2022.11.16
社会に貢献し続ける、あの企業の周年を祝して。
2022年5月、創業100周年を迎えた旭化成グループ。
2022年、旭化成グループは100周年を迎えた。グループでは節目を機に「旭化成100周年記念誌」を編纂。公式サイトで公開している。創業以来、吸収・合併とともに成長してきた旭化成。取り組みを目にして思うのは、事業範囲の広さと商品の多彩さだ。旭化成は間違いなく、私たちのくらしの中にあると実感する。誕生から100年余り。売上2兆円を超える同社は常に社会に貢献し続けてきた。これまでの歩みを振り返るとともに、グループの根底にある思いに触れてみたい。

くらしに寄り添い、支える
旭化成の歴史は1922年、野口遵氏による旭絹織の創業に始まる。以来、社名の変更や日本窒素科学、東洋醸造などの外部企業と合併を行いながら、事業を拡大してきた。衣類や食品、家庭用ラップといった生活用品から畳や建材まで、事業で扱う分野は実に幅広い。「旭化成はくらしの中にある」といっても過言ではない。また、各種電化製品や工業製品に使用するLSI、ダイナマイトなどの工業製品、医療機器から鉄塔に至るまで、暮らしを陰から支える製品にも数多く関わっている。人々のより良い生活のため、社会に貢献することが旭化成の目標と言える。創業から10年余りが経過した1933年には、「大衆文化の向上を念として、最善の生活資料を最低廉価に然も豊富に給することを以て究局の目的としなければならぬ」と所信を述べ、大衆文化向上のため、より良い生活物資を安価に提供することがメーカーの使命だとしている。
2人のキーパーソン
旭化成の歴史は2人のキーパーソンを抜きには語れない。一人は言うまでもなく、創業者の野口遵氏だ。そして、もう一人は1961年から1985年まで、旭化成グループ代表を務めた宮崎輝氏である。野口氏は「日本電気化学工業の父」とも呼ばれ、旭化成の創業に先立つ1906年、曾木電気を設立し、水力発電の供給を開始した。その後、カーバイドの製造やアンモニアの合成といった事業で特許を取得。総合化学工業事業へと乗り出すと、旭絹織のレーヨン事業で大きな成功を収めている。旭化成の原点を築いた人物だ。また宮崎氏は、旭化成の原型を築いた人物と評される。「大企業といえども、5年間思い切った手を打たず、現状に満足すれば傾いてしまう」という考えのもと、経営の多角化に力を注いだ。「赤字部門であっても、将来の成長につながるのであれば積極的に育てる」ことを信条に、一度行うと決めた事業を諦めることはなかった。「ナイロン・合成ゴム・建材」という3つの新規事業を考案したのも宮崎氏の功績である。
挑戦を続ける社風
旭化成の歴史は挑戦の歴史でもある。ナイロン・合成ゴム・建材事業に進出を果たし、軌道に乗せた後の1968年、石油化学コンビナートの建設に着手。1972年からは、開発した建材を活用し住宅事業にも乗り出した。その後も1983年に化学工業のノウハウを生かしたLSI事業への参入を行っている。医療事業にも力をいれており、2012年には救命救急医療への基盤づくりのために1800憶円を拠出し、米国のゾールメディカル社を買収。旭化成の現在は、こうした新しい事業、新しい取組みを続けて辿り着いた積み重ねでもあることがわかる。挑戦のスピリットは旭化成の根幹を成すものの一つなのである。
世界にないものを作り出す
旭化成は特許保有件数が数多あることも特徴的な企業だ。日本国内で約7,200件、海外で7,800件、計1万5,000件の特許を保有している。特許件数が多いことは、メーカーの強みとなる。その開発分野は幅広く、燃料電池用の電解質膜から住宅領域の軽量気泡コンクリート、ヘルスケア領域の人工肝臓まで多岐にわたる。携帯電話に必要不可欠なリチウムイオン電池を発明したのも旭化成だ。開発技術者たちが目指しているのは「昨日まで世界になかったものを作り出すこと」。根底にある思いは社会への貢献だ。こうした技術力を背景に、家庭用ラップやベンベルグ繊維など、市場を制した製品がいくつも開発された。製品の中には、スマートフォン用のセンサー、コロナ禍で需要が急拡大した室内換気の重要性を伝えるCO2センサーなど、市場の変化とともに急成長したものも少なくない。常に粘り強く技術を磨き、誠実さをもって信頼を勝ち取るのが旭化成のポリシーなのだ。
“いのち” と “くらし”への貢献
旭化成が企業理念を制定したのは1996年のこと。その後、2001年に旭化成グループとしての理念を策定し、時代の変化に合わせて2011年に再改定を行った。グループ理念は「世界の人びとの“いのち”と“くらし”への貢献」だ。これは一世紀前から変わらない旭化成の根本理念でもある。また、代表取締役会長の小堀秀毅氏は、2021年の挨拶の中で、「自由闊達で風通しの良い文化」と「チャレンジ精神」が旭化成のDNAだと述べている。グループバリューとして掲げるのは「誠実」「挑戦」「創造」。「健康で快適な生活」と「環境との共生」の実現を通して、社会に新たな価値を提供することがグループが目指すべきビジョンとなっている。
創業の理念を受け継ぎ、2022年で100周年。2030年を見据えた中期経営計画では、次の成長を牽引する10の事業に6000憶円を投じ、2024年度に売上2兆7000万円、2030年までに利益4000憶円を目指すとしている。収益分野には、水素関連や蓄エネルギーといった、これまでの技術を活用できるものも多い。創業から1世紀を超え、次の100年へと挑戦を続ける旭化成。100周年を祝すとともに、その真価にこれからも注目していきたい。
転載元:Qualitas(クオリタス)