2022.06.23

地域のクリニックの既成概念を塗り替える。

心臓カテーテル手術の実績を積み、カテーテルを使用した大動脈弁治療で福井県初の指導医となった医療法人邦高会たかさわ内科クリニックの高澤洋介院長は、2019年に、父が開院したクリニックを継ぎ、地域の患者のために力を尽くしている。高澤院長に地域のクリニックの役割について聞いた。

父の遺志継ぎ、クリニックを継承

当院は私の父が43年前に開院し、一般内科や循環器、糖尿病専門医のいる病院として地域の方々とともに歩み、3年前に私が跡を継ぎました。

クリニックを継承する以前、私は福井循環器病院でカテーテル手術に情熱を注いでいました。自分にしかできない治療を行い、医師としての武器を持っていると自負していますし、カテーテル手術が本当に好きで、こんなにやりがいを感じられて夢中になれることはないと思っていました。心筋梗塞の患者が運び込まれ、私の出番が来ると、患者には申し訳ないのですが心が燃えるのです。「この技術で患者を助ける」と、24時間カテーテルのことを考えて研鑽を積み、ひとたび連絡を受けると、いつどこにいても駆けつけて、患者のために仲間と共に力を尽くす。こんな日々がずっと続くと思っていました。

 そんなとき、父が亡くなり、本来は継ぐ予定ではなかった私がクリニックを継がなければならないという状況に直面しました。最初は、私の持っていた唯一無二の武器も手放さないといけないのかという思いにもさいなまれました。さらにクリニックを受け継ぐとなると、患者のことだけでなく、経営やスタッフに対する責任も当然担います。葛藤がありましたが、私が医師を志したのは、やはり物心ついた頃から父の背中を見てきたからという原点に立ち返ったのです。

いつも見ていた年季の入った白衣は父の生涯を現しているかのようで、「自分と関わった人々を喜ばせたい、楽しませたい、笑顔にしたい」という思いが強かった父は、亡くなる数時間前まで診察をしていました。そんな父の思いを受け継ぎたいと思いました。これまでのように自分を高めながら仕事に熱中し、地域のために尽くしていこうと決意してクリニックを継承しました。

予防医療で患者を救う

これまでカテーテル手術をする中で、目の前の患者に対して「心筋梗塞となる前に、何か手立てはあったのではないか」という思いを感じていました。医師としてできることは何かと考え、まずは病気にならないことを主眼に、特に予防医療に力を入れています。あくまでも主治医は、患者と共に人生の登山を一緒に歩いていくパートナーであり、補助者でしかありません。一番の主治医は、患者自身であることを意識していただけるよう、治療の意味や、メリット・デメリットを説明して納得していただいた上で、治療を進めています。

当クリニックに来院するまでは、全て医師任せにして何十年も薬が変わっていなかったのに、指導を受けて状態が改善し、薬の量や通院を減らすことができた方が多くおられます。一人の通院が減っても、その方の口コミでまた新たな人に来てもらえるので、クリニックの経営としても非常に良い循環となっています。

予防医療という観点では、これまではなかなか地方のクリニックでは受けることができなかった点滴療法を当院では日々利用しやすい金額で提供し、好評を得ています。こういった点滴療法は東京や大阪などの大都市では既に広く認知されているのですが、地方ではなかなか認知されていないので、大都市と地方の医療格差を無くしていけるようにしていきたいです。予防医療を進めて、健康寿命と平均寿命の差をいかにゼロに近づけられるかを考えて実践していくことが医師の使命だと考えています。

地域に信頼される医療を

私が重要視しているのは、クリニックの既成概念を塗り替えて、地域のためにできることを広げていくことです。その一つが、検査結果を受けたその日に結果を伝えることです。従来のクリニックだと、検査から検査結果をお伝えするまでの感覚が数日から1カ月空くこともあるのですが、当クリニックでは臨床検査技師が在籍し、検査結果を検査を受けたその日のうちに待ち時間が少なく伝えられるように体制を整えています。

また、糖尿病は、血縁の家族に糖尿病患者がいた場合、すい臓のインスリン分泌機能が低下することが多く、他の人と同じ生活をしていても、糖尿病のリスクが高まります。糖尿病に対しては、世間から自己管理の甘さゆえかかるのではないかというイメージを持たれることもあるのですが、決してそうではないということを強く訴えたいです。また、血糖値を気にせずに気兼ねなく食べられるお菓子を、クリニックの近くにある有名な和菓子屋と共同開発し、6月から販売予定です。

さらに地域の方により親しみを感じてもらえるよう、イルミネーションやプロジェクションマッピングなどを企画をしています。父の背中を見てきた私も、いかに人を幸せにするか、楽しませるかということを考え、関わる人を笑顔したいという思いを持ち続けています。「この先生に診てもらいたい」「先生の顔を見たら安心した」と言ってもらえるように、地域のみなさんに愛されて、信頼される医療を、この地で目指していきます。

医療法人邦高会 たかさわ内科クリニック

院長兼理事長

1979年、福井県出身。2004年、金沢医科大学を卒業後、日本大学病院、東芝病院を経て東邦大学付属病院の循環器内科で心臓カテーテル治療を学ぶ。地元福井に戻り、福井厚生病院、福井循環器病院で心臓カテーテル治療に従事し、心臓の血管である冠動脈治療は元より、カテーテルを使用した大動脈弁治療において県内初の指導医を取得。2019年、高沢内科医院院長就任。2021年、クリニックをリニューアルし、たかさわ内科クリニックの院長に就任。

https://takazawa-medical.jp/