2023.02.16
歯科用顕微鏡で治療の可能性を広げる
歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)の認知を広げる活動をしている顕微鏡歯科ネットワークジャパン。歯科医院を経営しながら、活動を続けるネクスト・デンタルの櫻井善明院長は、歯科用顕微鏡を初めてのぞいたときの光景に衝撃を受け、治療に取り入れるようになった。櫻井院長に、歯科用顕微鏡の治療への活用について聞いた。

歯科に対する価値観が180度変わる
歯科用顕微鏡を用いた治療を行う歯科医院が徐々に増えてきています。歯科用顕微鏡を使用すると、患者の口の中を明るい光のもとで拡大観察できるようになります。そのため、削る箇所が明確になり、余計な箇所を削ることがなくなるので、歯の寿命を延ばすことができるのです。
私自身2005年に歯科用顕微鏡を初めてのぞいた時、「拡大して見てみると、こんなによく見えるのか」と感じた衝撃をいまだに覚えています。教科書に書かれていたことが眼前に展開され、心の底から理解することができました。それまでの歯科に対する価値観が180度変わった瞬間でした。歯科用顕微鏡によって、歯科医師が認識できる世界が同じく精度が高いものになり、歯科治療そのものが改革されると思います。
歯科用顕微鏡を扱うには、技術と細かい作業が求められますが、修練を重ねていけば、使いこなせるようになります。歯のメンテナンスやクリーニングにも有効で、歯科医師だけでなく歯科衛生士も、歯科用顕微鏡で治療の精度を上げていくことできます。また、老眼のために歯科医師をそろそろ辞めようかと悩んでいたベテランの先生が、歯科用顕微鏡によって鮮明に見えるようになり、「歯科医師としての寿命が10年伸び、まだまだできそうです」と言われたこともあります。
たとえ使いこなせなくても、まずは歯科用顕微鏡をのぞいて、正しい診断につなげようと、歯科治療の現場に伝えていきたい。

治療の可視化を実現
歯科用顕微鏡がもたらす、もう一つの大きなメリットは”治療の可視化”です。
歯科用顕微鏡を使えば、歯科医師が見ている映像を患者の皆さんがモニターを通して見ることができ、さらに録画をして後に記録として見ることもできます。歯医者が患者に対して送る定期健診を呼びかけるハガキを、私のクリニックでは一切出しません。自分の治療経過の映像を患者は見ているので、時間がたった口の中がどうなっているのか、自分の目で確認したくなるので、自発的に来られるのです。
このように、患者に口内の健康や治療への理解を深めてもらうために使用できるのに加えて、歯科医療の現状を社会に発信する手段としても歯科用顕微鏡は積極的に利用するべきであると考えています。
口の中という、いわば”ブラックボックス”で行われる歯科医療は、医療に関する情報公開の必要性が問われてきた中でも、特に情報公開が遅れている分野なのです。歯科医療の発展を阻んできたこの閉鎖的な現状を変革するためには、治療の詳細を外部に発信し、第三者からしかるべき評価と検証を受けることが不可欠です。歯科用顕微鏡は、そのための大きな役割を担えるツールであると確信しています。

レベルが高い日本の歯科医
米国で根管治療を行う際には、歯科用顕微鏡を使用しなければならないと義務付けられていますが、日本にはその義務がありません。それでも治療をしていると、歯科用顕微鏡があった方が安心するので、日々使用しています。
使用の義務はありませんが、実は他国に比べても抜群に性能が高い歯科用顕微鏡を生み出しています。それを扱う歯科医師の技術力も高く、さらに歯科用顕微鏡を使える歯科衛生士は、世界中でも日本だけです。日本で歯科用顕微鏡による治療を受けることは、世界的に見ても非常にレベルが高く、患者にとっても安心できることでもあります。
現在歯科医院は約6万8000あるといわれる中で、顕微鏡の販売台数が7000台を超えており、歯科医院の1割に普及している計算になります。ただ実際には複数導入している歯科医院もあるので、もっと多くの歯科医に歯科用顕微鏡が普及してくれたらいいと思っています。
多くの人に歯科用顕微鏡の存在を知ってもらい、歯科用顕微鏡を用いた治療を受けてほしい。まだ使用していない歯科医は、ぜひ挑戦してほしいと願っています。
ネクスト・デンタル ソレイユ メインテナンスクリニック
院長
櫻井善明
1970年(昭和45年)生まれ、東京都出身。2000年、東京歯科大学卒業後大学院で生化学を専攻。歯科医院勤務を経て、2003年、医療法人社団友和会診療部長。2008年、タイヨウデンタルオフィス開設。2010年、有志と共に顕微鏡歯科ネットワークジャパンを設立。2012年、ネクスト・デンタルを開院し、院長を務める。日本顕微鏡歯科学会 認定指導医。
https://microdentist.net/dentist/yoshiaki-sakurai/