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<エコノミストTV>社会を変える!クラウドファンディングでESG不動産投資  ブリッジ・シー・キャピタル 横田大造社長 

2021年01月27日

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人生100年時代が叫ばれる中、新型コロナウイルスの感染拡大などの影響もあり、日本の家計金融資産に占める現金・預金の割合は増え続けている。投資教育が進んでいる欧米と比べ、投資マインドが旺盛とはいえない日本で、環境、社会、企業統治など社会課題に配慮したESG不動産投資を実践できるクラウドファンディングサービスを運営するブリッジ・シー・キャピタルの横田大造社長。「不動産投資を変え、社会を変える」を企業ミッションとして掲げる横田社長に狙いを聞いた。(猪狩淳一)

◆進まぬ個人投資

2020年7~9月期の日銀の資金循環統計(速報)によると、家計が持つ金融資産の残高は前年同月比2・7%増の1901兆円で、うち現預金の残高は同4・9%増の1034兆円で、残高・伸び率ともに過去最高を更新した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で消費が抑制されたのも要因という。日米で比較すると、日本の家計の現預金率は54・2%で、米国は13・7%。一方、株式、投資信託などの有価証券は、日本が14・4%で、米国は52・8%と大きな差があり(日銀「資金循環の日米欧比較」2020年8月より)、現預金に偏る日本の投資マインドを表している。そんな中、人生100年時代といわれる超高齢化社会に向け、個人の投資による資産形成の促進が叫ばれている。

横田社長は大学を卒業後、「さまざまな世界を見てみたい」という思いから、外資系のコンサルティング会社に就職。そこで不動産の証券化の業務に携わったことから、不動産ファンド業界に興味を持ち、国内大手の不動産ファイナンス会社や外資系の投資ファンド会社などで経験を重ねた。オフィスビルや商業施設などの大型案件を手掛ける中で、地域に必要な病院の開発という社会性のある案件に取り組んだが、大きな利益を要求される外資系企業では実現できなかったという。

◆マネーゲームに疑問

横田社長は「まるでマネーゲームのような仕事に疑問を感じ、社会の役に立ちたいとヘルスケア施設に着目しました。少子高齢化の中で企画は評価されたのですが、結局、手間の割には投資金額も小さいという理由で立ち消えになってしまいました。その頃から、マネーゲームではなく、国に本当に必要なアセットに対して資金を循環させるような仕事を模索し始めました」と振り返る。

そこで横田社長は投資ファンドから、銀行に移り、病院や介護施設などを証券化して資金調達を図る「ヘルスケアREIT」を設立。投資運用の責任者として物件取得を統括するようになったが、そこには課題と気付きがあった。「老人ホームなどのヘルスケア施設は賃料も安定していて、社会的ニーズもあり、投資先としては優れていることが分かった。しかし、不動産の投資金額規模がネックとなり、なかなか資金が集まらない。機関投資家や富裕層の資金はやはり大きな案件に流れてしまう」という。

目を付けたのが個人の投資家だ。「個人からお金を集める方法がないか」と考え、「クラウドファンディング」に注目した。「クラウドファンディングの仕組みを活かして個人投資家の資金を集められないか、と仕事の合間にずっと研究をしていました」と語る。

インターネットを使って一口1万円からESG不動産投資ができる「CREAL」


◆共感で投資を

このアイデアを実現するためブリッジ・シー・キャピタルへ移籍。2018年にクラウドファンディングの手法を活用して、個人投資家が保育園や学校などの社会インフラ不動産へ投資ができるサービス「CREAL(クリアル)」をリリースした。横田社長は「最大の特徴は、インターネットを使って一口1万円から不動産投資できるということ。また、情報開示を徹底していることです。ファンド概要・マーケット情報・リスクやリターンはもとより、投資不動産の運営者のインタビュー動画まで公開しています。たとえば、保育園であれば保育園オペレーターに経営理念や運営している上で大切にしていることなどを語ってもらうインタビュー動画を掲載します。投資家の皆さまの投資判断軸は、もちろん利回りもありますが、やはり共感し、どれだけ強く応援したいか、という想いもあると思います」と話す。

サービスリリース後の2019年2月には、国交省が環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の三つの視点から投資するESG不動産投資の検討会を設置。また、ESG不動産投資をクラウドファンディングの手法で一般投資家が手軽に取り組める点が評価され、「CREAL」は2020年度グッドデザイン賞を受賞。そんな追い風もあり、サービス開始から約1年で累計調達額は30億円を突破し、2020年12月末時点で60億円を超え、コロナ禍にもかかわらず右肩上がりで成長を続けている。

横田社長は「不動産の証券化業務を手掛けて15年以上になりますがこの業界には長らくイノベーションが起こっていなかった。物件も営業マンの勘と経験、人脈で仕入れ、資金も身近な銀行から調達して、売却する時も営業マンのネットワークを使うというマンパワーによるところが多かった。そこにITの力を入れて効率的な業務運営をしようというイノベーションの一つの形が『CREAL』だと思っています」と胸を張る。

投資先の保育園「さくらさくみらい駒込」


◆社会のニーズに応える

さらなる成長のため、横田社長は「お客様の利益を守る。安定したリターンが生まれるかというのを第一に考えています」という。そこで投資先については不動産鑑定士の報告書など第三者の意見を踏まえながら、合議制の投資委員会を開き、営業とは独立した審査を徹底。ESG不動産投資など社会のニーズがあるかという視点でも検討している。

横田社長は「『不動産投資を変え、社会を変える』という我々の企業ミッションから見ると、不動産投資の変革のまだ道半ばにある。誰もが不動産投資や資産運用を始めたいと思って、アクセスしてもらい、通勤の途中など暇な時にスマホを片手に資産運用が実現できる社会をつくるために努力をしています。先頭を走っている自信があるので、単なるマネーゲームでなく、そうしたお金をうまく世の中の役に立てるようなところへ回すのも我々の責務だと思います」という。

人生100年時代の資産形成を社会課題の解決につなげようという横田社長。その目が見据える高みには何があるのか、注目したい。

◆私のビジネスアイテム

横田社長のこだわりのビジネスアイテムは「モレスキンのノート」だ。打ち合わせの記録から商品のアイデアなどカフェで時間を作ってまでメモをするという。「以前は大学ノートを使っていたのですが、見返すとなると紙の破れとか汚れが気になるし、立ちながらメモもできるので、少し値が張りますが、非常に重宝しています」といい、「短期的なタスクは手帳の先頭から書いて、中長期的なタスクや思い付きは手帳の後ろからメモしています。ついつい後手になりがちな中長期的な目標やタスクについても手帳の後ろから見返して、常に実施に向けたロードマップも考えています」とこだわりを語る。

◆プロフィール
1976年、群馬県前橋市生まれ。早稲田大学卒業後2000年、アクセンチュア入社。オリックス、ラサールインベストメントマネージメントなどを経て2011年、新生銀行に入行。ヘルスケアREITの企画・設立を担当、投資運用部長として物件取得業務を統括する。2017年4月から現職。