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老舗食肉加工機メーカーがパラダイムシフトにどう対応するのか? ワタナベフーマック•渡邊将博代表

2021年07月01日

2021年3月に幕張メッセで開かれた「食肉産業展」(食肉産業展実行委員会主催)に、食肉加工機械業界で日本を代表する老舗メーカー2社が“共同出展”した。関係者を驚かせ、「食肉スライサー業界の可能性を切り開く」と語るワタナベフーマックの渡邊将博代表に、しのぎを削り合ってきたライバルとの共同出展の狙いと、 “真のグローバル展開”に懸ける思いを聞いた。


ワタナベフーマック 渡邊将博代表

老舗2社の共同出展。その狙いとは?

我が社と日本キャリア工業とは長く競合でしたが、今回共同の可能性を見出しました。食肉加工業界の現状は、人口減による市場が縮小し、消費者はもちろん、労働力も減少し始めており、変革の必要に迫られています。食肉加工場における「省人省力化」が最大の課題で、最小限の労力で最大の生産性を上げる食肉加工機械の開発が急務です。「食肉産業展」で展示した我が社の「WPN-G321」は生産性と汎用性を両立する食肉加工スライサーです。これに自動トレー盛付ロボット「SR-B」を組み込んだ「切る・折る・盛る」のオペレーションラインを実現、従来の約2.7倍の効率化を実現しました。汎用性の高い「WPN-G321」は、販売量の多い「豚バラ肉」でも高い生産性を誇ります。

日本キャリア工業の「スライサーAZ-341」と自動盛付装置「PZ-1-200」は、美しい盛付が求められる「豚ロース肉」加工に高い評価を得る組み合わせです。両社とも、肉塊から提供商材の完成までノンストップで加工し、整然とした肉の折り畳みや美しい盛付による商品売価アップも期待できます。両社の並列展示は、食肉商材加工ラインへの展望を示すのに充分なインパクトを与えました。働き手不足が懸念される食肉加工業界に、加工機械が「しっかりと、応えていく」という姿勢を伝えられたと思います。


ワタナベフーマック 渡邊将博代表

販路・収益の拡大に留まらない、真の目的

ワタナベフーマックは。1938年に名古屋市で創業し、「食肉スライサー」に特化した開発・製造・販売を主軸に、既存マシンのブラッシュアップやカスタマイズ、メンテナンス、食肉加工場ライン全般のエンジニアリングを手がけてきました。大手スーパーや外食チェーン、コンビニのベンダーなどに食肉用スライサーを納め、約40%の国内シェアを誇る日常食生活に近い存在です。1970年代には海外販売代理店を置き、海外の販路拡大に着手し、90年代には韓国企業とのOEM提携、99年には中国での工場開設、2000年代にはオランダ企業とのOEM提携を果たしました。現在国内18の事業所に加え、北京と上海の現地法人をはじめ、欧米、東南アジアなど世界17カ国で20社の代理店を持っています。

依頼者の問題解決のための手法(技術)を提供することが創業以来の姿勢です。「信頼・技術・調和」を社是に、現場・現実・現物の「三現主義」を開発・サービスの軸として、新たな挑戦を続けています。その一つが国際安全規格への適合で、技術部のメンバーを中心に講習を受講し、2016年に全員がシステム安全アソシエイトの資格を取得、機械に潜むリスクを低減させる製品開発に取り組みました。その結果、2019年にリスク低減モデル「ワタナベSライン」を6機種リリースしました。一部はEUのCE規格準拠を自己宣言した製品として、欧州における輸出・販路の拡大を狙える精度となっています。しかし真の狙いは海外市場における収益拡大に留まるものではありません。


自社の最新機械

スライサーへのこだわり、そして新たなる挑戦

食肉加工業界は市場縮小による国内の社会構造の変化に直面しており、加工ラインを担う人材の高齢化や外国人労働者との対話の壁も課題です。「省人省力化」とは、加工ラインの生産性向上のみを目的とせず、「どなたでも安全に従事できる加工ラインの実現=許容不可能なリスクの低減」を目的に、国際安全規格をも取り入れていくことが真のグローバル展開だと考えています。

我が社の「設計思想」を体現したものが「ワタナベSライン」です。「機械事故の発生頻度」と「機械事故の重度」を縦横軸に配置した際、「事故の発生頻度は低く、事故の重度も軽い」が最優先ですが、機械の販売価格、依頼者様のコストを精査した際に、着地点をどう見出すのか、安全とコストのリスクをどのような考えで追求するのか。それが「設計思想」そのものなのです。その上で、安全を担保する部品(センサーや電子部品)のコスト高は看過できない障壁・課題です。まだまだ流通量の少ないこれら安全担保の部品が、今より多くの食肉加工機械メーカーから求められれば、将来的にコスト減は期待できるかもしれません。同時に、食肉加工業界の安全へのニーズがさらに高まれば、安全担保への対価にも変化が現れるでしょう。両業界の意識が今よりも高まり、より高いレベルの「安全」がスタンダードとなる業界に推し進める、それが「ワタナベSライン」の真の狙いなのです。

「強い者が生き残るのではない、賢い者が生き残るのでもない、変化に対応できる者が生き残るのだ」と、ダーウィンの進化論にもあるように、近年のパラダイムシフトにいかに対応・変化してお客様や社会に貢献してゆくのか。それが、100年企業を目指すワタナベフーマックの目指すべきものと考えています。

◆プロフィル
1975年・名古屋市生まれ。生家である「株式会社渡辺鉄工所」(現:ワタナベフーマック株式会社)の創業者を祖父に「跡を継ぐ」という意識のもと幼少時代を過ごす。国際関係学部在学中に通関士の資格を取得し、卒業後は1年の海外ボランティア経験を経て、2000年に同社へ入社。国内・海外(上海・河北など)の実務を経て、帰国後の18年に初代から五代目の社長就任。翌年に欧州CE規格準拠を自己宣言した製品・リスク低減モデル「ワタナベSライン」を発表。

ワタナベフーマック株式会社
http://www.foodmach.co.jp

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