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<エコノミストT V>トラストレックス 喜ばれるものづくりで挫折から復活 70歳のあくなき挑戦 西村純一代表

2020年12月14日

人々の健康志向がますます高まりを見せ、さまざまな健康機器が開発・販売されている中、発売以来累計販売台数70万台を超えている小型マイナスイオン発生器を製造・販売している「トラストレックス」の西村純一代表。新型コロナウイルスの感染拡大の中も安定した売り上げを続けているという西村代表だが、リーマンショック時には大きな挫折を経験、そこでの気づきが現在につながるという。「売り上げ至上主義ではなく、相手の喜ばれるものを作っていく」という西村代表の哲学を聞いた。(猪狩淳一)

マイナスイオン発生器

◆ライター売り場でつかんだ“極意”

西村代表は北海道で生まれ、大学時代の下宿先の紹介で、ライター売り場のアルバイトでその後のビジネスのベースとなる体験をしたと語る。「年末年始に銀座の松屋でマルマンのライターの売り子のアルバイトをしたんですよ。その売り場はライターが全然売れていなかったのですが、非常によく売れて、『お前、なんでそんなに売れるんだ?』と、レポートを書くようにいわれました。なぜ売れるかとか売り方を学生ながらレポートを書きました。それがマルマンの社内報に掲載されたんです。その時に思ったのは、全然売ることを知らない僕が相手のことを親身になって、相手の立場になって売ると自分が売りたいものが売れるですよ。そういうことをつかんだと思ったんです」と振り返る。

アルバイトの縁で、最初の会社を退社した後ライター・ゴルフ用品のメーカーに営業職として入社。ゴルフ用品の営業を担当し、さらにビジネスの哲学を磨く。「ゴルフ店に営業するとき、『買ってくれ』っていうのは足元を見られるようで嫌なんです。自社の商品を売るのではなく、お店の売り上げを上げるためにどうすればいいかということをお店の方と一緒に考える。コンサルティングをすることで、結果的に自社の商品も売れました」といい、「結局、ものを売るというのは感情なんです。儲けたいということもありますが、『どうせ売るんだったらお前のところの商品を売ってあげたい』と思ってくれたんですね」と気付いたという。

◆トップセールスマンから転身

その哲学を胸に、25歳の時に京都支店で支店長を務めることになる。当時成績が振るわなかった支店で、「お客様に喜んでもらえる営業」に取り組むことで、全国トップにまで上り詰めた。当然、昇進して本社への異動の話が来たが、「会社員としての人生は先が見えて、面白くない」と29歳で退社を決意。教育関係の仕事をするが、スケールが広がりにくいと考え、浄水器の営業を始め、その後製造・開発を手掛けるようになり、そこでブームになっていた「マイナスイオン」との出会いがあった、

西村代表は「セラミックボールを浄水器に使っていて、そこから出ている放射線を測定して、『マイナスイオンです』と言って販売しているところもありました。そんな売り方をしていてはだめだと考えました」と語る。マイナスイオンブームに乗ってさまざまな製品が売られている中、信頼を得るために西村代表は機器から発生するマイナスイオンを数値化する測定器を開発。規格を統一するため、空気イオン研究の専門家である故中江茂・元東京理科大学教授とともに「日本機能性イオン協会」を設立し、2006年には「空気イオン密度測定方法」のJIS規格化も制定した。こうして基盤を築き、順調に業績を伸ばしていった西村代表は、新たな挑戦をすることになる。

苦難を乗り越えた仲間と再起した西村代表

◆リーマンショックからの復活

歌手のマドンナやハリウッドセレブが実践していることで、注目を浴びた玄米や野菜を中心にした食事法であるマクロビオティック」のレストランを展開した。大阪で初出店を果たし、東京へも進出。5店舗を展開した。本業と合わせて10億円を超える売り上げを上げていたが、そこにリーマンショックが襲う。「全然客がこなくなって、先行きが本業の方にも影響し、どんどん傾いていきました。もう整理しなくてはいけないということで、最後は銀行に5億円の負債を残して倒産しました。得意先は全部整理していたので迷惑はかけなかったのはよかったですけど」と振り返る。

西村代表は「自分が昔からやってきたことは違うことをしていたことに気がつきました。売り上げ優先ではなく、昔自分がやっていた、売り込むのではなく、お客さんに来てもらう、お客さんに提案をしてもらうそういうことに変えていって、売り上げ至上主義ではなく、品質 ものを良いものを提案することでお客様の評価を得て、徐々に売り上げを上げていくんだということに切り替わりました」と一からの出直しを決意。残ってくれた社員たちと改めて「トラストレックス」を立ち上げ、マイナスイオン関連機器やなどの開発・販売という“本業”に立ち返った。

◆改良の手は止めない

西村代表は主力商品である携帯用超小型マイナスイオン発生器の改良を重ね、さまざまな意見を聞いて首から下げるタイプにモデルチェンジして大ヒットにつなげた。さらにコロナ禍の中で、感染症予防に口腔ケアが注目されたこともあり、専門家とともに口腔マッサージャーの新製品を開発、注目を集めている。

西村代表は今年70歳を迎えたが、日々開発や改良の手を止めることはないという。「人に喜ばれる良いものをどんどん自分の手で作っていきたいということだけですね。人助けになるものをじっくり作って、理解してくれる方に使っていただきたい。あとそれ以上の望みはありません。いろんな新しいことに挑戦していきたい」と力強く語る。

コロナ禍による影響が日本だけでなく、世界経済へも広がる中、大きな挫折から足元を見つめ直して立ち上がった西村代表のものづくりに懸ける哲学は、シンプルだがアフターコロナに向けた回復の指針となるかもしれない。あくなき挑戦を続けるトラストレックスに注目だ。

西村代表こだわりの「いたがき」の鞄(かばん)

◆私のビジネスアイテム

西村代表のこだわりのビジネスアイテムは「いたがき」の鞄(かばん)だ。20年前に北海道に墓参りに行った時、札幌狸小路商店街に「いたがき」のショップがあって、一目で気に入ったという。「いたがき」の本社が北海道赤平市にあり、西村代表の故郷の近くということで懐かしい思いもあった。職人が丹念に作り上げたかばんは、「ものがいっぱい入るので、海外のお供としても使っています。丈夫なのと修理が利くので、痛んだら修理に出して使っています。もう一生ものです」と笑顔だ。

◆プロフィル

1950年、北海道出身。大学卒業後、空調機器会社を経て、ライター・ゴルフ用品メーカーに入社。営業活動を通してビジネスの根幹を知る。79年に転勤先の京都で退社をし、「能力開発センター」を開業。その後、健康事業分野で起業。2008年、レストランチェーンの展開に失敗し、会社を整理。。2009年に同じ場所で「トラストレックス」を設立する。

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