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<エコノミストTV>日本の自動車産業の危機 メカニック専門派遣会社の挑戦

2018年9月3日

◆深刻化する整備士不足

日本の基幹産業である自動車産業。一方でディーラーや検査機関などでの整備士不足が深刻化している。若者の車離れが進み、整備士を目指す若者もここ10年で半減、整備士の高齢化も進み、電気自動車や自動運転など技術の変化への対応も課題だ。世界有数の車検制度に支えられる日本の自動車の安全性をも揺るがしかねない整備士不足に、正面から取り組んでいる「レソリューション」。の廣谷旭社長。日本の自動車産業が抱える課題への挑戦を追った。
猪狩淳一(毎日新聞ビジネス開発本部委員)

 

◆専門学校入学者数は半減

一般社団法人日本自動車整備振興会連合会によると、2017年の自動車整備士数は33万6360人で2011年の34万7276人から約1万人減少した。自動車整備の専門学校入学者数(全国自動車大学校・整備専門学校協会調べ)も2003年の12万3000人から2016年には6万8000人に半減。自動車整備士の有効求人倍率は2012年の1・07倍から2・90倍(2017年)に上昇しており、整備事業者へのアンケートでは約半数が整備士不足を訴えている。

レソリューションは、自動車整備士に特化した人材派遣会社だ。廣谷氏は大手派遣会社時代、「大きなキャパのあるマーケットは何か」と考え、就業人口の約1割を抱える自動車産業に目を付けた。いわゆる町の自動車ディーラーは「分解整備事業者」に当たり、工員の一部は必ず国家資格を持った自動車整備士でなければならない。廣谷氏は「ニッチな部分に参入したいという思いが強く、調べると自動車整備士に特化したものは存在すらしていなかった」と、2005年に起業した。

 

◆メカニックの二極化

整備士の減少について、廣谷氏は「最大の原因は少子化。そして、大学全入時代といわれる中、わざわざ2年制の専門学校を目指す人が減っている。さらに若者の車離れがある」と分析する。だが、「自動車の保有台数は緩やかに右肩上がりなのに、メカニックは減っている。需要と供給のバランスが完全に崩れている。そこにビジネスモデルがあると考えた」と語る。実際、認証工場数は約9万と10年間ほぼ横ばいで、売り上げも5兆円台で推移している。

人材不足の中で派遣会社の存在価値はどこにあるか。廣谷氏は「メカニックは二極化している」という。自動車ディーラーに就職した自動車整備士は3〜5年で営業に配置転換されるケースが多いといい、「整備士のように車の知識を持った人が営業になって接客するのは理にかなっているが、メカニックには『ずっとメカニックでいたい』というタイプが多いので、それで退職してしまう」と話す。さらに「国家資格にもかかわらず整備士は(給与面で)冷遇されている。そこを改善していきたい」と訴える。

 

◆人材確保と待遇改善も

 

レソリューションの派遣先は7割が大手の自動車ディーラーで、2割がメーカーのリコール対応、残りがカー用品店や大手の民間車検場だ。「ディーラー各社のチャンネルを持っており、正社員採用を前提とした紹介予定派遣がほとんど。メカニックにとっては年齢制限がない非公開の求人案件で、待遇も良く、最終的には正社員になれる。ディーラーにとっては我々がきちんとチェックし、再教育もした優秀なメカニックを採用でき、定着率も高い。双方にとってメリットがある」と自信を見せる。さらに同社では大手損保会社と提携した整備士の研修制度を導入。電気自動車については独自のカリキュラムを提供するなど技術革新への対応も進めている。

 

実際にレソリューションから派遣を受けているトヨタカローラ千葉宮野木店の下谷貴行店長は「整備士不足の中、経験のある人材を発掘してもらえるのはありがたい」と語る。同店に派遣され、正社員登用予定の高橋和生さん(39)は「それまでは取り付けの仕事だったので、整備士としての仕事ができ、待遇も良くなった」と語る。

 

◆学校開設目指す

 

優秀な整備士の確保が最大の課題となるが、同社では外国人留学生の受け入れと専門学校生への支援を進めている。現在同社で派遣している社員約1000人のうち1割近くは外国人留学生だという。同社では、ベトナムとネパールの通訳兼管理担当を配置し、受け入れ体制を整えており、さらに3〜4カ国拡大する準備をしている。廣谷氏は「外国人留学生は2年間専門学校で学び、2級整備士以上の資格を持っている。非常に優秀な人材も多く、定着率も高い」と評価する。

専門学校生の支援では、自動車整備技能登録試験の過去問題集をアプリにして無料で提供し、求人情報も掲載している。全国約250校の大学、短大、専門学校、陸上自衛隊武器科への会社説明会でもアプリ登録を進めている。「レソリューションに入社しなかったメカニックでも将来どういうつながりになるか分からないので、常につながりを持つようにしている」という。さらに2年前から整備士の専門学生への奨学金制度を実施している。廣谷氏は「経済的理由で続けられない学生さんの話を聞いていた。そういう人に限って優秀な人が多く、最初は学校から相談を受けて、我が社としてすぐに取り組めることとして取り組みました」と語る。

廣谷氏は「自動車整備士を目指す専門学校をつくりたい」と夢を語り、「そのためにも全国展開を果たして、2020年には株式公開を目指したい」と前を見据える。

戦後日本の成長を支えてきた自動車産業を支える整備士。レソリューションが、深刻な人材難に新たなビジネスモデルでどう挑むか、注目だ。

 

◆私のビジネスアイテム

 

レソリューションの廣谷旭社長の一品は、レーシングカーのミニカーだ。同社は2015年、国際自動車連盟(FIA)公認の国内最高峰のツーリングカーレース「スーパーGT」GT300クラスに参戦した「B-MAX NDDP RACING」チームのスポンサーとなった。ミニカーは、チームが優勝したのを記念して作られた限定モデルで、「お付き合いいただいた取引先の方や社員、優秀なメカニックに配布させていただきました。自分の部屋にも大切に飾っています」と語る。