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<エコノミストTV> “いい人でいよう“どん底から見出した経営哲学 コムデザイン・寺尾憲二社長

2021年10月25日

新型コロナウイルスの感染拡大が続き、テレワークなどのワークスタイルの変化が進んでいるが、コールセンターも感染対策や在宅化などが求められている。コールセンターのシステムに人的サポートを含めて定額で提供する斬新なサービスモデル「CXaaS(シーザース)」を展開する「コムデザイン」は、東日本大震災前からいち早くクラウドに対応し、災害などの緊急時にも強いコールセンター向けのCTI(コンピューター電話統合)システムを開発、業界の常識を破るシステムベンダーとして注目されている。寺尾憲二社長は社長解任や倒産直前の経営危機を乗り越え、業界トップクラスまで押し上げてきた。“いい人でいよう“という社員に呼び掛ける経営哲学にたどり着いた寺尾社長にこれまでの道のりと今後の展望を聞いた。

■伸び続けるコールセンター投資

コールセンターは、インターネット通販や電力自由化、マイナンバー関連など公共分野の需要増もあり、これまで右肩上がりで伸び続け来た。矢野経済研究所のコールセンター市場調査によると、2020年度はコロナ禍で、在宅環境に適しているクラウド型のコンタクトセンターソリューションを中心に企業の投資が進み、1兆154億円の見込みで、今後AI(人工知能)などの新技術の活用なども期待され、伸び続ける見込みだ。

このコールセンターシステムにいち早く乗り出したがコムデザインの寺尾社長だ。1982年、電電公社(現NTT)に入社し、電話とコンピューターシステムの連携を研究してきた。「UNIXが市場に登場して、それを武器にもっと市場に出していこうとするベンチャー企業があって、自分でものを作ってみたい、みんなが使えるようなシステムを作りたいと思った」と91年に転身した。

データベースや開発ツールなどミドルウェアの開発に取り組んだ寺尾社長。「当時まだコンピューターは黎明期で、トップになる会社が見えていなかった。我々がデファクトスタンダードになるんだという思いでやっていました。コンピューターでやれる自由度は非常に大きく、夢のある時代でした」と語る。

■大手を飛び出し挑戦

希望に満ちて新たな道に進んだ寺尾社長。だが、最初の壁にぶつかる。「NTTを辞めてまでベンチャーに入ったわけですから、ミドルウェアを突き詰めて市場に評価してもらいたいという技術志向が非常に強かった。ただ、普通の企業なので、『お金を儲ける』分野に会社の方向を変えていった」という。「当初の志を最後までやり抜きたい」とコムデザインの全身となる会社を立ち上げた。「人と人をつなぐプラットフォームを作りたいという思いで、次世代のコールセンターのアーキテクチャーの開発を手がけました。運よく理解していただける方にも恵まれて、しばらくは順調に進みました」という。

■社長解任! 相次ぐ危機

ところが寺尾社長自身も「大反省です」というターニングポイントが2000年にやってくる。「会社を大きくしないといけないと思い、自分にない部分を一方的に他に求めて、『コムデザイン』を新設合併で興しました。ただ、温度感とか、進め方、外部のマーケット要因とかでいろいろあって、うまくいかず、結果的に解任動議を出されてしまった」という。ところが、新経営陣も立て直すことができず、再び経営に復帰。自宅マンションを抵当に入れ、借金を背負ったが、社員を解雇せざるを得なくなり、収入の道も絶たれた。

5年近く、家族にも負担をかけながら金策に駆け回ったという寺尾社長。「当初考えたCTIのアーキテクチャーが評価されなかったわけではなく、評価されるまでに至っていないと思い、何とか世に評価してもらいたいと思った」と必死で立て直しを目指した。そこで2008年11月、サービスを一番使ってもらえる形としてクラウドによるサブスクリプションでの提供を開始した。当時としては画期的なサービスだったが、「カスタマイズもできて、しかも劇的に安い。機能面、コストを比較すると、どのシステムよりも優れていたのにあまり使われなかった」という。

コムデザイン社内

社員と談笑するコムデザインの寺尾社長(左)


転機は2011年3月11日に発生した東日本大震災だった。「いつでも事務所に行けて、仕事ができるっていうのが普通じゃなくなくなった。仙台のお客様で2週間事務所に入れないという方がいて、クラウドならサービスが継続できるということに気づいてもらえるようになった」といい、単にコールセンターのシステムを提供するだけでなく、利用に必要な人的サポートを含めて提供するサービスモデル「CXaaS(シーザース)」を展開、そこから毎年約20%の伸びを続けるようになった。さらに今回のコロナ禍でテレワークが進んだことも大きかったという。「管理職にしても経営者にしても会社に来て働くことで安心していた。通勤や住宅需要を考えたら、テレワークは、前から合理性のある働き方だったはずで、コロナによって一気に一つの働き方として普及した。クラウドCT1のサービスは非常にフィットしており、追い風になっている」という。

寺尾社長に、危機を乗り越えて成功に導いた理由を聞くと、「社長を解任されるという失敗から学びました。一番は社員に数字を取れなどと上から押し付けること。そして、結果が出ないことに反省を求めるという管理の仕方が合わなかった」という。そこで「良い人でいよう」という言葉にたどり着く。「経営者として、社員を飢えさせてはいけないというプレッシャーから数字、数字、となってしまっていたが、その前にうちのコアコピタンスであるクラウドサービスを理解して、社員みんなでそれをより良くしていくことが一番大事だと気付いた。社員だけでなくお客様も含めて、一緒に考えられるような組織を作るために、お互いにとって常に『良い人でいよう』という言葉になりました」と語る。「CXaaS」にはこの「良い人」というコンセプトが反映されているという。

■社会の変化に「ワクワク」

今後について、「コールセンターの業務、役割はこの先も変わらないと思う。お客様は、ものすごく熱い温度感をもって、企業の人と接したいという思いで電話をかけてくる。ところが、いつもかけても電話中だったり、受ける方が疲れていたり、バランスの悪い状態が続くと、サービスが疲弊する。受け手の負担を減らし、お客様の満足度を上げる方法として、AIが一つのキーワードになる」と考え、AIを提供する企業と組んで、大きな初期投資なしでAIとCTIを連携させるサービスを提供するという。「コールセンターっていう狭いマーケットですが、もっと楽しい、うれしい世の中を実現できる。そういうことを考えると、そっちの方向に向かっているだけでも私自身ワクワクしている」と笑顔を見せる。

大きく社会が変化する中、寺尾社長は先を見据える。「ご苦労されている業種・業態あるかと思いますが、それ以上に環境が変わるときにワクワクしている人たちも多いんじゃないか。生活スタイルが変わるだけと考えて、ギスギスするよりも、みんなが良い人になって、ワクワクして楽しんでやればいい。そんな緩さがあれば、この日本ももっと良くなっていくんじゃないかな」と語る姿に、どん底からはい上がった力強さを感じた。

■私のビジネスアイテム

「リアルフォース」製のキーボード

「リアルフォース」製のキーボード


寺尾社長がこだわるビジネスアイテムは、「リアルフォース」製のキーボードだ。「打感というか、手触りがほかのキーボードとは違って、優しくて気持ちがいい。マニア向けのキーボードで評価されているので、それを使っている自己満足もあって、打ってる時間が楽しい」といい、約20年愛用している。「お気に入りのペンのような、変える気にならない相棒です」と胸を張る。

■プロフィル

コムデザイン・寺尾憲二社長

コムデザイン・寺尾憲二社長


1961年三重県生まれ。82年国立鈴鹿高専卒業後、日本電信電話公社(現 NTT)入社。その後、ITベンチャーの技術責任者を経て、97年6月株式会社フュージョンアルファ(のちの株式会社コムデザイン)を設立。2008年11月からクラウドサービス事業を開始。

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