2022.5.18

意外と知らない、世界のファイザー。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生後、目にする機会が増えた「ファイザー社」。言わずと知れた世界一と称される製薬企業であり、日本法人の歴史も古い。ワクチン開発や感染症薬の開発のほか、循環器、泌尿器、疼痛、がんといった幅広い疾病に対する薬剤や炎症・免疫、希少疾病用の医薬品の開発にも力を入れる。米国本社の創業は江戸時代にまで遡る。意外と知らないファイザー社の取り組みや、企業発展の原動力となった考え方などをご紹介していきたい。

ペニシリンの発見者アレクサンダー・フレミング。

創業から170年以上、ペニシリンの量産で躍進

ファイザー社は1849年、チャールズ・ファイザーとチャールズ・エアハルトによって設立された「チャールズ・ファイザー・アンド・カンパニー」という化学会社が原点だ。アメリカで生産されていない化学薬品を製造することが、ビジネスチャンスととらえていた彼らは、寄生虫駆除薬の製造、次いでクエン酸の製造で発展への足掛かりをつかんだ。

その後、感染症の治療に劇的な効果をもたらす「ペニシリン」の量産に成功。供給されたペニシリンは、第二次世界大戦で多くの人命救助に貢献し、ペニシリンの工業化はファイザー社の名を広く知らしめることとなった。その後ファイザー社は、単独で、多くのバクテリアに有効な「広域スペクトル抗生物質」を発見し、抗生物質による医学の革新時代をリード。本格的な医薬品メーカーへと成長を遂げた。

また、抗生物質に続き、糖尿病や神経痛、心臓病、神経痛、細菌感染症などを治療する医薬品の開発を進め、抗真菌剤や高血圧症治療薬など研究分野を拡大。世界を股にかける多国籍大手企業として進化を続けている。

1904年、ブルックリン工場の従業員。

フロンティアスピリット

順風満帆に見えるファイザー社の軌跡だが、企業の存続にも関わる決断を何度か行っている。クエン酸の製造では第一次世界大戦中、原料の調達が途絶えた。そこで開発した別な製造方法を気道にのせるため、まだ十分な採算性のある生産設備を全面的に新方式のクエン酸製造に転換する、というリスクをあえて選択した。

また、ペニシリンの製造に際しては、他社がその効果に懐疑的な姿勢を持つ中、量産方法開発の道を選択。3年間にわたり、ペニシリンの生産に専念するという途方もないリスクを受け入れている。

ファイザー社の創業者たちは、これまでにない製品を製造することをチャンスと捉えていた。経営が軌道に乗った後、その精神を持ち続けていたため、新技術や薬品の開発に対しても大胆な決定をすることができたのである。リスクを恐れないフロンティアスピリット、保守ではなく変革を求めること。これこそファイザー社が受け継いできた考え方なのである。

ファイザー社発展の土台となったクエン酸は、この種で世界初の施設であるブルックリン工場で製造された。

日本でも長い歴史を誇る

ファイザー社日本法人の歴史は古く、1953年に田辺製薬と設立した「ファイザー田辺株式会社」に遡る。経済の復興期にあった国内に、国産の医薬品を安定して提供するのが設立の目的だった。技術提携先として、戦後ペニシリンの培養を手掛けていた台糖社の技術に着目し提携。社名を「台糖ファイザー株式会社」として、ペニシリンや広域抗菌スペクトル抗生物質の国産化を成功させ事業を拡大していった。

一方、1957年からは動物薬、飼料添加剤の事業を開始している。医薬に続くこの事業は1970年代に入ると大きく躍進。大きな柱として、1999年までファイザー社を支え続けた。1980年代になり、日本が世界経済で大きな役割を担いつつある中で、台糖ファイザー株式会社は「株式会社ファイザー製薬」へと社名を変更。感染症メーカーとして不動の地位を確立するとともに、ファイザーブランドを大きく掲げ、グローバル企業として飛躍を続けている。

新たなブレークスルーを目指して

2000年、ファイザー社はワーナー・ランバート・カンパニーと合併し、名実ともに世界最大級のヘルスケア・カンパニーとして躍進。2003年には、米国のファルマシア社と統合し世界最大の製薬会社となった。日本国内では、感染症やワクチンから循環器、泌尿器、疼痛、がん、炎症・免疫、希少疾病など、幅広い事業に取り組むとともに、遺伝子治療やがん治療など、各種疾患・治療について一般消費者にも分かりやすい情報発信を行っている。

2019年から掲げている企業目的は「Breakthroughs that change patients’lives(患者さんの生活を大きく変えるブレークスルーを生みだす)」。ブレークスルーとは「障壁の突破」を意味する。ファイザー社が目指す新たな目標だ。受け継がれる変革の精神とともに、ファイザー社は新たな成功に向けて着実な歩みを進めている。

転載元:Qualitas(クオリタス)