2023.03.17

医療技術で社会課題の解決目指す

社会保障費の増大、医療格差などの社会課題を、医療技術によって解決を目指す日本バイオテクノファーマ。「医療の在り方を変えたい」と従来の常識にとらわれずに患者ファーストの仕組みを構築するべく奮闘している篠原直樹CEOに、その原動力、さらに今後の展望について話を聞いた。

疾病の早期発見と予防医学に注力

「有益な抗体技術を通じて、医療そして社会へ貢献する」という志の元、2016年8月に創業しました。がんやリウマチなどの治療に用いられる抗体医薬品の製造やバイオ医薬品、体外診断薬の開発などを行い、社会保障費の増大や医療格差などの課題の解決に取り組んでいます。中でも、疾病の早期発見と予防医学による健康寿命の延長を重要な課題と位置づけています。

例えば認知症を引き起こす要因の一つであるアルツハイマー病は、完治が難しく、患者だけではなく、介護者にも大きな負担がかかります。発症の可能性を高める危険因子は特定が進んでいて、早期発見と、予防薬、予防行動でリスクを軽減できるようになりました。弊社が開発する早期にリスクを予測する検査キットにも大きな期待が寄せられており、患者とそのご家族の幸せに大きく寄与できると考えています。

さらに現在、オンラインクリニックのシステム開発も行っています。外資系の製薬会社にいた時、仕事柄ドクターの知り合いが多く、友人の親が病気になった時などは手術の実績が高い医師を紹介することがありました。しかし、そのような人的ネットワークや地域によって受けられる医療が変わることに、心のどこかで引っ掛かりも感じていました。そのため、心臓外科や呼吸器外科、脳外科などの高い手術実績をもつ医師と全国の患者をつなぎ、患者の近くの病院で手術できるように、日程調整などをオンラインで行う医療サービスを形にしたいと動いています。

仕事で社会に良いものを残すために

製薬会社時代に、世界中の研究者や医師と交流をした中で、彼らのプロフェッショナルとして抱く仕事への誇りと、医療発展への思いに感銘しました。私自身、医薬品が人類にもたらす恩恵と医学の進歩への期待を強く持つようになりました。

一方で、バイオ医薬品などの価格が高騰し、患者の大きな負担となっており、それが社会保障制度にも影響を及ぼしかねない厳しい状況に対して、「自分はこのまま薬を販売しているだけでよいのか」、「仕事で社会に良いものを残せているのか」と考えるようになりました。そんな危機感の中、ある学者と日本のバイオ医薬品開発の立ち遅れについて語り合う中で、「君が作ればいい。もしやるなら応援するよ」と言われました。そのとき、自分の心のもやもやが一気に晴れ、周囲から「絶対に無理だ」と忠告を受けながらも、決意を固めて起業しました。

サンフランシスコに研究所を置き、関節リウマチなどの免疫系疾患やがんの治療に使われるバイオ後続品(バイオシミラー)を創出することに成功しました。分子量が大きく構造が複雑なため、決してたやすい道のりではありませんでしたが、コストを抑えながら技術力を発揮して製造できたことで、今後の事業に大きな自信を持つきっかけとなりました。

世の中はそんなにつまらないものでもない

私の仕事の原点には、「なぜなのだろう?」という疑問や違和感、 「こんなものがあったらいいな」、「こうすればもっとよくなる」という率直な思いがあります。その際、まず可能、不可能は考えず、損得勘定も組織や業界のしがらみもありません。

その思いを素直に口にして、一歩踏み出してみると、業界の常識うあや慣習と異なることでも情熱やポリシーを持ち、人に伝えることで 「実は自分もそう思っていた」「できることがあればぜひ応援したい」と後押ししてくれる人が現れる。決して自分は一人ではないことに気づきます。日本社会では、自分が感じたことをそのまま出して生きられない時代ではないかと懸念しています。だからこそ、自分自身の心の声に忠実に、チャレンジして、結果を出したいと突き進みます。

使命感というとおこがましいですが、私が思いを具現化していくことで、次の世代の人が歩きやすくなればと思います。同調圧力などで社会に生きづらさを感じている人にも、「世の中はそんなに暗いものでも、つまらないものでもない」というメッセージを伝えていきたいです。

日本バイオテクノファーマ株式会社

CEO

東京都生まれ。米国モンサントカンパニー医薬品事業部(現ファイザー)へ入社。その後、ヘッドハンティングにてアベンティスベーリングジャパン(現CSLベーリング)へ入社し、2016年にバイオ系製薬会社日本バイオテクノファーマ株式会社を設立。同時期に医療コンサルティングファーム ネクストイノベーションパートナーズ株式会社を設立。現在2社の経営をしている。

https://www.japanbiotechnopharma.com/