カルチャー

<河村鳴紘のエンタメ考察記>ゲーム開発はバクチ的 経営者のボヤキと本音

2019年06月14日

2004年11月27日、「ドラゴンクエスト8」が発売され、買い求める人の列ができた売り場=東京都新宿区のヨドバシカメラで


 4月下旬から5月にかけて、ソニーや任天堂など、ゲーム業界の大手企業の通期決算が発表されました。2002年に東京証券取引所が株式市場の活性化を狙って、それまで半年に一度発表する「半期決算」から、3カ月ごとに発表する「四半期決算」にするよう、上場企業に促して定着しました。そのため通期決算の重要性は、以前より薄れています。それでも通期決算は1年間の“成績表”でもあり、重みがあるのは確かです。

 ですがゲーム会社にとって、四半期決算のシステムは、かなり望ましくないことはご存じでしょうか? 理由は、ゲームの開発期間にあたる投資の期間が長いこと、売れ行きが他の商品以上に読みづらく、ロングテール的な売り上げが期待しづらいことにあります。企画段階で「いける!」と思った期待の新作ゲームが、完成して実際に遊んでみると「予想と違ってダメだった」というのは、ありえる話なのです。ゲーム開発は、バクチの要素が強いといわれるゆえんです。

 ゲームファンからのネットの書き込みで「いくら時間がかかってもいいから、良いゲームを作って」という意見を見かけますが、それを「是」とする人は多いと思います。しかし、投資家から言えば「計画通りに作って良い成果を出し、利益を株主に還元しろ」となります。両者の意見は、立場の違いがそのままに出ているわけで、水と油の関係といえます。

 ところがゲーム会社の経営者は、その両者を納得させる必要があり、板ばさみの状態です。近年はSNSの発達で、個人の発信力が強くなっていますから、余計にかじ取りは難しいでしょう。

 セガサミーホールディングスやバンダイナムコホールディングスなどここ20年で少なくない数の大手ゲーム会社が合併したのは、開発費の高騰などもあるのですが、短期で数字を作る必要のある四半期決算の影響も無視できません。ゲーム会社は、1年以上の長い期間をかけ、数週間で売れ行きが決まってしまう商品を作るのに、3カ月に1回、数字を作る必要があるわけです。そうなると、優れた“成績表”を作るため、現在の売り上げが好調であればゲームの発売時期を来年度にずらすことも大切になります。

 投資家の納得する数字を作らないと、会社の経営が大変になり、社員(ゲームクリエーター)の立場も不安定になるわけです。しかし、1日でも早くゲームをやりたいファンには、この論理はなかなか理解できないでしょう。繰り返しますが、ゲーム制作はバクチの要素が強いのに、経営的には安定を求められるという難題があるわけです。

 古い話になりますが、スクウェア・エニックスが合併する前のエニックスでこんな話がありました。エニックスはご存知の通り「ドラゴンクエスト」という人気タイトルを持ち、黒字経営をしながら、見合う評価(株価)を得ていないのが、当時の記者たちの感想でした。そのときの決算会見で、経営陣から「四半期決算は、収益を得るまでに時間のかかるゲーム会社には厳しい」というボヤキを聞きました。他のゲーム会社でも、似たことを何度も聞いたので、ゲーム会社共通の本音なのでしょう。

 しかし不満があっても、上場する以上は、ルールに従い、しかるべき成績を上げる必要があるのも確かです。古くはファミコンのヒット、最近ではスマホゲームのヒットで多くのゲーム会社が上場し、数字のやりくりをしながら懸命に頑張っているわけです。ゲーム会社の決算数字をじっと見てみると「お疲れさま」と、つい同情してしまうのです。

河村鳴紘(サブカル専門ライター)
ゲームを愛するものの、ゲームには愛されないヘタレなゲーマー。ゲーム好きが高じて、記者として兜倶楽部にも出入りし、約20年間ゲーム業界を中心に取材をする。アニメやマンガも大好き。

河村鳴紘のエンタメ考察記
https://news.yahoo.co.jp/byline/kawamurameikou/

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