2022.06.29

手間を惜しまず、伝統の技でおいしさ届ける

個室会席「北大路」や個室居酒屋「番屋」、焼肉「マルウシミート」など約30店舗の飲食店を運営している大東企業。北尾拓也代表取締役社長はプロの板前が、伝統的な技法で手間と時間をかけて料理することにこだわる。「日本そして海外へ、板前の技術と日本料理の素晴らしさを発信していきたい」という北尾社長に聞いた。

”当たり前”がこだわり

手間を惜しまず伝統的な技法で料理をする。確かな質とおいしさをお客様に届ける。そんな”当たり前”が私たちのこだわりです。私たちは約100年、この銀座の地に根ざし、地域の皆さまに支えられながら成長してきました。おいしい料理や質の高いサービス、商品をお届けし、これからも地域の皆さまから愛され続けることを目標にしています。日本料理店は1日で100人、多くて200人のお客様にお越しいただいておりますが、すべての料理は一からの手作りで、既製品の食材は使っていません。とにかく「食」の品質は落としたくありません。そのため飲食店では珍しく、ランチ営業をせず、日中は仕込みに徹して、ディナーに集中しています。

板前が育ち、質の高い料理を提供できるようになってから出店するのが私たちのやり方です。人が育ったら出店する、育たなければ出店しない。少し古い出店方法かもしれませんが、おいしい料理を提供し、長く利用してくださるファンをつくり、お客様とともにじっくりと成長していきたいと思っています。伝統と技術、質、地域のお客様を大切にしているため、時流にも左右されにくいんです。出店ペースは遅いのかもしれませんが、途中で撤退することもありません。長く愛されるお店を作っていきたいですね。

日本料理の素晴らしさを海外に

「日本食の素晴らしさを海外の方にも知ってほしい」という思いを抱き、7年前に初の海外出店のチャレンジとして。タイのバンコクに出店しました。人材育成や趣向のリサーチ、食材の輸送など、多くの時間と費用を費やしましたが、今やセレブにも愛されるお店へと成長させることができました。出店当初は現地に住む日本人が多かったのですが、今はほとんどが外国人です。大変ありがたいことに、コロナ禍にもかかわらず、客数は安定しています。

タイをはじめ、東南アジアは急成長を遂げています。経済が成長し、所得も増加する分、少し高めの日本食にもより興味を持ってもらいやすくなりました。所得が上がれば、食にかけられるお金も増えますし、板前さん側としても良い食材をたくさん使えるようになるので、やりがいが強くなりますよね。海外の方々に、さらに日本食の良さを知ってもらうためにも、東南アジアを中心にグローバル展開を続けていきたいと考えています。

「食のサステナビリティ」に取り組む

大量生産のものよりも、可能な限り農家さんから直接「いいもの」を適正な価格で仕入れ、本当においしいものを届ける「食のサステナビリティ」に取り組んでいます。物流の問題などで、なかなかうまくいかないこともありますが、東京に売り場のない山梨県の農家の野菜を集め、日本料理店の板前に調理してもらい、山梨県産のお惣菜開発を行ったり、店内でイベントを開催したりなど、今まさにチャレンジ中です。

今後は、家庭用「お惣菜」の開発に力を入れていきたいと考えています。共働きが多く、料理に多くの時間を費やせる家庭が少なく、高齢者も増えていくので、3食手作りが当たり前ではない時代に、日本料理店ならではのワンランク上のお惣菜を提供したい。簡単においしく食べられる和のお惣菜を開発し、日本の食卓を彩り豊かにしていきたいですね。

大東企業株式会社

代表取締役社長

1971年、東京都出身。高校卒業後、一般企業で6年間勤務した後、家業に戻り、いち社員として勤務をスタート。2006年に父から家業を受け継ぎ、3代目の代表取締役社長に就任。

https://www.daitohkigyo.com/