2022.08.01

地域の活性化が目的

日本遺産(Japan Heritage)とは文化庁により、2015年から行われている文化保護事業の一つ。同様の取り組みは文化財の認定や世界遺産といった取組みが有名だが、日本遺産は文化や自然の保護を目指す既存の政策とは異なり、文化財や伝統文化を通じ地域の活性化を図ることを目的としている。1点1点の価値を認定する文化財とは異なり、世界遺産同様、地域に点在する遺産群をまとめ、面として認定するのも特徴だ。たとえば、城郭、寺社・仏閣といった建築物、甲冑や遺跡といった有形文化財、伝統芸能などの無形文化財を地域の財産として一つにまとめ、活用や情報発信を行うのだ。そのため、いかに地域性をPRするかが大切になる。

ストーリー性を重視

文化財同士を関連付け、地域の特徴を出すために必要なのが物語=ストーリーだ。日本遺産と世界遺産との大きな違いが、このストーリー性の重視である。文化庁では認定基準として、「歴史的経緯や地域の風土、世代、風習等を踏まえている」「地域の魅力として発信する明確なテーマを中核に、継承・保存されている文化財にまつわるものが据えられている」「文化財の価値や歴史を解説するだけのものではない」という3点を規定している。

こうした基準をもとに、興味深さ・斬新さ・訴求力・希少性・地域性という観点から審議委員会メンバーが総合的に判断する。認定後も認定継続のための審査を実施。日本遺産を活用した集客・活性化、日本遺産を核としたコミュニティの再生・活性化といった複数の項目について、観光者数の測定や住民アンケートによる認知度の調査などを行い、認定継続の可否を審査している。

さまざまな補助制度で地域を支援

日本遺産認定後は、ストーリーや日本遺産ブランドを活用した地域活性化の取り組みが可能になる。必然的にストーリーの魅力発信など、対外的なPRが必要になるため、文化庁では「日本遺産魅力発信事業」として補助金の交付を行っている。対象となるのは、「日本遺産」に関する①情報発信・人材育成事業 ②普及啓発事業 ③調査研究事業 ④公開活用のための整備に係る事業の5分野、パンフレットの作成や国内外のPRイベントへの出展、展覧会・ワークショップ・シンポジウムの開催のほか、ボランティアの育成、トイレ・ベンチ・説明板の設置など環境整備なども対象となる。

地域との一体感が重要

日本遺産として認定を受けるためには、ただネームバリューがあれば良いというものでもない。2020年度に認定を受けた高尾山をはじめとした八王子市の取り組みがその好例だ。高尾山は海外からの人気が高く、インバウンドの観光客も多く訪れていた場所である。日本遺産のストーリーは、「霊気満山 高尾山 ~人々の祈りが紡ぐ桑都物語~」。対外的な人気ではなく、「桑都」と呼ばれた八王子の歴史を前面に出し、絹産業の中心である養蚕農家の髙尾山薬王院への信仰も重ね合わせ、未来へと人々の祈りが続く「桑都物語」としてストーリーを紡いでいる。日本遺産においては、地域の歴史や文化との一体感が重要であることが分かる。

豊かな日本再発見のきっかけに

2022年現在、日本遺産は全国で139件。「忍びの里 伊賀・甲賀─リアル忍者を求めて─」(滋賀県・三重県)など認知度が高いと思われるものから、「かかあ天下-ぐんまの絹物語-」(群馬県)といった郷土色豊かなものまで幅広い。中には「きっと恋する六古窯─日本生まれ日本育ちのやきもの産地─」(岡山県含む5カ所)など、県内のみならず、複数の地域が対象の取り組みもある。日本遺産を通じて、興味ある地域や日本の再発見をしてみるのも面白いかもしれない。日本の新たなおとぎ話として、地域の伝承や文化を、国内・海外に伝えるきっかけの一つとなってほしいものである。

転載元:Qualitas(クオリタス)