2023.01.05

偏差値教育を脱し、イノベーションを起こす人材を

世界基準の教育を受けられると、注目されている海外発のボーディングスクール(全寮制学校)への合格者を多数輩出しているのが、英語によってグルーバルスキル教育を行っている「Global Learner’s Institute(GLI)」だ。鏑木稔代表に聞いた。

日本進出が進むボーディングスクール

「ザ・ナイン」と呼ばれる英国の名門パブリックスクールであるハロウスクールをモデルにしたハロウインターナショナルスクール安比ジャパンが岩手県八幡平市に、千葉県柏市にラグビースクールが2023年開校するなど、ボーディングスクールが次々と日本進出を予定しています。

25年間、個別指導の学習塾を経営してきましたが、今注力しているのが2015年に立ち上げた、GLIです。晴海校、広尾校、武蔵小杉校の3拠点で、英語力を中心としたグローバルスキルの習得し、日常生活で実践する体験学習を行っていきます。

例えば、4泊5日の海外スタディーツアーの経験を英語でプレゼンテーションしたり、ウクライナ侵攻や南北格差などの国際的な問題について調べて英語で討論をしたりしています。重要なのは、英語力を手段にして社会に関わる意欲を育てて、社会課題を解決する能力を身に付けることです。その能力の育成こそ海外の教育では重要視され、ボーディングスクールの受験でもその能力が測られます。

当スクールでは、これまでハロウインターナショナル安比校やカナダのラングレー校、英クライストカレッジなどのボーディングスクールへ複数の合格者を輩出してきました。

急がれる非認知能力の育成

ボーディングスクールに我が子を通わせたいという保護者からの相談は年々増加していますが、その背景には日本の教育に対する危機感があると思います。

文部科学省は時代の変化に対応しようと2022年、学習指導要綱を改定し、高校で総合的な探求の時間が始まりました。これまでの高得点を取るという表層的な勉強ではなくて、課題を解決し、自分の生き方を考えていくための資質や能力を育成することを目的にした授業です。

ただ、授業をする学校は変化になかなかついていけていないのが実情です。板書して、生徒に写し取らせて、良い点数を取れるように指導してきた先生たちにとって、点数に現れない非認知能力を伸ばす指導は、これまでと全く違うスキルが求められため対応が難しいようです。

これまでの学校教育が変わらなければ、日本の衰退は止められないと私は思います。1人当たりのGDPは、2000年は世界で2位だったのが、2021年は27位と低迷しています。企業の規模を示す指標である時価総額ランキングでも、平成が始まった1989年には日本の企業が上位を独占していましたが、現在はトヨタ自動車1社のみがランクインするにとどまっています。

日本でイノベーションがほとんど起こってこなかったからだと思います。GAFAMのようなイノベーション企業は、創業してまだ30年も経過していませんが、時価総額ランキングの上位となる成長を遂げています。日本はこういった企業が出てこなかった。やはり教育の責任が大きいと思う。米国を先駆けに、世界では積極性や協調性、やり抜く力といった非認知能力の育成が早くから行われ、その成果が今現れています。日本も早く続かなければなりません。

PDCAを回す力を身に付ける

これまでの日本では、入試で高い点数を取って良い大学に行けて良い会社に就職でき、年功序列と終身雇用の幸せルートに乗れたのですが、そのルートはもう崩れ去っています。ただ相変わらず子供を学習塾に通わせて、偏差値の高い学校に入れることにこだわる親もいます。自分が受けてきた教育を子供にも受けさせたがるのがその理由ですが、日本の教育はかつてない大転換期にあり、親こそ知識をアップデートして、本当に子供のためになる教育をしてほしいと思います。

本来であれば、日本の学校教育の現場でイノベーションを起こせるような教育が行われるといいのですが、現実はそうではありません。そのために、教育機会を求めてボーディングスクールに子供を通わせたいという親が増えています。

例え我が子をボーディングスクールに通わせることが難しくとも、「社会の困りごとは何か」いうことが、大きな学習テーマなので、子供たちにアンテナを張らせてほしい。生徒会活動でも部活でもボランティアでも何でもいいので、子供たち自身が見つけた解決したいテーマに対して、PDCA=Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)=を回す力を身に付けさせることができれば海外でも評価されます。

一日も早く偏差値一辺倒の教育を脱し、子供たち自身が、自分が何を幸せに感じるかを理解し、自分の力でそれを実現する能力を得ることを願っています。

Global Learner’s Institute

代表

1968年、群馬県出身。個別指導の学習塾を25年間経営し、22教室を展開し、生徒数2200人に拡大させる。2012年、株式会社ジプロスを設立。代表取締役に就任。神戸市夙川学院中・高校で校長兼理事として学校改革にも携わる。2015年、グローバルスキルと受験を両立させる教育事業「Global Learner’s Institute(GLI)」をスタート。

https://gli-english.com/