キャリア
経営哲学は「社員の幸せ」名門野球部で学んだリーダーシップ アイニティアイ・濱田信也代表取締役
賃貸物件の原状回復工事やリフォーム一般家庭向けハウスクリーニングサービスを行う「アイニティアイ」。濱田信也代表取締役は、2013年に24歳という若さで起業し、高校・大学時代、野球の名門校で主将を務めて学んだリーダーシップを元に、順調に業績を伸ばしてきた。「社員が誇りに思え、幸せになれる会社」を目指し、2022年から週休3日制を導入するなど、先進的な会社経営に取り組む濱田代表取締役に、組織のリーダーとしてのあり方や経営哲学を聞いた。

アイニティアイ 濱田代表取締役
作業や工事の内製化と、顧客第一の提案がモットー
当社は、不動産賃貸物件のオーナーや管理会社からの依頼で、入居者の退去にともなう立ち会いや原状回復工事、リフォーム、ハウスクリーニングまで一括して手がけています。他に、一般のご家庭の水回りやレンジフード、エアコン、空き室のクリーニングも行っています。
リフォーム業者は、通常工事を受注すると、キッチンなどの設備、壁紙クロス張り替えなどをそれぞれ専門の業者に外注しますが、当社の強みは施工の内製化に力を入れている点にあります。特にハウスクリーニングは、繁忙期には月に5〜600件の業務を、正社員が行います。大型の工事は正社員ではありませんが、設備交換やクロス張り替え、クリーニングもできる10人を超える多能工の職人の方に、当社の仕事だけでほぼスケジュールが埋まるような体制で仕事をお願いしています。私も顔と名前を知っている確かな技術の方ばかりです。
内製化によって中間マージンのカットによるコスト削減ができるほか、柔軟性のあるスケジュールが可能になり、その結果工期が短縮できます。工期短縮によって家賃収入が得られない空室期間も短くなるので、お客様のメリットにもつながります。もし予算に余裕ができた分で施工内容をグレードアップしていただければ、物件の価値向上にもつながります。また、当社では豊富な施工実績を元に、間取りやクロスの流行、最新の製品や施工技術、予算を少し追加すれば良くなることや、逆に同じ仕上がりでも費用をかけずにすむ方法など、お客様にとってより良い工事を積極的にご提案しています。

毎年掲げているアイニティアイのスローガン
野球部主将時代に培った、組織を率いるための哲学
会社を経営するにあたって大切にしているのが、人に高いクオリティーの仕事を要求するためには、自分もその仕事ができることが大切だということです。そのために起業後の4~5年は、私も朝から夕方まで現場で作業して技術を身につけ、事務は夜にしていました。社員には「口だけの社長ではない」と思ってもらえている自信があります。また、社員には、「ゼネラリストだけでもスペシャリストだけでもだめだ」と言っています。実際にはどちらかに重きを置くことになりますが、両者の感覚を兼ね備えてこそ、最大のパフォーマンスを発揮できると考えています。総務部長にも、最初の2年間は現場で仕事をしてもらいました。
こうした経営哲学のルーツは、浪商高校・大阪体育大学時代に野球部主将として、どちらも100人を超える部員をまとめた経験にあります。高校、大学ともに、入学時から自分が主将になって甲子園や全日本大学野球選手権大会に出場するという目標を定め、そのために自分が何をすればよいか逆算して行動していました。甲子園出場はかないませんでしたが、大学では、入学時に低迷していたチームを立て直すために、環境整備や上下関係の見直しなどの組織改革に取り組み、全日本選手権に出場することができました。その時「リーダー次第で100人、200人の組織も変わることができる」という実感をもつことができました。また、周りから認められて組織を率いるには、謙虚さをもち、自分が率先して行動する大切さを学びました。

学生時代の濱田代表取締役
やりたいことを自由にできる幸せを社員に
会社の経営にあたっては、社員が働いていることを誇りに思えるような会社、幸せに生きられる会社にしたいと考えています。幸せとは何かは人によって違いますが、私の考える幸せは、自由であることです。そして時間と経済的な余裕がないと、本質的な幸せは追求できないと考えています。私の場合は社長なので、どんなに忙しくても自分の裁量で自由に仕事をしていますが、社員は同じではありません。
そこで2022年1月から、繁忙期の2〜5月と11〜12月を除く半年を週休3日とし、2023年からは完全週休3日制を導入することにしました。週に3日休みがあれば時間に余裕ができると思いますので、その時間を趣味に使う、副業で稼ぐ、独立の準備をするなど、自由に使ってもらいたいですね。もしもっと当社の仕事をしたいなら、休日出勤を申し出れば閑散期であっても出社を認めて、休日出勤手当を支給します。
また昨今「お金がないから結婚できない」といった若者の言葉を耳にしますが、当社では、2日の誕生日休暇制度と会社から家族分を含む旅行のプレゼント、既婚者には世帯主か否かにかかわらず家族手当、子ども手当など福利厚生を充実させています。人生はそんなに長くありません。仕事も趣味も家庭をもつことも、やりたいと思ったときにできるようにサポートしていきたいと考えています。会社としては、2025年までに社員を100人に増やし、売上げ15億円という目標達成に向けて準備しています。
■プロフィル
1989年、大阪府出身。幼少期より野球を始め、浪商高校、大阪体育大学では部員100人を越える大所帯で主将を務める。大学卒業後スポーツ総合商社に入社し、フィットネスクラブ、治療院併設型トレーニングジムの立ち上げ、店長、マネージャー、アスリートのマネジメント、スポーツイベントのプロデュースなどを経験した後、2013年に株式会社アイニティアイを設立。
株式会社アイニティアイ
http://inityi.com