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<エコノミストTV>小さな組織で建設業の課題克服へ イーミライ・ホールディングス・福本啓貴代表取締役

2021年05月10日


■「ZEH」で住宅の高付加価値化

 3K(きつい・危険・汚い)のイメージや、元請け、下請け、孫請けといった多重下請け構造による賃金や働き方の問題、さらに技能者の高齢化などで深刻な人手不足が課題となっている建設業。東京・吉祥寺を拠点に、住宅関連業務を幅広く行い、総合不動産企業を目指している「イーミライ・ホールディングス」の福本啓貴(ふくもと・ひろたか)代表取締役は「建設業全体としては必ずしもいい組織構造になっていない。ピラミッド型から水平型の効率のいい組織をつくりたい」と業界構造の改善を目指している。福本代表取締役に、建設業の課題と不動産業の現状を聞いた。

■深刻な職人不足

建設業は、ゼネコンを頂点に、元請け、下請け、孫請け、さらに下の専門業者という多重の階層構造で成り立っており、この構造により、現場の作業員の低賃金、長時間労働、保険加入率の低さなど過酷な労働環境となっている。建設業界の就業者のピークは1997年の約685万人で、2015年には約500万人と約27%減少している。建設業の許可を持つ事業者の数も1999年の約60万がピークで、2015年には約46万8000とこちらも約22%減少した。
そうした背景もあり、建設業の就業者数は1997年をピークに減少を続け、内訳も2016年の調査では、33.9%は55歳以上で、29歳以下の就業者は11.4%%と高齢化も進み、今後さらに人手不足が深刻化することが危惧されている。
 一方、バブル崩壊からリーマンショックを経て建設投資額は2010年度の約42兆円落ち込んだが、2011年の東日本大震災の復興需要などにより、2018年度には53兆円まで回復した。だが、リーマンショック時の需要減で、職人の転職などが進み、需要回復後も人材が戻っていないことも人手不足の原因といわれている。

■法律知識を生かし不動産業に

 大学中退後、さまざまな職業を経験したという福本代表取締役はバブル崩壊後、大学で学んだ法律の知識を生かして、知り合いの不動産業者から不良債権処理の依頼を受けるようになり、1997年に後継者のいなかった不動産・建設会社を知人と共同で引き継ぎ、正式にこの道に入った。福本代表取締役は「一般的な不動産業務とは違うことばかりやっている感じです。例えば、賃借人が中途半端に入っている建物を更地にするなど、大手が手を出さないような瑕疵のあるイレギュラーな物件が意外とたくさんあるので、その問題を解決するというものを中心に扱ってきました」と振り返る。
 そんな中、建設業に力を入れたいという福本代表取締役。「この業界は現場ごとに離散集合を繰り返す。大手ビルダーが50棟や100棟などの大きな現場をつくると、そこに必要なだけ職人を集める。ビルダーが何百人という職人を抱えているわけではない。言い方は悪いが、彼らの人件費を絞れば、その分儲けが出るという構造だ」と指摘する。「さらに建物の価格というのもなかなか上がってこない。むしろ建設の坪単価は20年前より下がっているので、これでは職人の待遇が向上せず、技術の向上にもつながらないので、建物の付加価値を上げるのも難しい」と話す。

「イーミライ・ホールディングス」が展開する建売住宅


■若い職人の底上げを

 「業界では、『一人親方』など早く法人化した方がいい若者がたくさんいるが、銀行との付き合いや法人設立の手続きなどがあまり得意でないというタイプの人が多い。そこで力のある若い職人で効率の良い組織をつくり、付加価値の高い建物をつくることで所得の底上げをしたい」という。組織としては「5~10人の会社をいくつも作って、ピラミッド型ではなく、ホールディングスの中にいくつかあるような形」を目指すという。
 建物の付加価値向上では、最近注目を集めている「ZEH(ゼッチ=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」に取り組む。「ZEH」とは、断熱性能を高め、効率的なエネルギー管理システムと太陽光発電などの創エネ設備を導入することで、エネルギー収支をゼロにしようという住宅だ。
 イーミライ・グループでも「モクラス」というオリジナルブランドでZEHの木造住宅を展開している。「いわゆる注文住宅では、いろんなビルダーがZEHに取り組んでいますが、うちの場合は建売住宅で展開しているのが特徴」といい、「建築坪単価は多少高くなりますが、プラスアルファの部分が多く、その範囲内で収まると思います」と胸を張る。
コロナ禍の現在、不動産業界の状況について福本代表取締役は「私も同業者も昨年6月ごろはビビっていましたが、9月ごろからは需要が絶好調になってきた。特に個人住宅がものすごい。ステイホームで家にいる時間が増え、家で執務するスペースがなくて、もう一部屋二部屋広いところにということで、都心のマンションから少し離れたところの一戸建てに切り替えるという人が多い」と分析する。

オフィスで仕事をする「イーミライ・ホールディングス」の福本啓貴代表取締役


■人が育つ組織づくり

 福本代表取締役は将来を担う若い人材を大事したいという。「この業界は情報と情報の分析能力が非常に重要。情報を集めるには人間関係しかない。建築でも、ボードの決められたところに工具で釘を打っていくみたいに効率化されて、専門的な技術などがあまり重要ではなくなっている。10人ぐらいの小さな組織をいくつもつくって、フラットに連携する。効率的で人が育つ組織にしていきたい」と戦略を語る。「不動産売買は短期で終わらせるのが鉄則だが、若い人には長い目で見た長期のプロジェクトを進めてもらいたい」と夢を語る。また、コロナ禍のために中断していた「ZEH」のセミナーを再開したいという。「定期的に開く予定が、コロナのため1回しかでいなかった。評判はよかったので、最終的にはホテルなどで開いていきたい」と前を向いている。
 独自の戦略でアフターコロナの飛躍を目指す福本代表取締役。その視線の先にある組織づくりに注目していきたい。

福本代表取締役こだわりのロレックスの時計


■私のビジネスアイテム

福本代表取締役のこだわりのビジネスアイテムはアナログ時計だ。パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器に囲まれている中で、時計だけはアナログのものにこだわっているという。「1日に数秒は狂うので常に修正しなければなりません。うるう月には日付も変えないといけないし、何より毎日着けていないと止まってしまいます。そこがいい」と語る。好みはロレックスのスポーツタイプ。「ちょっと重量感があって、少し大きめのベゼルのもの。物欲がほとんどないんですが、半年に一度時計だけは買うようにしています」と語る。

■プロフィル
1957年、熊本県生まれ。1978年中央大中退後、卸売業などを経て94年に不動産業界に入る。97年に不動産・建設会社を承継。独立後の2009年に会社を設立し、2014年イーミライ・ホールディングス代表取締役に就任。現在、事業会社3社、関連会社3社を傘下に持つ。

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