2022.01.18

事業を通じて沖縄を豊かに OKINAWA RESORT LAB・呉屋敦士代表取締役社長

沖縄にひときわユニークな企業がある。モバイルオーダーを中心としたIT事業に主軸を置きながら、無人島を保有しリゾート開発事業も手掛けているOKINAWA RESORT LABだ。一見すると対極にもあるような2つの事業を同時に推し進める背景には強い信念があった。「事業を通じて、地元沖縄で暮らす人の生活を豊かにしたい」。代表取締役社長の呉屋敦士氏がそう何度も口にする理由を聞いた。

畑違いのIT事業で起業

創業当初から力を入れているのは、モバイルオーダーを中心としたIT事業です。今ではさまざまな企業からリリースされているモバイルオーダーですが、日本で一番手か二番手くらいの早い時期から展開をしていました。現在は沖縄だけで200店舗以上の飲食店やホテルに導入していただいています。

モバイルオーダーの存在を知ったのは、旅行で訪れた中国・深圳と広州です。屋台に行ってもきれいなレストランで食事をしても、基本的にスタッフもメニューも来ません。携帯電話をかざしてQRコードを読み取って注文し、支払いも済ませられる。このシステムに驚き、私の出身地の沖縄に持ち帰ってみんなを驚かせ、喜ばせたいという思いがありましたね。

地元沖縄で起業する前は、メガバンクの不動産部で働いた後、東京や大阪を中心とした不動産関連企業を経営していました。IT畑出身ではないのですが、前職での経験が活きていると感じています。ITのシステム開発と建物を造る工程はとてもよく似ています。建築業界では現場監督、IT開発ではプロジェクトマネージャーが必要です。どちらも全工程を把握し、マネジメントをする仕事ですね。出来上がるものは違えど、必要なマネジメント能力は一緒。だから今の事業も軌道に乗せられていると思っています。

外からと中からでは沖縄の見え方が違った

沖縄で起業をしたのは、周りにいる身近な人たちの暮らしを豊かにしたいという思いがあるからです。東京や大阪で会社員として、又、経営者として働いていたころ、金銭的に余裕があったこともあり、ユニセフや車いすバスケなどの障碍者スポーツに寄付をしていました。それによって誰かの幸せに寄与できていると信じて疑わなかったのです。

そんなときに弟を亡くし、身近な人すら守れない自分の無力さに気づきました。事業を行っていく中で、沖縄に変革をもたらしたいなんて大それた目標はなく、本当に自分が大切に思う人の暮らしを、事業を通じて豊かにしていきたいですね。

沖縄に戻ってきて気づいたことは、外からと中からとでは、見え方が異なるということです。たまに帰省したときには、いいホテルに泊まり、おいしいものを食べることができ、とても楽しい時間を過ごせました。戻ってきて友人たちと話しているうちに、彼らは沖縄に住みながらも、その良さを享受できていないことを知りました。沖縄は日本で最も所得が低い県です。地元住民にとって、いいホテルへの宿泊やおいしい食事、リゾート地での保養は手が届くものではありません。

貧困問題はメディアにもよく取り上げられますが、観光やリゾートのような沖縄らしい明るい話題に県民が登場することはないのです。だから地元の人たちを勇気づけ、誇りに思ってもらえるような企業になりたい。そういう思いで、日々事業に取り組んでいます。無人島開発を行っているのも地域の発展に貢献したいという理由があるからです。

無人島開発事業は周辺地域の貢献にもつながる

IT事業が中心ですが、いずれ無人島開発事業にシフトしていきたいと考えております。無人島を丸ごと貸し切り、自由に使えるというのがサービスの中心です。もちろん地元の沖縄の方々にも気軽に利用していただきたいと思っています。当初はITの研究施設を作ろうと思って土地を探していました。旅をしている中で世界にはたくさん面白いIT技術があることを知りました。シリコンバレーで、体に埋め込んだチップで決済をするのを見たときは驚きました。深圳でのモバイルオーダーもそうです。ITとリゾートという自分が好きなもの同士を掛け合わせたら面白いはず。そんな風にリゾート地にあるIT研究所を思い描いていました。

偶然見つけたのは土地ではなくアーヂ島という無人島でした。アーヂ島は自分のあだ名と似ていることもあり、又、無人島のオーナーという響きに強く引かれました。無人島の周辺には沖縄にまつわる伝説があったり、世界遺産や重要文化財があったり、稲作発祥の地であったりと文化面に注目しても面白い。周辺地域の人たちと関わる機会も増え、話をするたびに彼らの思いに寄り添いつつ、無人島を有効活用したいと思うようになっていきました。無人島のある南城市も含め、沖縄県の人口や出生率は高まっています。

しかし、無人島周辺地域は高齢化が進み、農地は荒れる一方です。そこで周辺の農地を購入したり、あるいは借りたりして、以前の田園風景と伝説を復活させる。採れた食材は無人島内の施設で提供し、余剰分は地元地域へ無償で還元するという仕組みにすれば、持続可能な地域社会が作れるのではないかと考えています。周辺地域が誇れるような施設を作りたいので、計画は練っていますし、骨を埋める覚悟で取り組んでいます。

OKINAWA RESORT LAB

代表取締役社長

1981年沖縄県出身。メガバンクの不動産部で働いた後、東京や大阪を中心とした不動産関連企業を経営。2018年に地元沖縄にてモバイルオーダーを中心としたIT事業で株式会社OKINAWA RESORT LABを創業。「事業を通じて、地元沖縄で暮らす人の生活を豊かにしたい」という思いから、無人島を保有しリゾート開発事業も新たに手掛けている。

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