2022.06.03

「眼鏡の聖地」の技術力で抗ウイルススプレーを開発 

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中で殺菌、除菌のニーズが増える中、「眼鏡の聖地」と呼ばれる福井県鯖江市で眼鏡塗装を手掛けるワカヤマは、その技術を生かして抗ウイルススプレー「ニンジャコート」を開発、持続性の高い抗ウイルス加工が手軽に実現できると、商業施設やオフィスなどから注文が殺到しているという。若山健太郎代表取締役社長に商品開発に至る思いを聞いた。

全国の眼鏡店のために

当社は、眼鏡や時計など高級小物の外観塗装から各種メッキや電着塗装、焼付塗装まで手掛ける表面処理加工メーカーです。眼鏡以外にも、美容機器や医療関係、通信・インフラ関連製品までさまざまな業界に表面処理という技術を提供しています。業界では人口減に伴う職人不足が進み、高級品に特化した塗装やメッキ加工を行えるメーカーは全国でもごくわずかで、超高級品の加工に限れば、当社の名前が必ず挙がるような立場となっています。だからこそ、自社の技術に誇りを持ち、医療品や建材などの新たな分野にも挑戦し、さまざまなニーズに対応しています。

眼鏡は対面販売で売る商品ですので、コロナ禍の影響は大変厳しく、日本中の眼鏡店が影響を受けました。個人事業主の眼鏡店から、「何とか抗ウイルスコーティングの商品ができないか」といった声がたくさん挙がりました。その声に応えて、当社が長年培ってきた塗装、表面処理技術を生かした商品の開発に乗り出しました。

手軽に効果の高い抗菌・抗ウイルスを実現

以前から抗ウイルス剤は開発されていましたが、薬剤を液体と混ぜてスプレーにするのは技術として難しく、市販されてきませんでした。薬品企業からは「液体とは混ざりませんよ」と言われたのですが、⻑年培ってきたメッキ技術を応用して、薬剤が液体と混ざり、誰でも手軽にスプレーできるよう、研究を重ねました。その結果、コロナウイルス対策として経産省が推奨し、エビデンスが多数ある第4級アンモニウム塩化合物を原料とした抗ウイルススプレー「ニンジャコート」を開発しました。「ニンジャコート」を使用すると、99.98%以上のウイルスが減少することを、一般財団法人日本繊維製品品質技術センター(QTEC)で確認済みです。

これまで抗菌スプレーや抗ウイルス素材のさまざまな商品は発売されていますが、効果が現れるまでの時間が長すぎたり、持続時間が短すぎたりといった問題がありました。「ニンジャコート」は一度スプレーすると、塗布した瞬間から90日間効果が持続し、毎日の消毒から解放されます。

コロナ禍を経て、一人一人が抗菌・抗ウイルスへの意識が高まり、集客をする際にもウイルス対策が必須の時代となりました。「毎日備品の除菌が大変」「部屋全体に抗ウイルス塗装をしてもらいたいけど経費が出ない」と悩んでいたお店の方にとって、「ニンジャコート」を使えば、手軽に効果の高い抗菌・抗ウイルスを実現できます。

プロ意識の高い社員と共に

日本中の眼鏡店に安心して来てもらえるよう、この商品を全国に提供することは、鯖江で事業を行う使命だと考えています。そして今では眼鏡店に限らず、ホテルや商業施設、幼児教室、理容室など、さまざまな場所で利用されています。利用者からは、「社内の安心につながっています」「消毒の時間が軽減できました」などと好評です。

福井は布の産地でもあるので、「ニンジャコート」以外にも、繊維のアフターコロナ新商品を現在開発中です。「ニンジャコート」というブランドで、さまざまな製品とコラボしていけば消費者にも分かりやすく届けられると考えています。コロナ禍を経て、時代のニーズに応じて仕事を自ら作っていく、その原点に立ち返りました。

鯖江で創業してから35年を超え、眼鏡の表面処理から始まった当社が、光学部品から医療機器、そして「ニンジャコート」に至るまで、多岐にわたる仕事ができているのは、日々プロ意識を持って仕事をしている社員のおかげです。今後も社員一同、学び、行動し、当社ができる価値を最大限提供していきたいと思います。

株式会社ワカヤマ

代表取締役社長

1982年福井県出身。2005年、オレゴン大学ビジネススクールを卒業後、米国でオンラインセールスを経て、鯖江の眼鏡製造工場に入社。眼鏡部品製造や組み立てなどを学ぶ。2008年、株式会社ワカヤマ入社。2016年、代表取締役社長に就任。

https://www.wakayamapp.jp/