2022.10.31

外食産業とコロナ禍

一般社団法人日本フードサービス協会が加盟会員社へ行った外食産業市場動向調査によると、2021年1月から12月までの外食産業全体の売上高は、2019年にくらべ83.2%という低い数字になった。影響を与えたのは新型コロナウイルス感染症の蔓延だ。

一口に外食産業といっても、ファストフード、ファミリーレストラン、パブ・居酒屋など、メニューや業態によりさまざまな種類がある。コロナ禍の影響は業態により明暗が分かれた。特に影響を受けたのが「パブ・居酒屋」で、2019年比27.2%という惨憺たる数字だ。在宅勤務の増加や企業をはじめとする会食の自粛のほか、10月まで続いた時短要請や酒類提供の禁止・制限など、さまざまなマイナス要因が重なったことが原因と言える。逆にファストフードは2019年比でも101.8%と堅調を維持。更にファストフードの中でも、ハンバーガーなど洋風メニューを提供する店は、2019年比で116.2%という数字を記録した。

経済は持ち直し傾向へ

ファストフードの売上増は、巣ごもり需要などによるデリバリーやテイクアウトが売り上げを下支えする要因と考えられる。食事提供の効率化によるクイックサービスや短時間の接触がコロナ禍のニーズとマッチしとことも大きいだろう。しかし、洋風以外のファストフードは、和風(95.2%)、持ち帰り米飯・回転寿司(99.1%)、麺類(78.2%)など、いずれも2019年の実績を割り込んでおり、楽観視ばかりできる状況ではない。ただ、前年2020年と売上高を比較した場合、明るい材料も多くなる。ファストフード(104.8%)、ファミリーレストラン(91.8%)、ディナーレストラン(89.9%)、喫茶(100.1%)と堅調に回復。居酒屋・パブにおいても57.8%と復調の兆しが見える。客数や客単価においても同様の傾向がみられるが、店舗数に関してはほぼ全ての業態で減らしていることから、飲食業全般にコロナの深い影響があったこともうかがえる。

2022年5月は3年ぶりに行動制限がない大型連休となった。飲食業も活況を呈し、飲食業全体の前年比売上は120.4%、家族客を中心に客足が回復したためだ。パブ・居酒屋においても前年比46.9%の売り上げを記録したが、19年比では54.7%にとどまる。法人需要と夜間の客足が戻らないことから、他の業態と比べると回復には差がある。経済産業省が発表する第三次産業活動の基調判断は、2022年3月には「持ち直しの兆しがみられる」、同年4月には「持ち直しの動き」、同年5月には「持ち直し傾向にある」と発表され、経済はゆっくりと回復しつつあることが分かる。

消費回復は必ず起こる

ウィズコロナの生活では、リモートワーク、地方移住、ワーケーション、二拠点生活といった新しい働き方が提唱された。アフターコロナへ向け、こうした生活様式や働き方がどこまで国内に定着するかはまだ不透明だ。コロナ感染の再拡大、海外情勢や食品・生活資材の値上げ、賃金の据え置きなど不安要素も少なくない。しかし、リベンジ消費とインバウンドは必ずやってくる。厚生労働省では2022年5月26日に外国人の新規入国制限の見直しをおこなった。

(1)商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国、(2)観光目的の短期間の滞在の新規入国(旅行代理店等を受入責任者とする場合に限る)、(3)長期間の滞在の新規入国が入国を許可する対象となる。

また、日本銀行では2021年・2022年の「経済・物価情勢の展望」の中で、コロナ禍の影響下で消費機会を失ったお金が、この先、緩やかに取り崩されていくと想定している。消費が増えれば、経済の活況、賃金の引き上げという好循環にもつながる。その時に備え、外食産業のリスタートをどこまで進めていけるかが今後の大きな鍵となっていくだろう。

転載元:Qualitas(クオリタス)