2022.05.16

見直したい、世界最古を伝える日本。

日本国内には建築物や工芸品など、多くの「世界最古」が存在する。世界には古くから存在する民族・地域も多い中で、我が国が“最古”を保ち続ける背景は何だろうか。具体的な事例をご紹介しつつ、解き明かしてみたいと思う。

奈良にある法隆寺は世界最古の木造建築物

1300年余り続く元号

日本の最初の元号は645年から始まる大化。その後、2度の無元号の時期を経て701年から「大宝」が元号となった。現在にいたるまで1300年余りの間、元号は途切れずに継承されている。日本においても諸外国同様、歴史の中で権力闘争は繰り返されてきている。しかし、他民族の侵略を受けない、一つの王朝が継続しているといった観点からみると、日本は世界最古の国家といえる。世界には、四大文明をはじめとして各地にルーツとなる国家が誕生してきたが、他国との闘争の中で既に失われたものも多い。

最古の国家元首制度

元号と切り離せないのが日本の国家君主制度である「天皇制」だ。国家元首としての君主が存在する世界43カ国の中で、日本の天皇制が最古の制度である。日本の歴史を振り返ると、各地で大名が群雄科挙した戦国時代においても天皇制を廃する動きはなく、途切れずに現在まで続いている。こうした国家としての礎はなぜ、途切れずに継承されてきたのだろうか。元寇に代表されるように、四方を海に囲まれているという地理的な要因で他国の侵略を受けない利点はあるだろう。しかし、日本が古のものを継承できた理由は、他にないのだろうか。

世界最古のモノづくり

国や王朝制度のほかにも、日本には世界最古と言われるものが数多く存在する。青森県大平山元遺跡では、石鏃(せきぞく=石の矢じり)が見つかっている。制作時代は1万6,500-1万5,500年前。同時代に作られた土器も世界最古級と分析されている。ヒスイの名産地として知られる新潟県糸魚川市では5億2000万年前の最古のヒスイが出土。ヒスイ文化発祥の地としても世界最古だ。また、奈良にある法隆寺は世界最古の木造建築物だ。西院伽藍には世界最古の木造建築が立ち並ぶ。また法隆寺の中に安置されている小さな三重の塔の中には、世界最古の印刷物として知られる「百万塔陀羅尼経」が眠っている。

古くから続く人の営み

モノづくりから人の営みへと視点を変えてみよう。法隆寺を建立した組織は大阪に現存する。総合建設会社として事業をおこなっている金剛組だ。創業は西暦578年と日本の歴史よりも古い。宮大工集団をかかえ、自院や神社、各地の文化財の修理や復元、再現などを手掛けている。法隆寺の建立は、聖徳太子の名を受け行ったというのだから驚きだ。

金剛組とほぼ同時期には、ほかにも各地で企業が創業している。京都では587年に生花教授を生業とする池坊華道会、山梨県では705年に慶雲館が旅館経営を始めている。以降も885年に仏具製造の田中伊雅仏具店(京都府)、794年に鋳物製造の五位堂工業(奈良県)、1000年に和菓子製造販売の一文字屋和輔(京都府)など、それぞれの分野で世界最古の企業が産声を上げている。ほかにも兵庫県の古まん(717年創業:旅館経営)、石川県の善吾楼(718年創業:旅館経営)、愛知県の中村社寺(970年創業:建築)と、1000年を超える企業が各地に存在する。

人から人へ

前述の金剛組は、経営危機に陥ったこともあったという。だが2006年、2008年と、他企業に事業譲渡をすることで組織を引き継いだ。営業体制を一新する一方で、技術の継承が大切な職人の現場には手をつけなかったという。また、金剛組には専属の宮大工により結成された「匠会」という組織が存在。目的は創業以来1400年間、弟子から弟子に伝えてきた技を次世代に伝えることだ。国や組織の「世界最古」を伝えてきたのは言うまでもなく「人」である。匠会の取り組みは企業や組織の継承を考えていく上でも、大きなヒントとなるのではないだろうか。これからも人から人へ、伝統や技術のバトンが渡され続けることを願わずにはいられない。

転載元:Qualitas(クオリタス)