Greene氏が投資対象についても語っており、GoogleはAIとセキュリティという2つの主要分野に重点を置いていると述べている。それぞれに投資する理由としては、「セキュリティは顧客にとって一番の懸念事項」であること、「AIが最も大きなチャンスである」といった2つの点が挙げられている。
 またGoogleは、AIをより利用しやすくすることを狙って、「Cloud AutoML」(機械学習モデルの構築を自動化するソフトウェア)の機能を拡大することを発表。AutoMLは2018年はじめに発表されたソフトウェアで、機械学習の専門知識をあまり持たない開発者でもカスタムの機械学習モデルを構築できるようにするものだ。2018年1月には「AutoML Vision」のアルファ版を公開したが、同24日にはAutoML Visionがパブリックベータになることも発表している。Google Cloud AIのプロダクトマネジメント担当シニアディレクターのRajen Sheth氏は、1月にこのサービスを発表して以降、1万8000社がAutoML Visionに関心を示したと述べている。
 そのほかにもGoogleは、「AutoML Natural Language」と「AutoML Translation」を発表し、顧客が簡単に業界固有の言語を考慮したモデルを構築できるソフトウェアまで開発している。

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ディープラーニング活用で進化する仕組み

前述した通り、現在は世界的なAIブームが起きているが、その背景の一つにあるのが、機械学習を利用できるプログラマやエンジニアが不足していることだろう。そのため、各企業間で人材の奪い合いが発生しており、開発のためのハードルが徐々に上がってしまっている。
 そうした現状を踏まえ、Googleは機械学習モデルを提供しているわけだが、たとえばエンジニアのいない出版社などでもAIを活用できる可能性も広がり、今後のビジネスの在り方や我々の働き方に至るまで、様々な環境が大きく変化するきっかけとなるかもしれない。 
 こうしたAIを活用したグローバルビジネスは、もちろんGoogleだけで行われているわけではない。例えば世界的なスタートアップ企業として名高いNVIDIAも、AIの普及を契機に存在感を高めているIT企業の一つだ。
もともとはコンピュータのグラフィックス処理や演算処理を行う半導体であるGPU(グラフィックス プロセッシング ユニット)を開発販売していた同社は、それにより培った知見を活かし、AI時代の地歩を固めつつある。
コンピュータの一部品であるGPUはこれまで、コンピューティングを主に行うCPUとは異なり、一度に大量の計算を必要とする画像の表示を並列コンピューティングで行ってきた。その後、NVIDIAは並列計算能力の処理能力に目をつけ、科学計算等に用いる汎用的なHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)に転用、機械学習やディープラーニングにも応用していくようになったのだ。そうした実績を積んだNVIDIAは自社を「AIコンピューティングカンパニー」と位置づけ、今やIoTとAIの時代に欠かせない存在になりつつある。

最近では、音声認識など特定の分野向けのAIでディープラーニングを活用し、人間と比べても遜色のない精度が達成されるなど、普及に向けてますます品質も上がっているところ。そのディープラーニングに有用なデバイスをNVIDIAが提供していることから注目度も増し、例えばGPUコアと大量のメモリーを搭載した、パソコンやサーバーなどのアプリケーションの処理速度を上げる製品「Tesla」も展開し、ディープラーニングの稼働にも活かされている最中だ。
先に述べたGoogleなどの巨大企業や大学の研究室に至るまで、多くの研究開発機関がすでに「Tesla」を使ったディープラーニングの開発を推進しており、NVIDIAのプロダクトがAIの爆発的な進化を支えている。そのため、NVIDIAもますます無視できない存在になりつつあると言えるだろう。今後の技術開発の動向にも注目したい。

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手島精管に倣う、真のグローバル化

ではここから、日本企業のグローバルビジネスにも着目していきたい。ITやAIの発展とともに、とくにこの数年は日本国内でもグローバル化への動きが加速しており、いわゆるIT企業だけでなく、技術革新を模索するものづくり企業などでもグローバルな視点が求められるようになった。
そして今回、我々とともにシリコンバレーの視察に同行していただいた手島精管もまた、そうしたグローバルな視点を併せ持つ企業の一つに他ならない。

世界トップクラスの医療注射針用精密品メーカー

群馬県館林市に本社を置く手島精管は、1970年に医療注射針用精密ステンレスチューブメーカーとして創業して以来、精密な技術で作り上げられるステンレスパイプを強みに国内トップシェアを誇る企業だ。ステンレスパイプと言うと耳馴染みのない方も多いかもしれないが、いわゆる注射針などの精密品などを扱うトップ企業として、業界でも広くその名を轟かせている。
現在では世界人口増加に伴う各国への輸出を拡大し、代表取締役社長を務める手島由紀子氏主導のもと、2009年にはアメリカ マサチューセッツ州ボストンにマーケティング部門を設立。Teshimaの医療用ステンレスパイプ細管のグローバル化はますます進み、今や世界でもトップクラスの生産量を誇っている。
手島氏は23歳の時に渡米を果たし、7年間の留学。その後、経営を学ぶために36歳でMBAを取得した。10年以上に及ぶ在米経験から、様々な情報と知識、経験則を日本へ持ち帰っている才女でもある。商社勤務をしていた社会人時代は、外国人スタッフとのビジネス環境が当たり前だったことから、若くしてグローバルな視点を培っていたことも、その特異なキャリアの所以かもしれない。

日本と海外でのビジネス思考の違い

日本では新卒後に初めて、社会のイロハを一から学ぶが、アメリカでは学生時代から即戦力になるための実践的教育が当たり前。SWAT分析なども実戦形式で学び、インターンシップでもフルタイムで働きサラリーをもらいながら、社会人としてのイロハを学ぶ。
手島氏がMBA取得のため在籍していたビジネススクールでは、192カ国からビジネスを学ぶための学生が集結し、日常的にグローバル視点を培いながらビジネスを学んでいたという。
「彼らと情報交換をするだけでも大きな学びになります」と手島氏も語る通り、
文化や考え方の異なる人たちの間に入って、ひとつの意見をまとめていくことは大きな学びとなり、自ずとリーダーシップの勉強にもなり得る。グローバルな視点を持ちたい方にはやはり実践が最適なのだ。

インターネットで結ばれた世界に国境など関係ない

手島氏が家業を継ぐ形で手島精管に入社してからは、日本の一般的な企業の価値観と海外とのギャップにカルチャーショックを受け、積極的に世界マーケットを視野に入れた事業を展開。先にも述べたアメリカ進出や海外展示会への出展など、製品や技術をグローバルにアピールしていきながら、その唯一無二のビジネスを加速させている。その結果、欧米をはじめとする海外企業との取引が盛んになり、より直接的でスピーディなビジネスを可能にしている。
「これからのビジネスに置いて、グローバル視点の重要度は増していくでしょう。ビジネスのスピードやコストダウンを図るのはどの企業でも当たり前のことですし、様々な無駄を省くために我々のようなサプライヤーと直接的に取引をしたいというクライアントから多数の問い合わせがあります。インターネットで結ばれた世界に国境など関係ないんです」。

現地でのIoTカンファレンスを通じて

今回、シリコンバレーの視察に同行した手島氏は、現地で行われたIoTカンファレンスにも参加。IoTという言葉を創出したリーハイ大学のブライアン教授にも直接面会し、現在もFacebookを通じてコミュニケーションを続けている。
「私自身も毎月のように様々な国や地域を訪れていますが、とても刺激的なカンファレンスになりました。海外での出会いや経験は、日本に留まっていては学べないものがあるのだと改めて感じます」と話す。
では、そうしたグローバルな視点を併せ持つ手島精管にも、AIなどを活用した技術革新は必要なのだろうか。
「当社の場合は精密部品を扱っていることもあり、パッキング業務などではAIの導入もあり得ますが、技術面での導入は難しい。もちろん可能性はゼロではありませんが、ただ導入すればいいというのではなく、ちゃんと精査を重ねながら併用していくことが重要なのではないでしょうか」。
ただ世界的にみれば、AIの積極的導入は必須だと手島氏は言う。AIを活用した株価予測など、まさにNVIDIAのディープラーニング技術などが、世界を席巻する日もそう遠くはないかもしれない。

企業のグローバル化は成し得るもの

しかし、AIやIoTを活用したグローバルビジネスは日々進化を遂げているものの、そもそもグローバル化とは一旦何なのか。長年世界各地の動向を見つめてきた手島氏に改めてその真意を伺ってみた。
「国内企業ではグローバルという言葉だけが先行しがちですが、最も大事なことは“何がしたいのか”ということ。例えばコストダウンを図るために中国のサプライヤーを探し、取引を開始することもグローバル化に向けたアクションの一つになるでしょうし、自社製品の精度を高めるためにアメリカの技術を導入することもグローバル化になるでしょう。つまり目的を達成にするための有効な手段の一つにグローバル化があるべきで、グローバル化を目的にしてはいけないんです」。
だからこそ、グローバルな視点が求められる。手島氏自身も、欧米をはじめ、インドや中国に至るまで、様々な国や地域にビジネスパートナーや友人を持ち、常に世界中にアンテアを張り巡らせている。
社長就任後は海外顧客を堅調に増やし、手島精菅の過去最高益を達成。その後も売り上げを伸ばし続けている要因はまさに、企業のグローバル化が発端となっている。

転載元:Qualitas(クオリタス)