2022.06.13

連載企画 「総合診療かかりつけ医」が患者を救う 

第1回 困った時の最初の入り口が「かかりつけ医」

地域の医療体制には、先に挙げた急性期、回復期、慢性期病院の各病院だけでなく、町のかかりつけ医も含まれます。これまでもかかりつけ医は、比較的軽微とされる病気や怪我を診る役割を担ってきました。しかし、日本には街のクリニックで治療が可能であるにもかかわらず、大病院を受診する人が多くいる実状があります。そのために、大病院のキャパシティが軽症の患者でいっぱいになり、本当にそこで治療が必要な重症度の高い患者を受け入れられなくなってしまっています。

それは、今後、地域の医療ニーズに合わせて、病院の数や病床数を決めていこうとするなかで不都合が起こる要因となります。かかりつけ医で診られる病気や怪我を、そうした大病院のニーズに含めるのは不適切だからです。

そこで、よりかかりつけ医の役割を明確にするとともに、機能を強化して、地域住民がみなかかりつけ医をもち、積極的に利用することを、地域包括ケアシステムにも盛り込んでいます。それが実現されれば、急性期病院は急性期医療を必要とする患者を、回復期は回復期医療を必要とする患者を、というように、医療ニーズのマッチした患者に対して、より効率的かつ効果的な医療を提供できるようになることが期待されます。

かかりつけ医の役割は、地域住民の病気や怪我を適切に処置し、必要に応じて専門の医療機関を紹介する、そして検診など病気予防の役割を担い、住民の健康を管理する、など多岐にわたり、いずれも医療の「入り口」として重要です。

さらには、病院から自宅に戻った後にフォローアップしたり、介護や福祉のサービス機関と連携して在宅医療を行ったり、といったことも、住民が住み慣れた地域で暮らしていくためには大切です。ここでもかかりつけ医の力が必要とされます。これを受けて日本医師会や各都道府県では「かかりつけ医をもちましょう」と盛んに広報しています。

現在、「コンビニ受診」や「はしご受診」が問題になっています。コンビニ受診とは、軽傷の患者が夜間や休日に救急外来を受診することを指し、これによって勤務医の負担が増えるとともに、緊急性の高い重症患者にしわ寄せがいく恐れがあります。はしご受診は同じ病気でむやみに複数の医療機関を受診することで、医療費の無駄遣いになりかねず、また、検査や薬の重複が体に悪影響を及ぼす可能性もあります。

それぞれが「かかりつけ医」をもつようになれば、こうした医療資源の無駄遣いにつながる受診はなくなり、地域ごとの医療体制が健全に回るようになるはずです。かかりつけ医をもつことは地域住民にとってもメリットが大きい、と自治体や日本医師会は訴えています。日本医師会ではかかりつけ医を「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と位置付けています。

そしてかかりつけ医にはいくつかの機能があります。

・日常行う診療においては、患者の生活背景を把握し、適切な診療及び保健指導を行い、自己の専門性を超えて診療や指導を行えない場合には、地域の医師、医療機関等と協力して解決策を提供する。

・自己の診療時間外も患者にとって最善の医療が継続されるよう、地域の医師、医療機関等と必要な情報を共有し、お互いに協力して休日や夜間も患者に対応できる体制を構築する。

・日常行う診療のほかに、地域住民との信頼関係を構築し、健康相談、健診·がん検診、母子保健、学校保健、産業保健、地域保健等の地域における医療を取り巻く社会的活動、行政活動に積極的に参加するとともに保健·介護·福祉関係者との連携を行う。また、地域の高齢者が少しでも長く地域で生活できるよう在宅医療を推進する。

・患者や家族に対して、医療に関する適切かつわかりやすい情報の提供を行う。
(「医療提供体制のあり方」日本医師会·四病院団体協議会合同提言(2013年8月8日)

この文言から皆さんは、どんな医師をイメージするでしょうか。少し難しい言葉が並び、想像しにくいかもしれませんが、何かあったときにすぐ診てくれて、ちょっとしたことでも相談に乗ってくれて、もし症状が重ければ病院に紹介もしてくれるーそんな頼もしい医師像が浮かんでくるのではないかと思います。

例えば糖尿病などの生活習慣病を例に挙げると、薬の処方や定期的な検査、食事などの生活習慣に関わる相談を受けるとともに、病状が急変したときの対応や、重症化した場合の病院への紹介も行い、さらに病院を退院したあとや、要支援·要介護になった場合の専門スタッフや施設との連携も行う、ということになります。これなら確かに、安心できそうです。

しかし、地域医療構想がめどとしている2025年まであと3年ほどとなっていますが、果たして今のかかりつけ医は皆さんにとって、安心、信頼できる存在なのか、考えていきます。

きくち総合診療クリニック

理事長

2004年3月福島県立医科大学医学部卒業、4月浜松医科大学医学部附属病院 初期研修医、2005年5月袋井市民病院 外科 研修医、2006年4月磐田市立総合病院 外科 後期研修医、2008年4月国立がんセンター東病院 呼吸器外科 レジデント、2009年9月湘南東部総合病院 外科 外科科長 救急センター長/湘南地区メディカルコントロール協議会登録指示医、2016年4月座間総合病院 総合診療科、2017年きくち総合診療クリニック開業 書籍「総合診療かかりつけ医」が患者を救う