2022.08.17

世界で導入が進む地熱発電の魅力

世界で導入が進む地熱発電。地理的に火山が多くある日本は、長年にわたり大きなポテンシャルがあると言われ続けてきた。しかし、諸外国と比較してもあまり活用が進んでおらず、主に温水などの限定利用にとどまっているのが現状。そうした中、日本における地熱発電の課題を解消するために、国はどのような施策支援を行っていくのだろうか。地熱発電の今に迫ってみたい。

化石燃料から再生可能エネルギーへ

2021年末にグラスゴー(英国)で開催された「COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)」。国連の気候変動枠組条約に参加する国が一堂に会し、「パリ協定」に基づいて「産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑える」という目標を確認した。今後、世界が持続可能な発展を遂げるためには、化石燃料から再生可能エネルギーへのシフトが必須だと考えられている。
そんな中、日本において大きなポテンシャルを秘めている再生可能エネルギーがある。それが「地熱」だ。地熱発電は世界的に導入が拡大しており、2021年10月にはアイスランドで世界地熱会議が開催。同会議での発表によると、2020年の世界における地熱発電による発電量は2015年と比べて169%まで拡大したと想定されている。

世界で地熱発電の導入が進む理由

世界で地熱発電の導入が進むのには、いつくかの理由がある。地熱発電は、地中深くのマグマだまり付近にある蒸気や熱水を、井戸を掘って取り出し、そのエネルギーでタービンを回して発電する仕組みだ。地下の熱を利用する発電方法であり、温室効果ガスを排出しないため、クリーンに発電できることが特徴とされる。天候や季節に影響されずに、一年を通じて安定した発電ができることも魅力の一つだ。さらに、設備の耐用年数が長いのも特筆すべき点で、長期間、安価に電力を提供できる。こうしたメリットから、日本を含めた世界各地で地熱発電の導入が進んでいるのだ。

日本における地熱資源量のポテンシャル

日本は全国各地に温泉の名所があることからもわかる通り、世界的に見ても豊富な地熱資源地帯と言える。日本における地熱資源量のポテンシャルは約2,300万kW(キロワット)で、アメリカとインドネシアに次ぐ世界第3位に位置する。しかし、発電設備容量で見ると世界第10位となり、各国が開発に力を入れる中で相対的な順位は後退する傾向にあるのが現状だ。政府が策定するエネルギーミックスでは、2030年度に最大で発電容量155万kW、発電電力量113億kWhの導入が目標として設定されている。しかし、2021年時点で導入量は約60万Kw。目標達成にはまだまだ遠く及ばない状況だ。

地熱発電開発のリスクと変化

地熱発電の開発が進まなかった原因としては、「開発リスクの高さ」が挙げられる。地熱資源が存在する地下2,000mまで掘削するには、少なくとも4億円ほどかかるといわれ、地熱は目に見えない地下資源のため、正確に掘り当てることは容易ではない。また、空振りになる恐れもあり、さらには長い調査時間が必要で、10年以上を要するケースも珍しくないという。約2,300万kWあると考えられている地熱資源のうち、8割以上が国立公園・国定公園などの自然公園に集中していることも原因の一つとされている。自然公園は法律によって開発が厳しく制限されているため、発電所の建設はおろか、調査さえできない。温泉地にも地熱資源は存在するものの、開発によって温泉資源への影響を懸念する声も多く、地元の理解を得ることが容易ではないのだ。しかし昨今、そうした状況が徐々に変わろうとしている。

国による新たな支援策と課題

まず、日本の地熱発電が停滞している状況を変えようと、国が積極的な支援を始めた。開発のリスクの問題について、経済産業省は「地熱発電に対する理解促進事業」を実施し、地域住民との調整や開発について補助を行なうようになった。加えて、同省とJOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)が調査を行い、発見した適切地を民間企業に引き継ぐ取り組みも行なっているのだ。自然公園法や温泉法による規制については、2021年9月に、環境省が規制を見直すための方針を発表。自然公園内での地熱開発に関するガイドラインの整備を進めているところだ。経済産業省と環境省が、国立公園など30地点で地熱資源について調査することも決定している。

次世代技術の開発とともに

さらには次世代技術の開発も進んでいる。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、地熱発電の導入拡大に向けた研究開発に注力。地震波を計測してマグマに近い従来の地熱発電よりも高温のエネルギー源を探索する「超臨界地熱資源技術」や、IoTやAIの活用によって地熱発電設備や地熱貯留層の管理を効率化する「地熱発電高度利用化技術」といった研究を続けているところだ。こうした支援策や規制緩和の充実、技術開発の進展とともに、日本における地熱発電はさらに盛り上がりを見せそうだ。すでに2022年以降、東北地方や近畿地方の各県で新たな地熱発電の稼働が予定されている。社会の持続可能な発展を実現するうえで、地熱発電がどのような役割を担っていくのか、その動向から目が離せない。

転載元:Qualitas(クオリタス)