2023.04.05

上戸彩式、仕事の流儀。

皆に気持ちよく過ごしてもらいたい。楽しく仕事をしてもらいたい。その思いは、今も先も変わらない。

1997年の「全日本国民的美少女コンテスト」にて審査員特別賞を受賞し、芸能界入りした上戸彩さん。「とにかく目の前の仕事一つひとつに精一杯だった」という多忙な10代~20代を走り抜け、30代・2児の母となった彼女が今感じる仕事観の変化、そして一貫して変わらない思いとは。いつでも太陽のようにブレない彼女の明るさの根底にあったのは、関わるすべての人々への愛だった。

―――――10代・20代と比較して、30代の今、仕事に対する思いで変わったことはありますか?

10代・20代は、1日1日をできる限りの力を出し切って終えることに必死だったなと思います。寝る時間もないほど忙しい日々を送っていましたから。今は少しゆとりを持てるようになったこともあって、勉強のために他の役者さんの作品を観る時間もできましたし、自分の芝居を見て反省したり、へこんだりという時間もできました。

以前は自分の仕事を振り返る時間すらなく次に進む!という感じだったので、一つひとつの仕事に向き合う時間の濃さは大きく変わりましたね。あとは、仕事に対する感謝の気持ちがより一層強くなりました。育児中という状況を理解した上でオファーをくださる方々や、ファンの方々など、皆さんのおかげで仕事ができるのだというこの環境を改めてありがたいなと感じています。

―――――逆に、昔から変わらない仕事へのこだわりがあればお聞かせください。

とにかく皆で楽しく仕事をしたい!という気持ちが強いので、一緒にお仕事をする方には気持ちよく過ごしてもらえるように心掛けています。昔は熱を出しても心配をかけたくないがために、なんでもないように振る舞っていたときもありました。今はそもそも母親業と両立できそうなお仕事をを家族にも相談してお受けしているので、結果的に現場にご迷惑をおかけするようなことも防げているかなと思います。

―――――上戸さんのいつも明るく元気なイメージは、そういった周囲への心配りからきているのかもしれません。忙しいビジネスパーソンが上戸さんのようなメンタルを維持するためのコツはありますか?

お腹を満たすことでしょうか(笑)。何より自分の欲求を我慢しないことですかね。特に私の場合、食欲はエネルギーに直結している気がします。それから、あまりに仕事が忙しくて自分の時間が取れないときには、「時間が空いたらしたいことリスト」を書いて現実逃避をしていました。「○○さんと会いたいな」とか、「そろそろ美容室に行きたいな」とか。

そうすると、ほんの少し時間ができたときの嬉しさが増しますし、すぐ行動に移せますよね。大好きなマッサージの予約を少し先のスケジュールに入れておいて「これがあるから頑張ろう!」って気合いを入れたりもしてます。

―――――「するべきこと」だけではなく、「やりたいこと」を生活の中に溶け込ませる。ご自身を愛することが周囲への優しさにも繋がるのかもしれませんね。

特別自分を大切にするために何かしているつもりはないんですが、自分は愛されているという感覚は確かにずっとあります。それは小さい頃から「感謝の気持ちは相手にちゃんと伝えなさい」と教わり育ってきたからでもあるのかもしれません。家庭内でも「ありがとう」という言葉が絶えなかったからだと思うんです。

だから今でもなるべく、いい言葉を口にするように意識しています。そうすると、「類は友を呼ぶ」でいい人達が集まってくれる。だからこそ今は、すごく気持ちのいい環境で生活できているんです。

「ありがとう」という感謝の言葉が、心地いい関係性を育んでいく。

―――――多忙な毎日を過ごされている上戸さんが、今回『シャイロックの子供たち』への出演を決めた理由をお聞かせください。

主演の阿部サダヲさんは以前から役者としても大好きな方で、その阿部さんと共演できるチャンスということが1番大きかったです。実際に働く独身女性の役は久しぶりでしたし、恋愛が絡んでいない分、やりやすくて楽しかったです。

現場も、池井戸作品ならではの心地良いギラギラ感があって、役者の皆さんも味のあるベテランの方ばかり。台詞の間合いから言い回しまで、それぞれのクオリティの高さに役者としてすごく刺激を受けた撮影でもありましたね。

―――――共演者の方々とのエピソードは何かありますか?

阿部さんは想像していた通りの方で、ちょっとしたときにボソボソッと言う言葉がすごくブラックなんですよ(笑)。もうその一言一言がツボでした。作中では阿部さんと、私と玉ちゃん(玉森裕太さん)の3人のシーンが多かったんですけど、玉ちゃんの真面目さが役にも滲み出ていて、それが3人のバランスをすごく良い風に引き締めてくれたなと思います。

私と阿部さんはちょっと遊んじゃっているようなところがあるので(笑)、カメラの回っていないときは私と阿部さんが玉ちゃんに茶々を入れるか、私と玉ちゃんが美容話で盛り上がって阿部さんがついてこれないか、みたいなパターンが多かったです。

―――――お金にまつわる人の欲望や嘘、不正などが展開されるストーリーでしたが、共感できるポイントはありましたか?

愛理は家族を養っているという役柄なので、その点では私が10代の頃、「母へ大きな家を買ってあげたい」という夢のために突っ走っていたところと重なる部分があったかもしれません。ただ、これも母の影響ですが、「お金=幸せ」という考え方は私はあまり理解できないところですね。

最近自分に使ったお金も、マッサージとお掃除ロボットくらい(笑)。ちゃんと意義のあることにお金を使いたいと思い日々の生活を送るよう心がけていますが、あんまり欲しいものや使いたいものがないのが正直なところです。ただ、お金が人を変えるということは理解できるので、お金に執着しないようにしようと潜在的に意識しているのかもしれません。

■作品情報 松竹配給作品『シャイロックの子供たち』 大ヒット上映中

累計発行部数 60 万部を突破した池井戸潤による小説「シャイロックの子供たち」(文春文庫)を映画化。2018 年に大ヒットを記録した『空飛ぶタイヤ』の本木克英監督はじめとするメインスタッフが再集結し、主演の阿部サダヲをはじめ、上戸彩、玉森裕太など日本を代表する超豪華キャスト陣も勢ぞろい。メガバンクが舞台の珠玉の大暴露エンターテインメントとなっている。

■出演情報 スペシャルドラマ『ひとりぼっち―人と人をつなぐ愛の物語―』 2023 年 4 月9 日(日) TBS系よる9 時放送

杉信也(相葉雅紀)は、15歳で家も両親を失い、唯一の家族である姉も亡くなってしまった。「自分はひとりぼっち」と心を閉ざして生きていたが、おにぎり専⾨店「たちばな」で亡くなった姉にそっくりな店主・立花香(坂本冬美)と出会う。店の常連客である臨月の妊婦(上戸彩)やおにぎり専門店の従業員(⼀路真輝)に徐々に⼼を許し始めた信也は「たちばな」に通うようになる。

女優

1985年生まれ。2000年、ドラマ「涙をふいて」にて女優デビュー。2001年出演の「3年B組 金八先生」では性同一障害の生徒役を演じ、脚光を浴びる。2003年に映画「あずみ」に主演して以降、「エースをねらえ!」、「アテンションプリーズ」、「半沢直樹」、「昼顔~平日午後3時の恋人たち〜」など、多数のドラマ・映画に出演。