2022.07.20

全国に広がる空き地、空き家。

今にも朽ちそうな古い建物が建っている土地や、不法投棄などがされゴミ屋敷のようになり悪臭が漂っているような管理不全の土地など、周辺住民に悪影響を与えている事例が全国で広がっています。 その要因となるのが所有者不明により適切な対処ができないという問題。 それがさまざまな社会問題にも発展しています。その解決に向け、令和4年5月9日に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律」が公布されました。どのような内容であり、何が変わるのかを司法書士法人Bridge 代表社員である小山尚輝 氏 に解説していただきます。

所有者不明土地問題の解消に向けた民法等の一部法改正について

Q:法改正に至った背景とは?

日本においては、主な原因として相続登記がされていないことにより、所有者不明土地が多数存在しています。所有者不明土地とは、「不動産登記簿より所有者が直ちに判明しない土地」、「所有者が判明しても、その所在が不明で連絡がつかない土地」と国交省にて定義されています。所有者不明土地が増える背景としては、①相続登記の申請が義務ではなく、申請しなくとも罰則等の不利益を被ることがない、②都市部への人口移動や人口減少、高齢化の進展等により、地方を中心に、土地の所有意識が希薄化、利用したいというニーズの低下、③遺産分割をしないまま相続が繰り返し起こることで、相続人が増え続けるため放置される、以上のようなケースが挙げられる。

上記要因から当該不動産の利用促進がされず、国の公共事業等の阻害及び管理不全のため隣地所有者に対し、思わぬ迷惑をかける事例も存在しております。今後、日本においては少子高齢化が進み、判断能力の低下の問題により遺産分割等の合意形成を取ることが難しくなることが予測されます。上記問題を未然に防止するため、第204回通常国会において、民法等の一部を改正する運びとなりました。

Q:改正された内容とは?

(1)相続登記申請の義務化
今回の法改正の中で、特に相続登記申請の義務化については、ぜひ知っておいていただきたい内容になります。不動産の所有権の登記名義人に相続が開始した場合、相続または遺贈により不動産の所有権を取得した相続人は、相続開始があったことを知り、かつ、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、①相続を原因とする所有権移転登記申請、②遺贈を原因とする所有権移転登記申請、③相続人申告登記の申出のいずれかの申請をすることが義務付けられました。また、相続人申告登記の申出がされた後、遺産分割協議が成立した場合は、遺産分割の日から3年以内に相続登記の申請をすることが追加的に義務付けられました。

(2)相続人申告登記
相続人申告登記とは、登記官に対し、自らが相続人であることを申告することにより、登記官が職権で登記簿に当該申出をした相続人の住所及び氏名等を記載する制度です。この申出は、相続人の一人から申請することができ、ひとまず義務を果たしたとみなされます。ただし、当該不動産の相続人が確定的に決まったわけではないため、相続人申告登記の制度を活用した場合であっても、その後放置することなく、なるべく早い段階で遺産分割協議等により相続人を確定すべきかと思います。

(3)過料
新しい制度では、正当な理由がないにもかかわらず、相続開始があったことを知り、かつ、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記申請等をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。正当な理由とは、例えば関係者が多く、必要な資料を集めることが難しい場合等は罰則の対象外となるようです。今後様々なケースが想定されるため、正当な理由の中身ついては随時更新されるかと思います。

Q:その他、注意していくべきこととは?

今回の法改正に伴い、ほかにも所有不動産記録証明制度の新設、相続土地国庫帰属制度の新設、所有者の住所変更登記の義務化等、所有者不明土地の解消に向けて、様々な制度が順次施行される予定です。特に令和6年4月1日より施行される相続登記申請の義務化については、遡及して適用されるため、現時点で相続が発生しているが相続登記が未了のものについても対象となります。現時点では過料の対象にはなっていないものの、いずれは義務化されることを考えれば、何事も早めに動いて対処するのが良いのではないかと思います。お悩みの際は、お近くの法務局の無料相談の活用や登記の専門家である司法書士にご相談ください。

司法書士法人Bridge/行政書士法人Bridge

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