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<エコノミストTV>キャピタル・アセット・プランニング FTとITの融合で挑む 人生100年時代のライフプランニング

2018年7月27日

英ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏が人生100年時代の人生設計を説いた「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)」が世界的ベストセラーになり、超長寿社会のライフプランが注目されている。雇用、年金、医療保険など制度への不安もあり、老後の家計をどう支えるか、という社会課題を最新のフィンテックで解決したいと語る「キャピタル・アセット・プランニング」の北山雅一社長。金融とITの融合にいち早く取り組み、生命保険や証券、銀行などの金融機関向けのシステムソリューションを提供してきた同社の〝人生100年時代〟への一手を取材した。
猪狩淳一(毎日新聞ビジネス開発本部委員)

 

◆会計士からアナリストへ

 

厚生労働省によると、2016年の日本人の平均寿命は女性87.14歳、男性80.98歳で、いずれも過去最高を更新。グラットン氏は2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳まで生きる可能性があるとし、これまでは「教育→仕事→引退」という
スリーステージモデルの人生が、状況に合わせて、学びと労働のステージが繰り返し訪れる「マルチステージ」の多様な人生になっていくと説く。政府も、こうした時代の経済・社会システムのあり方を検討するため、グラットン氏ら有識者による「人生100年時代構想会議」をスタートさせた。

 

総務省の家計調査報告では、2016年の2人以上世帯の平均貯蓄額は過去最高の1820万円で,前年比15万円、0・8%増と4年連続の増加となった。だが、100年時代の人生では、80歳時代の人生に比べ、必要資金も倍以上となり、現役時代の貯蓄だけで老後生活をやりくりするのは難しい。北山氏は「老後に向けた資産運用と相続、事業継承のシステムを構築して、〝フィンテックで幸せな人生を送ろう〟というテーマに取り組んでいる」と語る。

 

大手監査法人で公認会計士として金融機関の監査業務をしていた北山氏は1983年、米国で開かれたファイナンシャルプランニングのカンファレンスに出席した際、表計算ソフト「ロータス1−2−3」を知り、帰国後ソフトを使ってアセットマネジメントを行う「金融マンのためのロータス1−2−3活用法」(日本経済新聞社)を出版。それを見た外資系生命保険会社から出版してわずか一週間で実際にシステムの発注を受けた。北山氏は「公認会計士は企業の過去の財務諸表を見て、財政状態、経営成績の適正表示についての意見を表明するが、アナリストは企業の将来の例えば成長可能性を分析する。企業の過去と未来に関わる仕事がしたい」と、証券アナリストの資格を取得して、1990年に起業した。社名は、同年に米国の経済学者ウィリアム・シャープ氏が提唱し、ノーベル経済学賞を受賞した資産価格モデル「キャピタル・アセット・プライシング・モデル(CAPM)」から取ったという。

 

◆金融制度の変化に適応

 

当時、投資信託、生命保険、変額保険など金融商品が多様化し、販売員が契約者のニーズに合わせた生命保険の組み合わせを提案するシステムを提供。そこから、96年の生保・損保の相互乗り入れ、98年の投資信託の銀行窓販の開始、2001年の確定拠出年金、銀行による生保の販売解禁など金融制度の節目に対応する販売・提案システムを開発し続け、現在約40社ある生命保険会社の約半数は何らかの形で同社のシステムを採用している。北山氏は「金融行政が変わる瞬間というのは、まさにブルーオーシャン。その隙間にいち早く適応して成長するのは動物の進化と同じ」と語る。

 

客前で販売員が使うフロントエンドシステムのため、「操作が簡単で、アウトプットされる提案書は美しく」という二つのテーマを追求。さらにPC、インターネットの普及、人工知能(AI)の進化、デスクトップからノート、タブレット、スマートフォンへとITのシステムとデバイスの著しい進化に対応してきたことから、新時代のライフプランシステムの開発の重要性に着目した。

 

北山氏は「AIの発達で進化速度が最大化するシンギュラリティ(技術的特異点)を迎えると、お客様のニーズに対応した金融商品の最適な組み合わせを販売員ではなく、AIが行う完全自動化の世界が来る」という。だが、「日本の家計金融資産の半分は預貯金で、株式や投資信託は20%以下。米国の個別株式、投資信託の保有比率45%と比べると、日本のアセットアロケーション(分散投資)はガラパゴス化している」と指摘。「ビジネスで成功している資産家、富裕層もファイナンシャルリテラシーはそれほど高くない。特に日本の税制や相続制度は複雑なので、AIのようなテクノロジーとアドバイザーの顧客リレーションで顧客に対し最適な提案を提供するハイブリッド型フィンテックを実現したい」という。

 

◆AIと遺伝的アルゴリズムを活用

 

同社では、個人資産1億円以下の一般層と、10億円以上の富裕層にターゲットを設定、一般向けには完全自動化のライフプランアプリ「Life Sweet」を開発した。アプリは自動家計簿ソフトと連結し、ライフプランと死亡保障、老後保障を同時に設計するというものだ。北山氏は「自分の老後の運用資金が85歳までに枯渇しない可能性は何%か、ということを手のひらの中でシミュレーションできる」と話す。

 

もう一つが銀行のプライベートバンカー(PB)と連携し、融資先の経営者やその家族の事業継承、資産管理を行う「AirPB」と遺伝的アルゴリズムを活用した遺産分割の提案システムだ。「日本の相続税は非常に負担が大きい。さらに中小企業の経営者などは、預金や個人の金融資産以外に自社株や事業用の不動産があって簡単に分割できない。相続税の納税後の資産を配偶者や子供たちに例えば40%、25%、35%というふうに分割したいと思って、税理士がやると2〜3日かかるが、システムなら数秒で答えが出る」と力を込める。

 

こうしたシステムを実現していくため、同社では人材の確保と教育に力を入れている。ITとFT(金融技術)の双方の知識を持った人材を育成するため、北山氏自らが講師となって保険数理やポートフォリオ理論を教えることもあり、約200人のプログラマーの半数近くがAFPやCFPといったファイナンシャルプランナーの資格を持っている。その努力が実り、同社は、日本企業が5社しかランクインしていない2018年の米金融・IT 調査会社「IDC Financial Insights」の「フィンテック・トップ100」で92位に入った。「(ペイパル創業者でシリコンバレーで大きな影響力を持つ)投資家のピーター・ティール氏が著書でいう『ゼロ・トゥ・ワン』、無から新たなものを作る破壊的なイノベーションを実現する、そんな会社であり続けたい」と北山氏は語る。

 

FTとITの統合に20年以上も挑戦し続けてきたキャピタル・アセット・プランニング。まさにフィンテックの先駆者が、超長寿社会という今後の我国の最大の課題に挑み、どう進化していくだろうか。

 

◆私のビジネスアイテム

 

キャピタル・アセット・プランニングの北山雅一社長がこだわるビジネスアイテムは「ボールペンとシステム手帳」だ。フィンテックの先駆者だが、自分の考えをまとめる時は手帳にボールペンで書いているという。ペンはモンブランの「ジョン・F・ケネディモデル」、手帳は定番の「ファイロファックス」のやや小さめのサイズだ。「ペンは重さが非常に使いやすい。手帳は会計士の時に担当していた渋谷西武百貨店の文房具売り場で、いいなと思って以来40年近くファイロファックスを使ってます。内ポケットに入るのが便利」と語る。

 

◆プロフィール

 

1957年生まれ、大阪府出身。79年慶応義塾大学商学部を卒業後、中央監査法人入所。85年、陽光監査法人(現 新日本有限責任監査法人)入所。 「金融マンのためのロータス1-2-3活用法」を出版し、90年に株式会社キャピタル・アセット・プランニングを設立。