2022.05.25
不動産ファイナンスの魅力と“必須の能力”とは
物流センターの開発・建設を行う不動産アセットマネジメント事業を展開しているKICホールディングス。約30年にわたり業界で結果を残してきた峯田勝之代表取締役会長兼社長はプロフェッショナルを目指す若手に自らの経験や学びを伝える教育に力を注いでいる。不動産ファイナンスの魅力と業界で生き抜くために必要な能力について聞いた。

成果が目に見える仕事
KICホールディングスは物流センターの開発・建設を行う不動産アセットメントマネジメント事業を中心に展開しています。ローンや貸付、証券などのペーパーで行う取引とは違い、実際に大きな建造物が立ち、目に見える形として成果が分かるのが事業の大きな魅力でしょう。不動産ファイナンスの世界は特殊な世界だと思います。携わる企業は、外資や大手金融機関の子会社、さらに私たちのような独立系の会社などさまざまですが、新卒でこの仕事をしている人はまずいません。会社が違っても、やっていることは規模が異なるだけで同じ仕事です。スキルを身に付けてキャリアを積んでいけば、業界の中ではどの会社に行っても一生食べていくことが可能です。
不動産ファイナンスの世界は、動かす金額も大きくなります。私たちが扱うのは数十億から100億円以下の案件が多いのですが、大企業は数百億から数千億円が動きます。大きな金額を動かして仕事を作り上げることに興味がある人にとっては、非常に魅力がある業界だと思います。大手の金融機関に入社したとしても、この仕事に一から携われる人というのは一握りで、幸運な人しかなかなか携われません。私たちは小さな会社ですが、行っている事業としては不動産ファイナンスという同じ領域なので、この仕事に携わりたいと思う人にとっては魅力的かもしれません。

重要な「書く力」
実はこの業界で重要視される大切な能力の一つに「書く力」があります。
金融機関では若手社員はまず徹底的に文章の書き方を鍛えられます。私自身も若手の頃は上司に添削された赤鉛筆だらけの書類が戻ってきて、一生懸命直していました。英文の契約書を日本語に翻訳したり、契約書の中のメカニズムについて文章で整理したりするなど、何度も書き直すあまり、手にペンだこができるくらい徹底的に文章を磨き続けました。
重要なのは核心的なこと、つまり時間や金額を正確に抽出して文章に整理していくことです。例えば、投資をする際に重要視するIRR(内部収益率)という尺度があります。複利の利回りとキャピタルゲイン込みで10年間の価値算定をするのですが、IRRが15%以上であれば、収益的な採算が十分に取れるという判断をします。不動産開発を行う土地の値段やテナントからもらう賃料の坪単価の設定などによって数値は変動しますが、全てを加味して投資として成功するか否か判断します。
実際には建物を完成させ、金融商品としてそこからキャッシュフローが生まれるところに行きつくまでには認可が下りないリスク、賃料が予定より下回ってしまうリスクなど、さまざまなリスクがあります。私たちはリスクを全て定量化、数値化し、時間軸の中に納めていきます。核心的なことを抽出して数量化し、文章の中で表していくということが重要な仕事の一つになります。

ベンチャースピリットを持ち続ける
若手社員には、自分の得意なこと、好きなことの分野に注力して自分の能力を伸ばしてほしいと考えています。不得意なところをつぶす努力よりも、得意なことを伸ばす努力の方が、やる気が湧いてきますし、会社にとっても良い影響があります。伸ばした成果が会社として結果的にどういう形で良い成果をもたらすかというのは、会社の向かう方向やタイミングなどによって変わってくるとは思います。自分の好きなことを会社というフィルターを通して夢中になって取り組んでもらうことがまずは大切だと考えています。
若い人は弊社からステップアップして別の会社に移ったり、起業したりする人も当然でてくるでしょう。そのときに、「あの会社で学習したこと、経験したことが自分の基礎になっている」と言ってもらえれば、ありがたいことだと思います。
今後も国籍や性別も関係なくさまざまな価値観を持つ人が集まって、良い刺激を与えあい、事業を通じて自己実現ができる会社にしていければと考えています。会社が大きくなっていても、常に挑戦し続けていかないと成長し続けることは難しいと思います。ベンチャースピリットを忘れずに、常に上を目指して進んでいけるよう今後も努めていきます。
KICホールディングス株式会社
代表取締役会長兼社長
峯田勝之
1989年、明治生命保険相互会社入社(現明治安田生命保険相互会社)。2005年、AMB プロパティコーポレーション(現プロロジス)日本支社代表に就任、国内物流不動産投資事業を統括し、国内ポートフォリオを構築。2009年、KIC グループ株式会社を設立。2012年、KIC アセット・マネジメント株式会社代表取締役に就任。日本物流不動産評価機構委員、セルフストレージ証券化推進協会代表理事。
https://www.kicam.co.jp/index.html