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従業員の幸せが高める「ものづくりの価値」 東ポリ・蓑輪忠温代表取締役

2021年09月01日

ポリエチレンフィルムなどの各種フィルムを材料に特殊形状の産業用包装資材袋などを製造する「東ポリ」は、少量生産・短納期といった小回りが利くサービスが強みという。大手企業にはない生産ノウハウや技術革新を継続していくために「従業員の幸せや働きがいを見出していくことが大事」と話す蓑輪忠温代表取締役に、働き続けたいと思える組織づくりを聞いた。

東ポリ 蓑輪忠温代表取締役

従業員の声に耳を傾け、些細な変化にも気付く存在でありたい

4代目として社長を継いだ私は、物心ついたころから将来の継承を意識してきました。社会勉強のために大学を卒業して大手電機メーカー(大阪)に入社し、人事の仕事に励みました。その後、当社の主要商社(東京)に転職し、約11年間営業職を務め、異なる分野で貴重な経験を積みました。

2006年にはいよいよ東ポリへ入社することを決意しましたが、そのころから変わることのない思いは、従業員の幸せのために全身全霊を懸けることでした。2021年で51期目を迎えますが、先代のころから積み重ねてきた『ものづくり』の価値を継承しつつ、その価値を生み出してくれる従業員を大切に育てていくことが私の使命でもあると考えているからです。一人一人の従業員の人生で仕事が幸せの一部になってほしい。そうした思いを実現していくためには売り上げや利益の確保だけでなく、働きやすさの追求や目標設定を通じた働きがいの醸成、福利厚生の充実など、会社全体のバランスを見ながら多角的な視点で組織づくりを行なっていく必要があると思っています。

そのため従業員の働く姿や話していることに常に耳を傾けながら、社内の状況を把握することを意識してきました。社長と従業員の間に変な一線を引くことなく、積極的にコミュニケーションを図ることで些細な変化に気付くようにしてきました。その積み重ねが社内のさまざまな改善につながっています。

例えば、約80人の従業員全員の日報はほぼ毎日チェックしています。時に励ましたり、長所を見つけてあげたり、学校の先生のような感覚で接してきました。誰よりも従業員の幸せや成長を楽しみにしているからです。

東ポリ 蓑輪忠温代表取締役

機械化に頼るのではなく、人材力で勝負できるものづくり

当社には優秀な人材が集まっています。教育や従業員の働きがいを追求することで、ものづくりの価値を高めていくことができました。小ロット多品種を中心に製造を続け、きめ細かな対応ができるのも人材力があるからに他なりません。

機械化やオートメーション化が進行する時代ですが、人間にしか表現できない手加工や手作業には大きな価値が生まれています。しかし大手を含む多くの企業では、小ロットや短納期での製造では採算が取れず、品質も維持できない状況にあります。当社はそこに勝機を見出し、大量生産を可能にする最新鋭の機械を導入するだけでなく、さらに手加工や手作業による独自の付加価値を加えることで小ロットや短納期対応を実現し、あらゆるご要望にお応えしてきました。最近では大手企業様からの開発依頼や引き合いも多数いただくようになっています。

また業界でも珍しく、若い人材が多く活躍してくれています。20~30代の若手社員が全体の7割を占めており、伝統や技術力、手加工の価値を引き継いでもらいながら、早い段階から社員育成に注力することも大切にしてきました。また若手社員が多いことで、「この先長い期間を見据えた仕事の依頼もできる」と取引先から大きな期待を寄せていただいています。そうした若い人材の力が未来の信頼を勝ち取ることにもつながると考えていますし、今後も常に若返りを図りながら、組織に新たなエネルギーを取り入れていきたいと思います。それが会社の生命力や技術の進化に直結していくと信じています。

東ポリ 蓑輪忠温代表取締役

ものづくりの価値を、お客様に合わせて。

当社はものづくり企業としての価値を高めていく中で、小ロットや短納期対応を得意としていますが、そうした対応力を培っていくためには独自システムの構築や一貫した管理体制、作業者の意識づけが必要不可欠です。よく「ウサギとカメ」をたとえ話にしています。すべてを機械で行い、早さを実現した作業をウサギに、手作業で行う確実な作業をカメに例えると、実際の現場の作業では、手作業でも正確な作業を行うことができるカメが、ウサギの早さを上回ることが多々あります。機械での自動生産は量産型対応時としてのメリットはあるものの、故障も不具合もありますし、調節や切替えなどが必ずあるからです。ですから、作業者には自動生産が万能でないことを常に言い聞かせています。

カメのような作業スピードであっても、手加工による丁寧で確実な作業をモットーとし、製品に作業者のプライドや魂が込められるものづくりを大切にしてきました。その結果、製品に人間味がにじみ出て、手加工や手作業でしか表現できない『味』のあるものづくりを実現させています。そして作業を迅速に行うことで、短納期での生産も可能にしてきました。そうした価値の選択肢を巧みに生み出しながら、お客様に喜んでいただける唯一無二のものづくりを継続していきたいと思っています。

今後も従業員に対しては、収入・健康・時間・幸せをバランスよく提供できる会社をつくり上げていきたいですし、従業員と共に少しでもお客様や社会へ貢献できるような製品づくりを続けていきたいですね。

■プロフィル
1993年4月、シャープ入社。人事部で約2年半勤めた後、1995年10月に稲畑産業で営業職を務める。2006年10月、東ポリに入社。39歳で代表取締役に就任。

東ポリ株式会社
http://www.topoly.jp