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<専門医に聞く>「コミュニケーション」から生まれる質の高い医療 医療法人RDC アール歯科クリニック・酒井亮理事長

2020年09月28日

RDC アール歯科クリニックの酒井亮理事長

埼玉県内に4院を構える医療法人RDC アール歯科クリニック。酒井亮理事長は「医療は、提供するのも、享受するのも『人』。人と人の関係だからこそ、医療従事者には知識や技術だけでなく、コミュニケーション能力が求められる」と語る。患者との相互理解と、歯科医、技工士、スタッフとの信頼関係を重視するスタイルで、高い治療成果を生み出している酒井理事長に、歯科医としての歩みと医院づくりで目指すものについて聞いた。

◆モットーは「待たせない、怖くない、痛くない」

現在、さいたま市のJR南与野駅近くの本院「アール歯科セントラルクリニック」のほか、JR与野駅前の「アール歯科クリニック与野」、川口市のJR蕨駅近くの「アール歯科クリニック川口芝」、埼玉高速鉄道・新井宿駅前の「アール歯科クリニック新井宿」を運営しています。

主要駅からアクセスのよい場所に位置していることもあり、家族連れ、高齢の方、ビジネスパーソンら、さまざまな患者さんがいらっしゃいます。治療科目も多様で、虫歯や歯周病の治療はもちろん、矯正歯科でのかみ合わせの治療や、審美歯科にも強みを持っています。老若男女どなたでも利用しやすい医院づくりのため、見守りサービス付きのキッズスペースを設置したり、手すりの付いた治療台、腰が曲がっている方に負担が少ないチェアなどバリアフリーを考慮した設備を導入したりといった工夫をしています。

診療のモットーは「待たせない、怖くない、痛くない」です。治療内容に合わせ、最適な治療時間が確保されるウェブ予約システムを提供し、明るく、温かく患者さんに接することで歯科治療に安心感を持っていただけるように務めています。治療では、表面麻酔や電動麻酔機などを利用して痛みの軽減を図っています。

治療で大切にしているのは、患者さんに治療について丁寧に説明し、納得感を得てもらうことです。特に審美歯科では、目指すゴールが一つではなく、そのゴールに至る道も一つではありません。上から治療方法を押し付けるのではなく、患者さんの希望、理想をよく聞き、専門的な知見で妥当な方法を見いだし、話し合いの中で治療内容を決めています。

◆スタッフ、歯科技工士との厚い信頼関係

私は、歯科医になって数年で開業しました。同業者の中でかなり早い方ですが、最初に勤務した歯科医院で、半年で分院長を任されたことが大きな経験となりました。理事長から分院長就任を打診された時は尻込みしましたが、強い勧めを受けて決意しました。分院長として、不安の中必死で技術と知識を学び、開業に必要なマネジメントや経営感覚を身に付けることができました。

当時はまだ経験が浅く、技術的に決して優れていたわけではない私が分院長に推された理由は、患者さんとのコミュニケーション能力に期待したということでした。現在の納得感を大切にする医療のスタイルにもつながる自分の強みを見いだしてくれたと、今でも感謝しています。

患者さんだけではなく、スタッフとのコミュニケーションも重要です。当院では、多くの院で行われている定期的なミーティングを設けていません。院内ではスタッフとの意思疎通が自然に行われており、時には冗談を言い合いながら、必要なことをしっかり伝えています。クリニックの理念や治療方針が伝わっていれば、スタッフ自身の意志で患者さんに最善の対応ができます。会議は診療時間中にできず夜遅くか早朝になってしまうので、スタッフの労働環境のためにもよい方法だと思っています。

人材面では、クリニック専属の歯科技工士がいるのも大きな特徴です。歯を削る歯科医と詰め物、被せ物などを作るし歯科技工士が、治療方針などを共有できるので、治療の質を高めることができます。通常、歯科技工士は下請け仕事なので報酬が不安定で、辞めてしまう方も多いといわれます。優れた技術を持つ歯科技工士との信頼関係は、クリニックにとっての財産なのです。

◆「人間が好き」が仕事の原点

多くの歯科医は開業から3~5年で、業務内容が固まってきて、毎日同じことの繰り返しという感覚になるようです。業務に習熟しているという意味では必ずしも悪いこととはいえませんが、私は仕事に慣れてくると新しいことにチャレンジしたくなる性格なんです。

例えば、医療事務におけるITの導入では、約10年前にソフトウェア企業の方と知り合ってから興味を持ち、AIを利用したウェブ予約システムなどの開発に、歯科医の立場からアドバイスしています。また、受付事務にコミュニケーションロボットの「Pepper」を取り入れて、新聞に取り上げられたこともあります。

治療面では、アスリートが最大限の力を発揮するためのマウスガード製作などを行うスポーツ歯科に関心があります。スポーツトレーナーとして活躍する柔道整復師とタイアップして、専門的な技術を学んでいます。マウスガードの調整には、歯科技工士の存在が重要なので、当院所属の歯科技工士に大いに期待しています。

後進育成も今後のテーマです。過去に先輩の先生に目をかけていただき、引き上げてもらった恩を、下の世代に返していきたいのです。クリニックには、若い先生が治療技術を学び、ほかの歯科医や歯科技工士と治療に関して議論できる研修室を設置しました。風通しがよく何でも言い合えるという強みを生かし、専門家が互いに高め合える場にしたいと思っています。

私のキャリアは人との巡り合いで形成されています。当初良い関係が築けなかった患者さんが、次第に心を開き、最後に笑顔でお礼を言ってくださったり、ほかの歯科医の先生、スタッフ、他業種の方々と良い仕事をして達成感を分かち合ったりするのはうれしいことです。私の仕事の基本には「人間が好き」という気持ちがあるのだと思います。

RDC アール歯科クリニックの酒井亮理事長

プロフィル
2006年、日本歯科大学卒。神奈川歯科大学附属病院で研修医勤務を経て、2007年、医療法人「港会」港歯科診療所に入職し、1年目で分院長に就任。2009年に独立してアール歯科クリニックを開院。2013年には医療法人RDCを設立。