2022.09.30

連載企画「総合診療かかりつけ医」が患者を救う

第3回 総合診療かかりつけ医ができること

総合的な診療の行える医師がクリニックにいれば、一人のドクターがすべての症状を診察し、同じクリニック内で治療を継続していけます。患者にとってみれば、体調が悪いとき、それが胃なのか肺なのか腰なのか、と部位にとらわれることなくかかれるので便利です。難しく考えず、調子が悪いのはなぜかを知るために受診すればよいのです。

これは特に、多くの疾患を抱える高齢者にとっては便利なはずです。 臓器別の疾患ごとにそれぞれの専門クリニックを受診して回るのはどう考えても効率的ではありません。何より、通うのに疲れてしまいます。普段は糖尿病を診てもらっているけれど、近頃どうも胃の調子が良くない、といったときにも気軽に相談できますし、だるい、疲れやすい、手足に力が入りにくいといった、どこがどう、とはっきり分からない不調にも対応してもらえます。まさに「病気を診る」のではなく「多くの病気や不調を抱えた一人の患者を診る」のが総合診療かかりつけ医なのです。

総合診療かかりつけ医では、まず問診で具合の悪いところを聞き、採血やX線など必要な検査をします。このとき、症状の出ているところだけを調べるのではなく、患者の話から可能性のある病気を予測し、その病気が実際にあるかないかを調べるための検査を行います。一つの症状から、臓器別ではなく全身にわたり、いろいろな病気の可能性を考えることができる―――これが診療科別と総合診療の最も違うところです。特に、命に関わるような大きな病気のあるなしは慎重に検査します。例えば、肩こりは心筋梗塞の前触れの可能性がありますので、その除外をするための検査をします。その結果、心筋梗塞のリスクがなく命に別状がないことが分かったうえで、肩こりの原因は肩だろう、と判断します。 ここから先の治療は、肩の専門である整形外科の先生のほうが詳しいので、整形外科に紹介をする、という流れになります。

怖い病気である可能性は決して高くはありません。しかし万一の場合、手遅れになってしまったら救えたはずの命も救えません。 検査ではっきりと、心配ないことが分かれば患者も安心です。総合診療では、単に病気を治療するだけでなく、患者の不安を取り除き、安心して日々送ってもらえるようにすることもまた、使命なのです。

医療法人ONE きくち総合診療クリニック

理事長

2004年3月福島県立医科大学医学部卒業、4月浜松医科大学医学部附属病院 初期研修医、2005年5月袋井市民病院 外科 研修医、2006年4月磐田市立総合病院 外科 後期研修医、2008年4月国立がんセンター東病院 呼吸器外科 レジデント、2009年9月湘南東部総合病院 外科 外科科長 救急センター長/湘南地区メディカルコントロール協議会登録指示医、2016年4月座間総合病院 総合診療科、2017年きくち総合診療クリニック開業。 書籍「総合診療かかりつけ医」が患者を救う