2022.02.28

障がい者雇用進め「人類の働き方を最適化」目指す 

近年「ダイバーシティー(多様性)」という言葉がよく使われるようになったが、達成できている企業は多くないだろう。「人類の働き方を最適化する」を目的に、2018年に創業した「虹の勇者」は、LGBTなどの性的少数者や障がい者の雇用を推進しようと試行錯誤を続けている。益戸聡代表・監修責任者に現状と課題を聞いた。

障がい者雇用進め「人類の働き方を最適化」目指す 虹の勇者・益戸聡代表・監修責任者

障がい者の状況に合わせた事業運用

虹の勇者は、「人類の働き方を最適化する」を理念に設立しました。社名は、“困難を楽しめる人”を「勇者」と定義づけ、さまざまな背景を持った人の雇用を意識していることから、多様性の象徴でもある「虹」を組み合わせて名付けました。実際に雇用している障がい者の状況に合わせ、日々事業運用を柔軟に変化させる局面に立っています。

虹の勇者は主に四つの部門から構成されています。一つ目がITやWebコンサルティング、ゲーム、ガジェットに関するサービスを提供している部門です。スマートフォンで簡単にタスク管理ができる「White Wisdom Wall(通称:三草-さえぐさ-)」というアプリケーションを自社開発し、SNSやYouTubeで企画・配信をしており、自身もシステムエンジニア/プロジェクトマネジャーとして顧客先常駐で出向しています。

二つ目は、飲食に関するサービスをマーケティングから販売・サービスまで一気通貫で行う部門です。現在はコロナの影響で休止中ですが、2021年9月まで「虹のDeli-wagön」という宅配のお弁当サービスを自社開発し、サブスクリプション販売していました、現在はスイーツやお土産のEC化を計画しています。各アイテムは障がい者が作業しやすいよう、工程から逆算し考案しました。

三つ目に、障がい者の雇用の促進をメインタスクとしている部門です。これまでに精神疾患を含む障がい者を3人雇用してきており、インターン中の方も在籍しています。そして四つ目が、元常務が中古車輸出での収益を視野に開設した自動車関連部門ですが、ドクターストップでの退任のタイミングで、軽貨物配送の業務委託部門に移行しました。

障がい者雇用進め「人類の働き方を最適化」目指す 虹の勇者・益戸聡代表・監修責任者

起業のきっかけは小学生時代の感動

起業のきっかけは、小学校3、4年生のときの体験です。同級生の弟が身体障がい者で、家族が今でいうダイバーシティーの啓蒙活動や、移動図書館を運営したり、小学校の教師とも連携して、地域を利用したオリエンテーリング大会を開催していました。その精力的な活躍ぶりを目の当たりにし、その後、自発的にろう学校の交流会や養護学校の文化祭に参加するようになりました。

しかし、自分一人で障がい者の課題と向き合っても変えられることは少なく、状況を本格的に動かすためには、大勢を巻き込んでチーム・団体として向き合っていく必要性があると感じました。2016年冬に高校生のときからの大親友で、5歳年長の元常務が「障がい者雇用をする会社を作りたい」と、僕が長年温めていた話を独自に持ち掛けて来たのです。自身が30代に患ったうつ病が長期化し、精神障がいの当事者となったことで、社会的受け皿の必要性を実感したのだと思います。僕自身も長時間の過重労働による自律神経失調症や、事故で両ひざをけがして、不自由な生活を送った時期も体験しており、病気やけがで仕事ができなくなるという状態も他人事ではありませんでした。

ある意味で特殊な会社の“しくみ”を作る上で、前職までの現場や業務経験が生きています。特にSEとして学んだ「要件定義」の段階では、何を条件とするか、目的とするかということを明確にし、物事を順序立てて組み上げていくという作業は、どの階層にあっても同じです。そう話すと万事順風満帆のように聞こえてしまうかもしれませんが、むしろ試行錯誤の連続で、成功よりも失敗の方がはるかに多いのが実情です。

障がい者雇用進め「人類の働き方を最適化」目指す 虹の勇者・益戸聡代表・監修責任者

最大の課題は「定着してもらうこと」

障がい者雇用のモデルを目指して創意工夫を凝らしても、最も困難なテーマは「定着してもらうこと」に尽きます。障がい者枠での採用は、総じて報酬額の設定が低くなりがちです。社会人として勤務した後、障がい者になった場合、健常時の額と比較してしまうため評価に納得できず、そもそも再就職がままならないというケースが未就業状態を長期化させる傾向さえあります。

虹の勇者では、給料額を経験に応じた一般的な水準に合わせています。そのためには「相応の仕事」つまり成果を出してもらう必要があります。約2カ月のインターン期間中に基礎職業能力を確認した上で、採用・配属を決めていますが、いざ本番となると結果につながらないことがほとんどでした。

それでも、四つの事業部門を設けていることが機能し、“しくみ”に助けられています。例えばIT・Web部門リーダーとして登用をしたものの、うつ病が再発したことで、想定していたパフォーマンスを上げられなくなったメンバーが、自動車関連の部門に転属して活躍し始めました。

障がい者雇用の現実は、思い描いていた理想とのギャップも果てしないですが、集まってくれたメンバーとの絆や想いを大切にしながら、働き方の夢に向かって経営を続けていく初志を貫徹するのだと、改めて身の引き締まる思いです。

株式会社虹の勇者

代表・監修責任者

1975年生まれ、東京出身。建設・設備業、大手ショッピングセンターのフロア責任者、ソフトウエアハウス勤務を経て、2018年に健全な障がい者雇用を実現するため株式会社虹の勇者を創業。IT、飲食、運送などのサービスを提供している。

https://les-braves-de-des-arcs-en-ciel.org/