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倒産寸前から18年連続増収どん底からの成功の秘訣 武蔵野・小山昇代表取締役社長

2021年11月04日

中小企業は10年で9割が倒産すると言われている中、「業績が悪い」「会社の信用が低くて融資が受けられない」「人材教育や従業員の確保ができない」という悩みを抱える経営者は多い。そんな中、自社だけでなく、他社の経営を支援して続々と立て直してきた「武蔵野」の小山昇代表取締役社長に、経営の考え方と成功の秘訣を聞いた。

武蔵野 小山昇代表取締役社長

悩める企業経営者の駆け込み寺

武蔵野は、「ダスキン事業」と「経営支援事業」をしている会社です。1964年からダスキンの東京第1号加盟店として事業を開始し、現在も約2000店の加盟店の中で売り上げ10位以内をキープしています。サービス内容は、マットやモップなどの掃除用具のレンタル・交換、掃除代行、高齢者のケアサポート(自費介護)です。昨今は世情を受け、次亜塩素酸水を使った除菌商品の製造・販売にも力を入れています。

「経営支援事業」では、悩める経営者を対象に、経営サポートと経営コンサルティングを行っています。私は3代目社長で、経営不振に陥っていた武蔵野を再建し、「18年連続増収」「史上初となる『日本経営品質賞』2度受賞」に導いた経験があります。私が独自で培った仕組み、長年の実践の中で磨き上げた経営哲学とノウハウを惜しみなく伝授し、全国の中小企業を経営改善へと導いています。事業開始の2001年以来、現会員だけでなく累計の指導した企業のうち、倒産した会社はゼロ。約400社が過去最高益を達成し、上場した企業も6社ほどあります。武蔵野の経営支援は、悩める企業経営者の駆け込み寺になっています。

私たちは、一般的な経営コンサルタントとは違います。また、一般的にはクライアントから嫌われないように本当の問題や課題を指摘しませんが、私はどんどん悪い部分を見つけて切り込みます。嫌われても全く構いませんし、本当のことを指摘しないとその会社は永遠に変わらないからです。本来打つ手はたくさんあるのに、世の経営者たちには経験がないから、それが分からないだけ。私には一般的な経営者やコンサルタントとは比較にならない量の経験と知識があるので、何とかしてあげられるのです。

武蔵野 小山昇代表取締役社長

人間の心理を重視した経営

私と武蔵野の出会いは、大学生のとき。アルバイトから学生社員になり、今に至ります。社長に就任した1989年頃の武蔵野は、大卒生社員は2人だけで、それなりの人材しか集まらなく、赤字続きの会社でした。従業員のほとんどは「暴走族・ヤンキー」で、仕事のヤル気はゼロ、暇さえあれば社内でけんか騒ぎです。金銭の不正も多発していて、今考えるとありえないほど最悪な状況でした。

そこで私はまず、数々の不正を犯している社員の一番小さな不正を指摘して、解雇しました。それを見た他の不正者を「あの程度で解雇されるのか」とドキッとさせることで、その日から一斉に不正をなくすことに成功したのです。さらに、給料日前でお金がなくなるころに彼らを食事に連れて行き、お酒を飲みながら教育をしました。私が出す仕事関連のクイズに答えられたら焼き鳥をもう1本食べられたり、もう1杯お酒を飲めたりするのです。

暴走族だった彼らがすんなり改心して真面目に働くようになったのは、本当は人から注意されたかったからです。私はその心理を捉えて、頭ごなしに怒らず、彼らが楽しんで勉強できる方法を取りながら心をつかんでいったのです。

人間の心理を無視して、経営はできません。今でも私は社員全員の状況を常に把握し、社員一人一人の心理に配慮して、柔軟に人材配置と配置換えをしています。社員が気持ちよく働き続けられるように、ユニークな福利厚生もたくさん設けています。禁煙手当、親孝行手当、ラスベガス研修、自動車免許合宿代の全額支給、奨学金補助制度、子ども誕生手当はその一部です。おかげで社員の勤続年数は長く、この10年で勤続者で辞めた人は1人だけ。社内の人間関係も良好で、社内結婚は65%にも及びます。辞めた社員のことも気にかけて、必要とあらば「戻ってきなさい」と声を掛けることもあります。

武蔵野 小山昇代表取締役社長

経営の勝因は「先出しジャンケン」

私が経営者として一番大切にしているのは、自分に正直でいることです。自分に正直ならば、損しても良いと思えるからです。とはいえ、それができるのは、会社としても個人としてもそれなりの蓄えがあるから。損をしなければならない場面で損ができるように、常に利益を出しているからこそ、自分に正直にいられるのです。

そしてもう一つ、「先出しジャンケン」の徹底も大切にしています。新しいことにチャレンジするのはリスクを伴うので、ほとんどの経営者は「後出しジャンケン」ですが、武蔵野はどんなときも「先出しジャンケン」。経営がうまく行っている理由は、ここにあります。

例えば武蔵野では、入社後のミスマッチを防ぐために、「タバコを吸う人は採用しない」「社員旅行に参加しない人は採用しない」など、あらかじめ採用条件を公表しています。リスクや賛否両論はありますが、社員は会社の風土や価値観に納得して入社するので、結果的に従業員満足度はとても高いのです。世の中の全員を満足させる方法はありませんし、どんなやり方をしても必ず不満は出てくるもの。本当に成果を出したいのであれば、リスクを背負ってでも近道を選んだ方が良いのです。

コロナ禍の影響で、社長人生45年間で初めて前年度の売り上げを下回りました。そんな中でも私は、銀行からお金を借りて、100%の雇用確保と100%の給与保証を徹底しました。確かに解雇や給与削減をすれば楽ですが、私はそうはしません。社長の仕事は社員の生活を守ることですし、私にはついてきてくれた社員全員を雇用し続ける義務があります。「どんな方法でも、お金があることが正義――」、指導している経営者たちには、いつもそう伝えています。

これからも、業績が落ちるかどうかなんて誰にも分かりませんが、落ちたらそのときに考えればいい。そのために日頃から備えておいて、いざというときは立ち上げられるようにしておけばよいのです。私は今年73歳ですが、毎年去年の自分を超えることを目標に生きています。これからも、成果が出る方法を選択しながら、失敗を恐れずにチャレンジし続けます。

プロフィル
1948年山梨県生まれ。東京経済大学卒業後、日本サービスマーチャンダイザー(現在の武蔵野)に入社。1989年に現職に就任。日本で初めて「日本経営品質賞」を2度受賞。その経験をもとに、自社のノウハウを提供する「経営サポート事業」を展開、全国で年間240回以上のセミナーを行なっている。全国750社の会員企業を指導し、うち400社以上が過去最高益を達成。

株式会社武蔵野
https://www.musashino.co.jp/

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