2023.01.24
国産ソファでくつろげる公共空間を
国産ソファメーカーとして2003年に創業したNOYES。これまでBtoCの商品販売を柱に事業を行ってきたが、創業20年目を迎えた2022年、企業やクリニック、公共施設を対象にしたBtoB向けオーダーメードのソファ事業をスタートした。国産ソファにこだわり、「温かでくつろげる場所を作りたい」という牧謙次郎社長に話を聞いた。

「ソファ市場」の形成を目指して
ずっと「ソファしか売らない」ということにこだわってきました。創業当初はソファ専門店というのはまだ珍しかったのですが、私たちはベッドや照明などさまざまな商品を扱うインテリア市場からソファだけを取り出して、「ソファの市場を作っていくこと」を目指したのです。
インターネットが急速に普及し始めるさなかにオンラインでソファの販売を開始し、現在は名古屋市、東京・青山、東京・銀座、横浜市、大阪市の全国5カ所にショールームを設けました。これまで多くの方に弊社の製品を選んでもらい、事業を伸ばしてきましたが、ソファ市場は少子化などの影響もあり、縮小傾向にあると思っています。そんな中でも挑戦を続けることで、新たな可能性が生まれると信じ、その挑戦の一つとして今回コントラクト市場への参入を決意しました。
パブリックスペースを主なターゲットとして商品を供給するコントラクト市場では従来、クールでどこかよそ行きのカッコよさを持つソファが多く扱われてきました。コントラクトのソファと家庭用のソファは座り心地も全然違うものです。そこで家庭用のソファを製作してきたので、ホームの座り心地とデザイン性を兼ね備えた、パブリックスペースのためのソファを提供しようと考えました。「NOYES」のソファによって、ビルのエントランスもアットホームな雰囲気となったり、長く座っていたいと思う心地良さから、会話が弾んだりする温かい場所づくりが担えたらと思っています。

職人の試行錯誤で生まれたソファ
「NOYES」のソファはデザインから生産までを一貫して名古屋の自社工場で行っています。国産になぜこだわってきたかというと、顧客対応が迅速にでき、柔軟に開発ができるので、技術の発展が可能になるためです。現在、工場には約60人の職人が在籍していますが、その中で「椅子張り技能士」という国家資格を取得している職人が約25人います。中でも7年以上の実務経験と高い技能、知識が求められる1級の取得者が複数在籍し、彼らを目指して皆が技術を磨いています。
さらに人間工学に基づいた設計で、座り続けても疲れないソファを生み出すために試行錯誤を重ねています。座ったときにどこに耐圧がかかるのかを測り、一番荷重がかかっているところを調整していきます。例えばソファに使用されるウレタンという素材は5層くらい積層されていくのですが、その5層でも柔らかいもの硬いもの、どの順番でどう重ねていくのがベストかということを何度も何度も職人が試して「これだ!」というところを導いていきます。
技術を研鑽し、発展させていくことは、社会貢献に繋がると考えています。この技術を海外に持っていってしまうと日本の技術がそれだけ衰退してしまうため、これからも国産にこだわり、日本でものづくりを続けていく価値を高めていきたいと思っています。

チーム全員で一つ一つ丁寧に
職人だけではなく、開発チーム全員でいろいろな座り方をしたり寝てみたりして、「ちょっと硬い」「もうちょっと柔らかめに」などと意見を出し合って、柔らかさをウレタンで出すのか、表層に羽毛シートを付けるのかを考えたり、座り心地を非常に大切にしています。そのため、大量生産は難しいのですが、一つ一つを丁寧に製作し、弊社の商品のことを分かってくれる人に届けていけたらと考えています。
コントラクト向けにリリースしたブランド「PUBLIC」シリーズでは、さまざまな用途や場所に合わせて五つのテーマのソファを展開しています。中でも「Foyer」という、円柱をベースに、構成要素の全てを曲線で表現したソファは、どんなシーンでも合う優しさと温度感を持ち、特に使いやすいのではないかと思います。
この「PUBLIC」シリーズは、さまざまなところから問い合わせがあり、特に開業医に多く選ばれています。病院は行くまでにドキドキすることもあると思いますが、ソファが温かくお迎えできる一助となれたらうれしいですね。
「NOYES」のソファが世の中のいろいろな場所に置かれるようになって、子供から高齢者まで羽を休められるような、温かでくつろげる場所が増えたらいいなと思います。
株式会社NOYES
代表取締役社長
牧 謙次郎
1972年生まれ、愛知県出身。シンガーソングライターとして1999年にメジャーデビュー。30歳で父と兄が立ち上げた国産ソファ工場のオンライン販売を手がけ、2003年に株式会社NOYESを創業。ソファ専門ブランドの先駆けとして事業を伸長させる。2022年からは新たにコントラクト事業を始動。
https://www.ny-k.co.jp/