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<エコノミストTV>コロナ禍で進むサプライチェーンの国内回帰 用地需要に応える「注文開発 日本マネジメント開発研究所・清水三雄会長

2021年08月23日

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サプライチェーンのグローバル化を進めてきた日本の産業界。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、マスクや半導体、木材などさまざま分野で原材料や部品の供給が寸断され、大きな打撃を与えた。経済安全保障の観点から、サプライチェーンの多元化、分散化を求められる中、生産拠点の国内回帰も注目されている。日本マネジメント開発研究所の清水三雄会長は工場用地を「注文開発」という手法で調達し、急激に業績を伸ばしている。80歳を超えて、ヘリコプターを駆使しながら新たな挑戦を続ける清水会長の原動力とは……。【猪狩淳一】

■生産拠点の海外依存があだに

1990年代以降、労働コストや長期的な円高傾向を受け、多くの製造業がアジアを中心とした国外へ生産拠点を移した。しかし、日本ではバブル崩壊による景気の低迷が続く一方、中国やアジア諸国が経済成長を果たし、為替も円安に転換したことにより、コストの格差が縮小。米中貿易摩擦などによる輸出の停滞など景気の不透明感が強まり、海外への設備投資は後退していた。

そこに新型コロナの世界的なパンデミックが発生し、中国をはじめ海外の生産拠点で感染防止のために自動車や電子部品、住宅設備の工場が生産を停止。サプライチェーンが寸断され、国内の工場も操業を縮小するなど大きな影響が出たため、中国など特定の国へのサプライチェーンの依存の見直しを迫られた。政府はサプライチェーンの国内回帰や多元化を促進する事業を進め、海外から生産拠点を国内へ移管する際に最大150億円を補助する「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業」を実施、昨年度は,670件、約1兆7640億円の応募があった。今年度は補助上限100億円にして公募を実施している。

■農地転用のノウハウを活用

ヘリコプターで現地を視察する清水会長

ヘリコプターで現地を視察する清水会長


日本マネジメント開発研究所の清水会長は、大学時代に業務用ガス機器を発明して卒業と同時に起業して以来、ユニークな発想で10以上の事業を立ち上げてきた。特に農地を宅地に転換するコンサルティング事業に長年携わり、農地の用途転換についてのノウハウを蓄積してきた。そこで3年前、農地を工場用地に転換させる事業を立ち上げた「普通の農地を開発して宅地にするのはさほど難しくないが、市街化調整区域内の土地や相続税の納税猶予がついている物件とかは大変難しい。ハードルを一つ一つ超えていかなければ、事業用の用地が完成しません」と明かす。

そのノウハウを生かしたビジネスが工場用地の「注文開発」だ。清水会長は「工場や倉庫を新設したい企業から、どの地域にどんな規模で建てたいという注文を受け、候補地をヘリコプターで見に行って、立地を実際に見て、気に入ったら我々が農地を開発してお渡しするという事業です」という。さらに用地取得を急いでいる企業は「長い間、開発できない安い農地を予測開発として持っていますので、急いでいる場合はその土地を見ていただいて立地が気に入ったら買っていただくのが『予測開発』です」と話す。

■飛躍的な伸び

3年前に事業を立ち上げ、初年度は売上19億円、今年度は40億円以上、2年後には100億円を以上という急激な伸びを見せている。清水会長は「これだけ伸びるということは予測しなかったですね。調整区域を開発してもいいという自治体がたくさん出てきたんです。農地のままだと固定資産税の収入がないので、事業用地にすると固定資産税が入ってくるので、開発を可能にするところが増えてきたんです」と明かす。さらに「昨年ごろから、運送会社や倉庫業者、大手メーカーの下請け工場など注文開発で事業用地を求める企業が急に増えてきた。背景には、やはりコロナ禍が原因していると思います。インターネットショッピングで宅配業者が忙しくなり、拠点がいるということで、注文が増えてきた。各メーカーが海外に持っている工場を日本に戻すための工場用地需要が多くなってきています」とコロナの影響を語る。

飛躍的な成長のための資金調達についても、「農家から土地を購入する際には購入申込金とか手付金が必要だが、銀行は融資してくれない。銀行は売買契約を結んで初めて融資が実行されるので、その間、半年〜1年の資金を社債発行で調達します。一口5000万円で利回り6%、1億円で8%、総額10億円で募集しようと思っています。低金利時代なので、富裕層の皆様に社債を持っていただくというのは有利だと思います」という。

■柔軟な頭で広がる夢

プライベートジェット

清水会長のプライベートジェット


アイデアマンの清水会長はさまざまな事業への取り組みも進めている。「本業以外で力を入れているのは、航空機事業です。プライベートジェット機をマンションの区分所有のような形式で所有してもらおうというアイデアです。コロナ禍でもプライベートジェットなら誰とも接触せずにどこへでも行けます。企業のトップなどの需要があると見込んでいます」という。さらに地域貢献も行っており、「あまり利益は期待できないんですけど、京都の京北町という大変自然環境の豊かなところで高級なグランピングホテルを今建設中です」と笑顔だ。

清水会長はアイデアの源泉について、「柔軟な考え方が大事で、それは中学時代に出会った『連想記億術』で生まれました。柔軟な頭脳ではないと連想は続かないので、それを長い人生使ってきて、世の中に変化があったら、すぐに連想で新しいビジネスが浮かぶんです」といい、「今は変化の時代です。変化というのは英語で言ったら『CHANGE』ですが、『CHANGE』の最後の『G』のところに“角”を取ると『CHANCE』になる。とにかく考え方の角を取るとチャンスになる」と胸を張る。変化に柔軟に対応し続けてきた清水会長。まだまだ夢は広がっている。

■私のビジネスアイテム

ビジネスアイテムヘリ

アメリカのロビンソン社製ヘリコプター「R44」


清水会長のビジネスアイテムは、アメリカのロビンソン社製ヘリコプター「R44」だ。清水会長がヘリコプターの免許を取得している機体で、「非常に操縦しやすい。スピードは大きな機体と変わらない時速220キロぐらい出て、小回りも効くし便利です。
用地の注文主に乗ってもらって、空から希望の土地を探してもらうのに使っています」とパイロットとしての自信を見せる。

■プロフィル

日本マネジメント開発研究所の清水三雄会長

日本マネジメント開発研究所の清水三雄会長


1941年、京都市出身。大学時代に業務用ガス機器を発明したことを機に卒業と同時に起業。以来、ユニークな発想で10以上の事業を立ち上げる。1978年、日本マネジメント開発研究所を設立、代表取締役会長に就任。1991年、「ニュービジネス大賞コンテスト」大賞受賞。ほかに、京都府福知山市三和町の過疎の町でみわ・ダッシュ村の運営やトラック駐車場開発運営会社JPD清水の最高顧問を務める。