2022.06.03

関わる人全員が笑顔になれるイベント制作を 

コロナ禍によって大きな打撃を受けたイベント業界だが、エレメンタルプロジェクトは、着実に業績を伸ばしてきた。「顧客のことを考え誠実に仕事をしていれば、仕事は自ずと増える」と言い切る同社の内野祥志代表取締役に、成功の理由を聞いた。

イベント制作をワンストップで手掛ける

イベントの「事前業務」である企画・制作から、本番当日の演出進行・運営全体管理、運営スタッフアサインといった「イベントの本番業務」、そしてデザインや映像制作、音源制作などのクリエーティブまでを社内リソースでトータルプロデュースしています。2021年11月に行われたFIBAバスケットボール ワールドカップ2023アジア地区予選の日本対中国戦や、ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト、生活雑貨のロフトが開催している人気のビューティーイベント、コスメフェスティバルなどの演出や制作、運営などに携わってきました。

元々、富裕層向けにゴルフのレッスンスクールを行う会社として2010年に設立しましたが、2011年の東日本大震災で、面倒をよく見ていた後輩の実家が被災し、後輩が経営していたイベント会社に常駐し、福島県いわき市で行われた被災地復興を目的としたイベントに関わったのをきっかけにイベント事業に携わるようになりました。

当時、被災者の多くが家にこもることを余儀なくされ、それまであった人と人とのつながりを絶ってしまってはいけないと、震災前から定期的に開催していたイベントを再開することになりました。主にスタッフを手配して、イベントの現場を回す運営の仕事を担当して、何もない状態から形にしていくイベント業界にすっかり魅了されました。そして、ステージや空間の演出といった業界の仕事を深く知るに従い、イベントの仕事をしていきたいと思うようになりました。

営業なしで仕事を得られる理由

仕事の領域をイベントの運営から企画・制作、演出・進行と広げていきましたが、実はこれまでに営業らしい営業をすることはありませんでした。仕事に誠実に向かい合い、正しいことをしていれば、いろいろな人達が見てくれて、声をかけてくれる人が必ず現れると信じています。それに、「お仕事をください」から始まってしまうと、その時点で上下関係が決まりパートナーではなくなってしまいます。そうなるとwin-winの関係が築きにくくなってしまい、何かを提案するにしてもいちいちおうかがいを立てなくてはいけなくなります。もちろんクライアントと完全に横並びになることはできませんが、お互いをリスペクトしながら進めていくと、どんな仕事も成功できると思っています。

弊社の強みは、外部へ仕事を発注することがほとんどなく、自社のスタッフで行うことができるという点です。私も企画や制作はもちろんのこと、映像の撮影・編集と演出ができますし、他にも複数の技術を持った社員が多く所属しています。仕事に関わる人数を減らすことでコストを抑えることができますし、顧客との意思疎通が図りやすくなります。結果的に、浮いたコストを他に充てることでイベント全体のクオリティーをアップできたり、納期を早くしたりすることも可能です。

クライアントのお金を預かっていることを肝に銘じ、クライアントにとってのベストを考えて無駄なことを極力省いたうえで、かけるべきところにお金をかければ、いいものができると思います。また制作段階から社員たちがクライアントと頻繁に顔を合わせることで、全社員が仕事を自分事化できる点や、制作スタッフが現場に出ているため、本番中に映像やデザインの修正依頼が来てもすぐに対応できる点も、内製化がもたらしたもので、「コストパフォーマンスの最適化」が弊社の強みです。結果として現場を知っていて、それを兼務できるクリエイター集団は本当に強いんです。

制作スタッフも楽しく仕事ができるために

2019年から東京・蒲田にある日本工学院専門学校の講師として、音響芸術科、コンサートイベント科で講義や実際にイベントを行う実習も行い、2021年春と2022年春に2人ずつ教え子を新卒の社員として採用しました。

昔から付き合いのある会社が上場して社員を急激に増やしたことがあったのですが、その会社の良さは失われてしまい、コロナ禍で業績が傾いたときに社員が辞めていくスピードも早かったのです。その様子を目の当たりにして、自分のマインドを着実に受け継いでくれる人間だけを採用していこうと決めました。指導する学校では自分の良いところも悪いところも学生に見てもらえますし、働く上で必要な姿勢や考え方も時間をかけて教えることができます。その結果、学校側にも喜んでもらっています。

これから弊社が目指すのは、イベント制作に関わった全員が笑顔になること。実際の現場は運営スタッフがピリピリしていることが多く、彼らの不安を解消すると、生き生きとした表情に変わります。それもイベント制作の隅々までを自社で知り尽くしているからできることだと思っています。自分たちができることを少しずつ増やしていく弊社のスタイルを追従する会社が増えれば、イベントはもっと楽しいものになると確信しています。

株式会社エレメンタルプロジェクト

代表取締役

2010年6月株式会社エレメンタルプロジェクト設立。テレビ局のイベント制作本部や国内大手IT系企業イベント制作本部、運営本部を歴任後、2016年から本格的に演出の道へ。2019年、日本工学院専門学校コンサートイベント科イベント企画コースの講師に就任。2021年、一般社団法人日本イベント協会理事に就任。2022年、日本工学院専門学校音響芸術科 「総合業界研究」の講師に就任。

https://elemental-project.com/