2023.02.01

患者と家族の思いに応える在宅医療を

埼玉県越谷市に拠点を持つ医療法人修志会では、在宅医療に特化し、自宅での診療を希望する地域の人々に対して訪問診療を提供している。西田雄介理事長に、事業を始めた原点と実現したい医療について話を聞いた。

患者の思いと向き合える在宅医療

当法人は在宅医療と訪問診療を専門としたクリニック等の施設を運営しています。住み慣れた家で患者が主役の診療を行い、共に暮らす家族の思いもくみ取りながら、それぞれの生活環境で安心して過ごせるよう支えていく。そんな、一人一人の患者に寄り添った医療を提供するのが私たちの役割です。

2017年に事業をスタートしましたが、訪問診療へのニーズは想定していた以上に高く、現在、東京、埼玉、千葉に5院の訪問診療クリニックを展開しています。そこを中心に、訪問看護ステーションや訪問マッサージ、ケアマネジャーの居宅介護支援事業所も設け、さまざまな専門職が生活支援も行っています。以前は病院でしかできなかったレントゲンや超音波などの検査機器もコンパクトになり、自宅での医療がより受けやすくなってきています。

何より、自宅で医療を受けられることは、医療を提供する私たちにとってもメリットが大きいのです。患者の中には、がんの痛みを緩和したいと思いながら、薬は飲みたくないという方もいます。そうした場合は、まずマッサージで痛みを和らげてから、「こういう薬もあります」と伝えたり、時間をかけて信頼と理解を得てから飲んでもらうこともできます。在宅での医療は、診療時間もゆっくり取れるので、患者の思いと向き合った診療ができるのが大きな特徴です。

心のこもったオーダーメイドの医療

私は以前整形外科医として手術を行う日々を送っていましたが、一度医療現場を離れて海外でバックパッカーをしていたことがあります。帰国したときに在宅医療を行っていた先輩の医師から声を掛けてもらい、在宅医療を始めました。その先輩の下で働くうちに、在宅医療は医師として学ぶものが非常に多いと感じました。診療の場は自宅ゆえに主役は患者であり、介護する家族です。病状説明にしても、患者や家族の気持ちを受け止め、希望を尊重し、的確に話すことが求められました。一つの言葉や声の掛け方、ちょっとした間、表情などで、相手に与える印象や安心感が異なることを学び、非常にやりがいのある仕事だと思いました。

その後、自分でチームをつくって訪問診療をしたいと思うようになり、志を同じくする同期の医師と「ファミリークリニック越谷」を開院しました。越谷市を選んだのは、埼玉県が対人口比で医師の数が日本一少なく、特に県の東部が医療過疎地と呼ばれるほど深刻な状況だったというのが大きな理由です。法人名は、自分たちの医療に対する「志」を「修める」ことを目指して「医療法人修志会」とし、患者や家族それぞれの思いに応え、その家族らしい生き方を支えたいということから、「心のこもったオーダーメイドの医療をお届けする」ことを法人の理念に掲げました。

新たな医療資源の獲得を目指すファンドも

訪問診療の知名度はまだまだ低いと思うことが多い。介護事業者でも知らない人がいますし、どんな診療をしてもらえるのか、どのように依頼すればいいのか、費用はどれくらいかかるのか、など分からない人がほとんどです。そのため、皆さんに知ってもらう努力がもっと必要だと感じています。それと同時に、訪問診療に携わる医師や看護師、リハビリや介護の専門職を増やしていくことも課題となっており、社会全体でそうした医療インフラ的な面を整備していく必要があると感じています。

訪問診療を世の中にもっと広め、多くの人が知ることで、住み慣れた家で過ごして、「いい人生だった」と最後に思ってもらえる人が一人でも増えるよう、啓発活動に取り組んでいきたい。さらに、医療業界が聖域にならず、今後の日本のために診療報酬以外の部分にも目を向けるべきだと考えています。

診療報酬のみに頼るのではなく、新たな医療資源の獲得を目指して、投資ファンドを本格化させ、予防医学や健康増進を啓発している企業に投資していこうとしています。これらのビジョンを実現するためにも、まずは同じ志を持つ人材を育て、共により良い医療を目指していきます。

医療法人修志会

理事長

1984年、広島県生まれ。修道高校、東邦大学卒業後、初期研修を経て東京女子医科大学病院整形外科に入局。整形外科専門医取得後、海外をバックパッカーで周って帰国。帰国後、広島で在宅医療に身を捧げる父を見習い、在宅医療普及のため埼玉県で開院。現在クリニック5院および関連事業所、投資ファンドを複数展開。

https://familyclinickoshigaya.com/