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<エコノミストTV>コプロ・ホールディングス「人間力」で人材不足の建設業界を切り拓く

2018年7月24日

注目ビジネスの裏側や気鋭の経営者の思いを探るインターネット番組「エコノミストTV」。第2回は、東京オリンピック・パラリンピックやリニア中央新幹線建設、海外市場への展開などで需要が高まり、人材不足が叫ばれる建設業界で、単なる人材派遣ではなく、「人間力」をキーワードに、働き手を〝創造〟し新たなビジネスモデルを構築して急成長を遂げる「コプロ・ホールディングス」(本社・名古屋市)の社長、清川甲介氏を取材した。
猪狩淳一(毎日新聞トータルビジネス室委員)

◆建設エンジニアの派遣で急成長

 

国土交通省によると、2016年度の建設業就業者数は約492万人で、ピークの1997年に比べ約28%減少し、人手不足が常態化している。さらに55歳以上が約34%、29歳以下が約11%と高齢化が進んでおり、熟練の技能労働者が大量に離職することで技術の継承が大きな課題となっている。一方で、2017年度の建設投資見通しは約55兆円で前年度比4.7%増、10年度の約42兆円から震災復興や景気回復による需要増で伸びが続いている。

 

コプロ・ホールディングスは2006年、大手建設系アウトソーシング会社の〝雇われ社長〟だった清川氏が、建設エンジニア専門の人材派遣に特化した「コプロ・エンジニアード」を起業したところから始まった。「コプロ」とは、「コンストラクション」と「プロフェッショナル」を合わせた造語で「建設業の専門家」を表す。その後、順調に業績を伸ばし、2015年にホールディングス化して、現在従業員数約1,440人へと急成長を遂げている。

 

急成長の理由について清川氏は、「ゼネコンなどのクライアントを含めて建設業界で働いている人たちの絶対数はほぼ決まっているので、その人たちにいかに我々の方に目線を向けてもらうかという努力をし続けること、また新しく建設業界に飛び込んでくる人たちを我々の手で採用して、ビジネススキルや建設の知識を付けてから派遣していけるが鍵となる」と語る。清川氏は「派遣会社はこれまで、即戦力を採用して、クライアントに派遣する単純なマッチングのビジネスと言われていましたが、働き手を〝創造〟するビジネスモデルが必要だと考えました」と話す。

 

二つの課題を達成するキーワードとして清川氏は「人間力」を挙げる。「人間力=自己理解だと考えているんです。まずはしっかり自分自身がどういう人間なのか、他者からどう見られているのか、というところをしっかり理解したところで、自分の長所をより伸ばしていく。己を知るというところを入り口にして、いかにこの会社が大切にしている『人を愛し、愛される会社』という経営理念を実践していくかを、リーダーの私からしつこく繰り返して発信し続けることが大事」と言う。

 

◆社員も〝顧客〟として技術・メンタルもフォロー

 

具体的な施策として、同社は「アカデミア事業部」を置き、「監督のタネ」という教育施設を運営、ビジネススキルや建設の知識、CADなどの専門的な技術を習得させている。さらに営業部以外にES(エンプロイーサティスファクション=従業員満足)部を設置。約1300人の技術社員を〝顧客〟と考え、技術面だけでなく、メンタル面でもフォローしている。

 

清川氏は「従来営業職が新規営業もアフターフォローも両方やっていたが、営業は、自分のインセンティブを上げるため、アフターフォローよりは新規営業に走りがちなので、技術社員にしっかり寄り添っていき、帰属意識を持ってもらいたいと考えた」と語る。

 

このES部は〝雇われ社長〟だった前職から構想していたという。だが、間接部門を設けることで人件費のコストが上がると親会社に反対され実現できず、「すごく違和感があった」と言う。「働き方が多様化して、会社が嫌ならすぐ転職してしまう時代。膨大な採用費をかけて何とか採用した人たちをアフターフォローしていくことは、将来に対する投資、コプロのファンを作っていくことになる」と言い切る。

 

こうして育ててきた同社の強みを清川氏は「全社員が同じ方向を向いて、スピード感をもって同じ課題にチャレンジしていくこと」と話す。さらに、MBO(成果目標)とコンピテンシー(行動目標)を両輪にした人事評価制度を導入し、待遇に反映させることでモチベーションを高め、四半期ごとに全社員が一堂に会して、業績を表彰する「コプロアワード」を実施している。「全社員を集めて、受賞した社員は大いに喜び、他の社員は大いに悔しがることを繰り返すことが大事」と語る。

 

◆高齢化への対応と海外進出も視野

 

同社の次の戦略は、設計会社を設立し、現場に出られなくなった高齢者のセカンドキャリアを提供することと、少子高齢化に対応するため、海外、特に東南アジアに現地法人を置いて、技術者の育成をしていくことだ。その目標に向けて企業価値を高め、IPOを視野に入れているという。

 

そんな清川氏は、「仕事」に「志事」という字を当てる。「『仕事』という字は、仕えて事を成すという意味ですが、すごく寂しくて、つまらないものに感じてしまう。『志事』は志や信念を持って世のため、人のために事を成すととらえています。社内でも共通言語として、壁にぶつかっても強い想いを持ってどうやったら前に進めるかを考える、前向きで熱い社員になってほしいと言い続けています」と語る。

 

ビッグプロジェクトが目白押しだが、課題も抱える建設業界を、「人づくり」にフォーカスして進むコプロ・ホールディングス。特に社員に対しても「顧客満足」を追求するユニークな姿勢が、深刻な人手不足や少子高齢化という社会問題をどう乗り越えていくか、注目だ。

 

◆私のビジネスアイテム

 

「コプロ・ホールディングス」の清川甲介社長がこだわるビジネスアイテムは「万年筆」。幼いころから書道に励み、文字を書くことが好きで、モンブランの万年筆を愛用している。持ち易さはもちろん、比較的筆圧が高いという清川社長は太めのものを選ぶと言い、「相手がなるべく読みやすいように、一文字一文字、一画一画、気持ちを込めて書いています」と語る.