カルチャー

<エコノミストTV>東洋ビューティ増井勝信社長 急成長の化粧品製造 佐賀からアジアへ

2019年05月07日


 
 注目のビジネスの裏側や気鋭の経営者の思いを探るインターネット番組「エコノミストTV」。今回は、アジアを中心としたインバウンドや海外需要が急速に伸びている化粧品製造で、他社ブランドを製造するOEM、製品開発から請け負うODMなど受託製造大手の東洋ビューティ(大阪市)の増井勝信社長に、今春完成した佐賀県神埼市の新工場建設の狙いと、急成長する化粧品市場の展望を聞いた。
猪狩淳一(毎日ブランドスタジオ・プロデューサー/記者)

ガラス張りの窓が特徴的な東洋ビューティ佐賀工場


◆急成長する化粧品受託製造
 経済産業省の生産動態統計によると、2016年の化粧品国内出荷額は19年ぶりに最高額を更新し、17年もさらに増加1兆6370億円を記録した。〝爆買い〟に代表されるインバウンド需要と、成長するアジア諸国を中心とした現地需要の急激な伸びが大きな要因となっている。受託製造では、改正薬事法施行による規制緩和で、既存メーカーに加え、新規参入企業からのアウトソーシングで進み、矢野経済研究所の国内化粧品受託製造の市場規模推移と予測では、17年度は事業者売上高ベースで、前年度比110・2%の2900億円と大幅に拡大し、18年には3000億円を突破すると予測されている。

化学の実験器具が飾られた研修スペース


◆化粧品市場支える老舗
 東洋ビューティは1941年、寿化学工業として創業し、「プリンス」の商標で化粧品ブランドを展開し、1970年代からOEM、ODMに特化し、スキンケア化粧品を中心に国内外の約300社に、年間約4万トンを出荷している。
 大学院で有機合成化学を研究していた増井社長は、大学の先輩となる同社の故柴山裕治常務から「就職するならうちに来ないか」と誘われたのをきっかけに入社した。「当時、研究者は私と先輩と2人だけ。当時の化粧品業界の研究者は男性ばかりでした」と振り返る。
 研究開発から品質管理など「ものづくり」の流れを担い続けてきた増井社長は、独自ブランドからOEMへと展開した時代に、「OEMは裏方。1社だけに頼ると、相手の経営状況に左右される」と危機感を持った。2000年代に入って開発にもコミットするODMへの転換を進め、2017年、社長に就任した。「化粧品はイメージだけでなく、お肌にどういった効果があるかなどエビデンス(証拠)が求められるようになった。そうした商品を自社で開発し、メーカーに提案していく体制を作らなければならない」と研究職を大量に採用し、同社の2割近くとなる130人にまで増やし、さらなる体制強化を目指している。
◆「開かれた工場」を
 そして今年4月、佐賀県神埼市に新工場を建設した。敷地面積3万9千平方メートルという広大な土地に延べ3万2000平方メートルの巨大なものとなった。同社にとって栃木、三重に続く国内三つ目の生産拠点で、増井社長は「東日本大震災で栃木工場が被災し、備えの重要性を痛感した。関東、中部、九州に拠点を配置し、新工場だけでも既存工場すべてを合わせた生産量をまかなうことができるので、BCP(事業継続計画)上も大きな意義がある。佐賀県は地理的にも韓国や中国などアジア諸国に近く、唐津市で化粧品産業の集結を目指す『唐津コスメティック構想』もあり、業界への理解も深い」とその意義を語る。

休憩スペースには大広間のような座敷が

 そんな新工場のテーマは「地域と共存する工場」だという。「とても工場には見えない」と自負するガラス張りの明るいデザインで、ビーカーやフラスコなど実験器具をおしゃれに展示したオープンスペースを設け、地域の子供たち向けの化学教室などのイベントを開くという。
 木のテーブルや緑をふんだんに取り入れたカフェテリアは、工場の食堂とは思えない雰囲気で、大広間のような座敷や最新のマッサージ器、ボルダリングができる壁を備えたリフレッシュスペースは、欧米のIT企業のようなぜいたくな作りとなっている。増井社長も「プロジェクトチームを作って、いろいろなアイデアを出してもらった」と笑顔を見せる。

東洋ビューティの増井勝信社長


 もちろん生産拠点としての機能も最新鋭の設備で、労働人口減少に対応した自動化に対応しながら徹底的な品質管理にも努めている。増井社長は「ものづくりの会社ですから、お客様に求められるものを作るのはもちろん、品質が第一」と胸を張る。
 増井社長は、新工場の狙いの一つに「働く人にいい環境を提供し、誇りを持ってもらう。それを地域の人に見ていただくことで、『こんな会社で働きたい』と思ってもらえるようにしたい。地域の雇用を引き出し、企業のブランド向上につながる」と語る。
◆100年企業を目指し
 今後について増井社長は「100年成長を続ける会社を目指す」という。「OEMは下請けという考え方があり、受け身で仕事をしがちだが、お客様をパートナーとして、さまざまなご要望に合わせてサポートしながら、共に新しい商品を生み出していく。社員の意識改革を進めていくことが重要だ」といい、ODMを積極的に拡大し、年間600〜700もの新製品を開発している。

国内最大級のタンクの前で説明する東洋ビューティの増井勝信社長

 海外展開については「まずは日本市場でしっかりした地盤を築き、中国をはじめ、人口が多く、日本人と肌質が似ているアジア圏でOEM、ODMの足場を固める。そのためにも開発力と高品質の商品を生産できる人材の確保が課題だ」と力強く語る。
 将来を見据える増井社長のリフレッシュは散歩だという。大阪市内の自宅の周りを2時間以上歩くこともある。「歩いている時は何も考えない。それがリフレッシュにつながる」と話す。さらに中国の古い歴史を学ぶことも趣味だ。「小説ではなく、歴史書を読む。真実を探求することは化学の研究にもつながる。研究者は一つの真実を求めて、探求することが最大の楽しみなんですよ」と笑顔を見せた。
 「一日一日着実に進歩していく」と語る増井社長。新たな商品を開発しながら、徹底的な品質管理で市場の信頼を勝ち取っていく。その積み重ねで国内から海外を目指す。まさに〝研究者マインド〟を原動力に、100年企業に向けて一歩一歩確実に歩みを続ける東洋ビューティ。日本のものづくりを引っ張っていくのだろう。

東洋ビューティの増井勝信社長が愛用する手帳


◆私のビジネスアイテム
 東洋ビューティの増井勝信社長がこだわるのは手帳だ。「手帳の高橋」でおなじみの高橋書店のA6サイズの手帳「No.213 リシェル3」を愛用している。「アナログ人間なので……」と照れ笑いしながら、「スマホだとその日その日のスケジュールしか見えない。手帳なら前後の流れが分かるのがいい」。さらに「自分の手で書き込むことで、頭に入る」と語る。いかにも研究者らしいこだわりだ。
◆プロフィル
1978年近畿大学大学院修了後、東洋ビューティ入社。化粧品の開発職で約19年、その後工場管理職、生産本部、品質統括本部、イノベーションセンターの研究開発本部などを経て2017年から現職。

新着記事

 

ランキング

キーワードから探す