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<エコノミストTV>グローバルなベンチャー精神で切り開く 日本の冷凍食品市場 CPF JAPAN大西宣正社長

2021年11月01日

鶏肉やエビなどの生産・加工などで世界的なシェアを持つ、タイ最大手の食品メーカー「チャルーンポーカパンフーズ(CPF)」の日本法人である「CPF JAPAN」。タイや中国では圧倒的な知名度を誇るが、日本では業務用素材などを中心に展開してきたため、あまり知られていないが、11月から全国のスーパーなどで冷凍食品の「海老ワンタンスープ」を発売する。大西宣正社長は「食べてもらえれば分かる圧倒的な品質」と胸を張る。グローバル企業ながら、ベンチャーのチャレンジ精神で市場を切り開く大西社長の挑戦とは。

■世界的アグリビジネス企業

日本冷凍食品協会によると、2020年の家庭用冷凍食品の国内工場出荷額(速報値)は前年比18%増の3748億円。外食店の営業自粛などの影響で、業務用は数量が78万トン(13.0%減)、金額は3279億円(14.1%減)と大幅に減少したが、家庭用は数量が77万1000㌧(11.4%増)、金額は3749億円(18.5%増)と大幅に増加。コロナ禍における巣ごもり需要の高まりを反映した。まさにそのタイミングで新商品「海老ワンタンスープ」で一般市場に挑戦するCPF JAPANだ。

CPF工場

海老ワンタンスープの製品を生産するタイのCPF加工工場


CPFは、1921年にタイ・バンコクで開業した種貿易商から動物の飼料生産へと拡大し、エビや鶏の飼料から商品生産まで自社で一括直営管理する、フルインテグレーションシステム(種から飼料、飼料から商品)という技術を開発。中国、東南アジア、ヨーロッパ、米国を中心に21カ国で商品を販売しているアグリビジネス企業だ。

そのCPFが2004年、日本市場参入のためにCPF JAPANを設立。大西社長は当時、大手コンビニエンスストアチェーンの中国駐在として、店舗内で半加工品を調理して弁当などを販売するシステムの整備などを担当。そのころにCPFの中国法人のトップと知り合い、日本市場進出を進めてほしいと要請された。「実は1997年に初の海外出張に行ったのがタイのCPFだったんです。女性の営業職が多い会社で、英語が共通語になっていて、すごいなという印象がありました。ただ最初は、中国でのビジネスを作り上げていたところで、無理だとお断りしたのですが、3年くらいして大体目途が立ったので受けました」と2008年、CPF JAPANの代表に就任した。

■業務用からのスタート

「世界では知られているCPのブランドなので、それを日本で売れと言われましたが、日本の冷凍食品業界は大手2社が圧倒的で勝負にならない。日本の土壌にあった売り方と展開が必要だった」という大西社長がまず手掛けたのが、業務用の冷凍食品だった。「当初は、業務用にはタッチしていなかったが、CPFが日本マーケットで顧客のニーズに近づける商品だったので、業務用でまず核を作り、市販用についてはCPの商品をよく理解してもらえるところを中心にやっていこうとスタートした」という。

スーパーマーケットの鶏のから揚げなどを核に日本市場に入り、大手コンビニエンスストアのPB商品のOEMや、会員制量販店「コストコホールセール」などで実績を上げていったCPF JAPAN。次に手掛けたのは「1キロパック」だった。「家庭で鶏のから揚げを作ると、1回300㌘とかすぐに食べてしまうので、1キロにニーズがあることがコストコさんと10年ぐらい付き合って見えた」と、大手スーパーの冷凍食品の棚に「1キロパック」が並ぶようになった。

ぷりぷりのエビが入った新商品「海老ワンタンスープ」

ぷりぷりのエビが入った新商品「海老ワンタンスープ」


■巣ごもり需要に「海老ワンタンスープ」で挑戦

着実に日本市場に浸透してきたCPF JAPANが満を持して11月、CPブランドの新商品「海老ワンタンスープ」を大手スーパーなどで販売する。「コストコでは、6個パックが世界中で売られている人気商品なんですが、日本ではワンタン自体がメジャーではなかった。ところが、コロナ禍の巣ごもり需要でスーパーでも冷凍食品が売れ、品ぞろえを見直すようになった。日本のコストコでも実績がある商品なので、スーパーでも評価してもらい、1個売りで販売することになった」という。

新商品について大西社長は「稚エビから養殖、加工まで自社で行っているため、鮮度がよくて、品質管理ができた商品が出来上がっている。ほかのカップスープはフリーズドライの具材を入れてお湯を入れる形だが、こちらは凝縮したスープを冷凍で入れており、水をそそいで電子レンジにかけるだけで食べられる。ぷりぷりのエビはもちろん、アジアンテイストのパッケージもほかにないものです」と自信を見せる。

■川上からのイノベーションを

大西社長が次に狙うのは、「世界各国でCPのインテグレーションの拠点があるので、日本独自のインテグレーションや畜産の組み立てを展開したい」と語る。「中国でアフリカ豚熱(豚コレラ)が流行し、養豚事業に大打撃があったが、中国のCPの養豚場は約3分の2が独自のバイオセキュリティシステム(防疫システム)を一早く導入した。このシステムは、アメリカのベンチャー企業のシステムで病気の発生を阻止することができた。これを逆輸入したい」といい、「今後、コロナが収束したら海外からの人流が増え、アフリカ豚熱の流入の危険が高まる。昨年から今年にかけての鳥インフルエンザの発生では何千万羽もの鳥が処分された。CPF JAPANが窓口となって、CPが導入しているバイオセキュリティシステムを日本に紹介していきたい」と明かす。

その先にはさらなるイノベーションを目指すという。「ブロイラー養鶏では、鳥の糞や外部からの大腸菌による病気の発生を一番恐れています。そのために出荷後に鶏舎の殺菌と消毒を徹底的に行います。我々は、逆に鶏舎の殺菌・消毒をしないで悪性の大腸菌を寄せ付けない鶏舎にするテストをしています。これがうまくいけば、殺菌の期間が通常2週間かかるのを2日とかに減らせるので、劇的に生産性が上がる。実現すれば、逆に世界へ展開したい」と力を込める。

挑戦を続ける大西社長は「うちのオーナーはよく『ピンチはチャンスだ』というんですが、今回のコロナのような環境の変化に合わせられた企業だけが生き残っていくわけで、どこにチャンスがあるのか、CPが培ってきた歴史もあり、いろんな意味でチャレンジしやすい会社ですね」と語る。

グローバルな企業でありながらベンチャー的なチャレンジ精神を持つCPF JAPAN。大西社長は「川上から川下に行くにしたがって、フィールドのすそ野は広がっていきます。川上はプレーヤーが少なく、川下が多い。多くのイノベーションは川下で起こっているんです。だからこそチャンスなんです。違う技術、違う発想でできてしまえば、それがスタンダードになる可能性が高い」とさらなる未来を見据えていた。

■私のビジネスアイテム

ビジネスアイテム

大西社長のこだわりのアイテムはペリカンのボールペン


大西社長のこだわりのアイテムはペリカンのボールペンだ。2002年に中国へ赴任するときに友人から贈られた。「それまで決済は印鑑を使っていましたが、海外に行ったら、印鑑を使わない文化なので、『このボールペンで重要な案件をサインしてください』と、いただきました」という。お気に入りの理由は「非常に書きやすくて、丈夫で壊れない。他にも4~5本のボールペンや万年筆を使いましたが、全部壊れました。ただ、このペンだけは常に私の手元にあるんです」と笑顔でサインをしていた。

■プロフィール

大西宣正(おおにし・のぶただ)/1961年2月10日生まれ。1991年セブン-イレブン・ジャパン入社、2003年セブン-イレブン北京で董事・副総経理、2008年正大置地有限公司副総裁から、CPF JAPANで代表取締役社長兼CEOに就任。

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