2022.05.12

特集「根ざす人」種子島で創りたい、人材と未来 株式会社VillageAI 代表取締役 里洋平

鹿児島県の南に位置し、大隅諸島を構成する島の一つである種子島。鹿児島県南埠頭から高速船で1時間35分。人口約2万8千人(※令和3年9月時点)を有し横浜市とほぼ同じ面積のこの島は、日本で初めて鉄砲が伝来した地であり、現在では種子島宇宙センターもあることから“宇宙に一番近い島”として知られている。 歴史と最新の科学技術が融合するこの島を故郷に持つ里洋平氏は、2021年に「株式会社Village AI」を設立。彼が種子島でなし得たいこと、そしてこれからのビジョンについて語ってもらった。

大隅諸島を構成する島の一つである種子島

2021年、故郷である種子島に株式会社VillageAIを設立しました。「故郷を豊かに」というミッションを掲げ、AIを駆使したデータ分析事業を核として、地方を盛り上げていく活動を行なっています。データ分析の例として中古車の査定をあげますと、車種や年式、走行距離などさまざまな情報から、2週間後のオークションでいくらで売れるかをAIで予測し、最適な買取金額などを算出するイメージです。

「ないものばかり」の状況から抜け出し、ビジネスの世界に

ーー父親が種子島、母親は沖縄の出身です。私も高校卒業まで種子島で過ごし、その後上京しました。小さな頃から分析気質というか、観察するのが好きで、足が速い人のフォームなどを分析し、自分の弟にそれを試したりしていました。

種子島について、みなさんがどのようなイメージを持っているかは分かりませんが、
例えばテレビをつけて、マクドナルドのCMが流れていても、島にマクドナルドはありません。自然や人の温かさなど、多くのものを持っている島ですが、本土と比べると「ないものばかり」の環境です。

そんな環境で育ったので、島を出たいというよりは、出ることが元々決まっていた、という表現が正しいのかもしれません。雇用も少ないですし、若者にとっては島を出る選択肢が現実的なのだと思います。同学年の9割くらいは島から出ていると思います。「いつ出るのか」「出て何をするのか」。そんなことを考えて過ごしてきました。

高校卒業後は琉球大学に進学し、新卒としてヤフーに入社しました。ウェブ開発を主に担当していまして、データベースの設計構築だったり、いわゆるデータ分析に関係するようなアルゴリズムの開発などを行っていました。

またその当時に「Tokyo.R」というプログラミング言語のコミュニティーを立ち上げて、社内・社外で活動を進めていたりもしました。その後は2社でデータ分析の研鑽を積みながらデータサイエンティストとして働きました。大規模データマイニングやマーケティング分析業務に従事し、おこがましいですが、先駆者としてデータ分析の業界を盛り上げていきたいと思っていました。

株式会社VillageAI 代表取締役 里洋平

株式会社VillageAI 代表取締役 里洋平

コロナ禍で確信した、故郷への思い

データサイエンティストという言葉が登場し、データ分析の重要度が認識され始めた2014年、里氏はDATUM STUDIO株式会社の立ち上げに参画。企業へのデータ分析をおこない、データサイエンティストの育成支援を行い順調な成長を遂げる。2018年にはKDDIグループへのM&Aを行い、さらに活動領域を広げてきた。そんな最中、世界を襲ったコロナウイルスにより、故郷種子島に対しての考え方が固まってくる。

株式会社VillageAI 代表取締役 里洋平

ーー実は種子島を出て東京で働いている期間、種子島の同級生や友人と連絡を取る機会ってほとんどなかったんです。それがコロナになって、リモートでのコミュニケーションを取る機会ができ、そこで何年ぶりに友人と話して交流ができました。Zoom飲みなどを行いながら、友人達の近況などを聞いていると、みんな「いつかは島に戻りたいけど、現実的に雇用や収入を考えると戻りにくい」という考えを持っているのだと感じました。

自分が種子島の雇用創出、活性化に何かできないだろうかと考えているタイミングで、弟(周平氏)とも久しぶりに話す機会がありまして、同じような課題を感じていました。

兄弟でそういった話を今までした事がなかったのですが、すぐに同じ方向に考えを向ける事ができました。親もいるし、いつかは島に帰らなければならない。そんな状況で雇用の問題があるのであれば、「一緒に会社を立ち上げて島に新しい事業を作って、雇用を創出していこう」と二人で決めたんです。

その話をした翌日に弟は会社を辞めたので(笑)、とても早いスピード感で話を進めることができました。島を出てからあまりコミュニケーションを取ってはいませんでしたが、新しいものを作る事や、チャレンジする事が二人とも好きで、感覚も似ていると思っていましたし、「やり切るだろうな」という信頼もありました。そして2021年8月、VillageAIを種子島に設立しました。

株式会社VillageAI 代表取締役 里洋平

特産物を利用した”安納芋プロテイン”

ーー本社は種子島にありながらも、データ分析の仕事は東京で受注し、メーン事業として活動をしているVillageAIですが、現在は島の特産品を使用した新事業を進めています。

種子島の大半は高低差の少ない平坦地になっており、海風が運んでくる豊富なミネラル成分を含んだ土壌を生かした農業、そして流れ込む黒潮がもたらす豊かな漁場を生かし発展させてきた漁業が主な産業として島民を支えています。

そんな素晴らしい自然の恩恵を受け、食料自給率は約800%ですが、島の特産物をより活用し、産業としてできないかと思って始めたのが、”種子島安納芋プロテインプロジェクト”です。別名”蜜芋”と呼ばれる、蜂蜜のような甘さが特徴の安納芋は、現時点でも島外の菓子店や加工工場に卸されています。

その安納芋を利用し、「今までの焼き芋やお菓子以外で、もっと日常に根付くような製品を作ろう」。その発想から生まれたのがタンパク質などの栄養不足を改善するための”安納芋プロテイン”でした。

毎日摂取しなければならない栄養分に、安納芋の甘さでおいしさをプラスしたら、性別問わず子供から高齢者まで、手にとってもらえる製品になるのではという期待から、”プロテ美人"は生まれました。

ありがたいことに、製品化に向けてのクラウドファンディングは開始1日で目標額100万円を達成しました。これから集まる支援金の一部は、2021年度の安納芋の収穫量を例年の約半分に落ち込ませる原因となった”基腐病”への研究費や対策費用に寄付をしようと考えています。

大隅諸島を構成する島の一つである種子島

里洋平の「根ざし方」

ーー住んでいる人が少ない分、我々の思いが人から人を経て伝わることに時間はかからないと思いますし、”離島で”という付加価値がつくという点も、ビジネスを行う面ではある意味有利だと考えています。

島内では、まだまだ弊社の活動を理解している人は少なく、「何をしている会社なのだろう?」と思われているでしょうね。我々のビジョンは、故郷である種子島を豊かにし、地方産業を作っていくこと。今回の安納芋プロテインプロジェクト以外にも、今後も多くのプロジェクトを進めていく予定です。会社として利益をあげ、雇用を創出し、より種子島に来てもらいやすい環境を作ることに貢献したいです。また、元々考えていた事ですが、種子島からデータサイエンティストを育成、輩出していけるように企業活動を行なっていくつもりです。

株式会社VillageAI

代表取締役

SATO YOUHEI

1984年、鹿児島県種子島出身。2007年、琉球大学卒業後、ヤフー入社。ウェブ開発などを担当し、2014年、DATUM STUDIO株式会社の立ち上げに参画。データサイエンティストの育成支援を行う。2021年、弟の周平氏と故郷の種子島で株式会社villageAI設立、代表取締役に。 プロテ美人 :https://www.camp-fire.jp/projects/view/522076

https://www.villageai.jp/