2022.11.18
2100年の世界人口から未来を読む。
国連は2019年、世界の総人口推移の予測を発表した。2020年に78憶人を記録している世界の総人口は2050年には97憶人、2100年には109憶人に達するとしている。しかし、日本の現状を見ると、少子高齢化が進みつつある。世界と日本との差異、人口の増加・減少がそれぞれ与える影響について確認しつつ、今後世界が辿る状況を改めて探ってみたい。

世界の人口推移
日本の総務省でも世界の人口集計と将来の予測を発表している。2020年の時点で78憶の世界総人口はその後も増加を続け、2040年には90憶人を突破。2050年には97憶人に達すると予測している。同時に2100年までの人口の年平均増減率推移を発表しているが、ほとんどの国が減少を続けるとしており、将来的に世界全体で人口増加はゆるやかになっていくことがわかる。また、2021年の時点で、世界で最も人口の多い国は中国で約14憶人。次いでインドの13憶人、アメリカ合衆国の3憶3000万人と続く。日本は11位の1憶2000万人だ。2050年には中国は14憶人とわずかに減少。アメリカは3憶7000万人と増加するが、コンゴ民主共和国が9000万人から1憶9000万人、エチオピアが1憶1000万人から2憶人、タンザニアが6000万人から1憶2000万人、ナイジェリアが2憶人から4憶人など、増加が予測される国も多い。人口が大きく増える国と減少する国、その世界人口のバランスは今後さらに大きく変化していく。
人口増加がもたらす問題
人口が増加した国々では人口密度の問題が発生する。例えば、ナイジェリアはアメリカの1割未満の国土に対し、ほぼ同数の人口が住む計算になる。そして人口の増加と集中は資源消費の増加を生み、水や食料はもちろん、生活物資、さまざまな製品を作り出す原材料が必要になる。工業地域への人口密集、農村の過疎化など、国内での人口移動も起こるだろう。場所により住居や雇用の不足が起こり、経済格差や貧困層が発生することも想定される。実際に中国では、1950年代から60年代の間に起こった人口の急増が食糧危機をもたらした。また農耕地の開発や、樹木の伐採による緑地の減少といった環境破壊、そこに暮らす希少な生物の減少も懸念される。世界的な視野でみると、資源の枯渇、資源をめぐる争いが発生する可能性も大いにある。人口の大きな変化は国の経済はもちろん、諸外国とのパワーバランスや行政のあり方、果ては文化やライフスタイルまで、さまざまな変化を与えるものなのである。
人口構成年齢の変化による影響
総務省の統計で各国の年齢構成をみると、2020年現在、総人口に占める15歳未満の割合は25.4%、65歳以上の割合は9.3%。発展途上国では15歳以下で27.2%、65歳以下で7.4%であるのに対し、先進国全体では15歳未満は16.4%、65歳以上は19.3%と、先進国を中心に高齢化が進んでいることがわかる。2050年の予測では、先進国は15歳未満で15%、65歳以上で26.9%と高齢化はさらに進む。社会の高齢化は労働人口の減少、高齢者のケアによる社会保障費の増加などを招き、途上国における若年人口の増加と相まって仕事や教育、家族の生活安定などを求めて都市部と農村部における人の移動、あるいは国際間の移民も増える可能性がある。これにより、雇用や生活をめぐる人々のトラブルという新たな問題も懸念されるだろう。国連の集計によると、出身国以外で暮らしている人々の数は2019年に2億7,200万人を数え、世界人口の3.5%近くを占めている。
やがて訪れる高齢化・人口減少
とはいえ、人口の増加には良い側面もある。労働年齢人口の増加による経済成長加速だ。近年では中国の経済発展がその良い例だが、日本においても人口の増加による生産と消費の増加により、高度経済成長を果たしている。ただ、こうして世界の趨勢を見ていると、人口は増加から減少、そしてまた増加へと、長期的なスパンで一つのサイクルを繰り返しているように思える。世界の人口増加率がゆっくりと減少しつつあることからも、高齢化や人口減少は全ての国においていずれは避けられないことなのだろう。来るべき人口減少社会にどのように対処していくかは、人類全体にとり喫緊の課題ともいえる。
人口の下り坂に抗う
2022年現在、日本では15歳未満が12.1%、65歳未満が28.7%と、世界でも例を見ない高齢化が進んでいる。2050年には15歳未満が10.6%、65歳未満が37.7%に達すると予測されており、日本国内の3人に1人は高齢者となり、若者の数は10人に1人となる計算だ。厚生労働省では、人口減少問題の歯止めや克服を長期ビジョンとして掲げ、2015年から2019年で総合的な戦略を実施してきた。「しごと・ひとの好循環づくり」と「好循環を支えるまちの活性化」を基本目標とし、地域産業の競争力強化や地方移住の推進、若者雇用対策の推進、多世代間の交流といった取組みを行っている。しかし、2021年の出生数は過去最少となる81万人を記録するなど、少子化に歯止めがかからないばかりか、国の推計より6年早く減少が進んでいることが分かっている。
日本に先立ち人口減少問題に取り組み、克服を果たしたのがスウェーデンだ。1930年代に出生率が低下し、人口減少の危機が現実になると、1938年までに17の報告書をつくり、女性や子育て世帯の支援法を相次ぎ成立させ、社会保障制度の基礎を築いた。子どもが8歳になるまで両親が合計480日の有給育児休暇を取得できるなど、その保障は手厚い。問題提起から90年を経て、2020年にはスウェーデンの人口減少は下げ止まりを見せている。国民性や国内背景の違いといった問題はあるかもしれないが、スウェーデンのように短期間で大幅な改革に踏み切れるかどうかが、人口減少という問題の大きな鍵となるのではないだろうか。近年では交通網や通信網といった技術の発達により、人・もの・情報の流通が容易になった。そうしたアドバンテージも生かし、よりよい未来となっていくことを願うばかりだ。