2022.08.02
リハビリテーションに関わる人全てを幸せに
「リハビリテーションに関わる人全てを幸せにしたい」と、Rehatech Linksが理学療法士と作業療法士向けに提供しているオンラインの教育プラットフォーム「リハデミー」。大北潤代表取締役は、自らが理学療法士として勤務する中で感じた思いから、リハデミーを開発したという。2022年7月には、「療法士が求めているものを提供するのではなく、患者が必要としているものを療法士に届けたい」と大幅なコンテンツリニューアルを実施した。大北代表取締役に話を聞いた。

療法士に学びの場を提供
理学療法士は、国家資格を取得して就職すると、ほとんどの場合1カ月足らずで患者を担当します。しかし、国家資格取得のために熱心に勉強してきていても、臨床現場でどのようにリハビリテーションを行えばいいのかという知識は十分に持っていません。医師のような研修制度や、現場に必要な知識とスキルを身につけられる場所や機会もなく、目の前の患者にどう向き合えばいいのか、私自身も非常に苦労しました。さらに社会人1年目の夏に交通事故で入院し、患者としてリハビリテーションを受ける側となったとき、理学療法の知識もあり、教育環境事情を知っているので、自分の体を安心して任せられませんでした。しかし、周囲の患者は、「ありがとう」と全幅の信頼を置いて療法士からリハビリテーションを受けていたので、同業者を信頼できないことに違和感を覚えました。療法士の学びの機会や場所が少ないことで、そのしわ寄せは全て患者にいきかねないこの現状を改善したいと思いました。
最初は病院内で療法士の学習機会を作ろうとしていたのですが、私と同じような悩みを持っている療法士の方は全国に多くいるはずだと、オンラインでのサービス展開を考えました。特に地方にいると、学会や講習会に参加する受講費以外に交通費や宿泊費もかかり、意欲があっても学ぶことができません。そうした環境の改善を模索していたときに、同じ考えをブログで発信している大学教授と知り合い、「一緒にやりませんか」とメッセージを送ったのが事業を始めるきっかけでした。

患者が必要とするものを届けたい
2018年12月に療法士がいつでも好きな時間に学べる動画コンテンツを中心に提供する「リハデミー」をリリースしました。ビジネス的にも順調でしたが、さまざまなコンテンツがそろっていく中で、自分がやっていることは本当に教育なのか、と疑問を抱くようになったのです。サービスは売れるし、療法士も満足してくれています。ですが、その情報が患者のためになっているのかと考えたとき、今は療法士が求めているものだけを提供し、売れそうなテーマづくりをして、講義内容は講師任せという状況になっていて、会社としてサービスを行う意義を感じることができなくなっていました。
そこで原点に立ち返り、療法士が求めているものを提供するのではなく、患者が必要としているものをどう療法士に届けるかという観点から全てのコンテンツ作りの工程を変えました。「見たい情報を見る」だけでなく、系統立てて学んでもらえるような分野別のカリキュラムや、さまざまな種類のコンテンツを提供して、個々に合わせた学習をサポートし、療法士が自身の行動を変えていけるように、2022年7月にサービスをリニューアルしました。その反響は大きく、臨床現場の療法士や、病院、クリニック、施設などから、たくさんの問い合わせがあり、医療プラットフォームを持つ企業からも協業の相談もありました。多くの方の協力を得ながら、リハビリテーションに関わる全ての方が幸せになっていける社会を実現していくためのサービスの基盤をつくっていきたいと思っています。

「療法士の教育を変える」スタート地点に
今の時代、さまざまな情報であふれ、取捨選択が非常に難しくなっています。特に医療分野は命に大きく関わります。それにも関わらず、情報の質が担保されない発信や情報販売が行われています。「リハデミー」では情報の質を担保するため、各分野に専門家に監修を依頼し、企画のコーディネートから講師選定、情報の正確性の確認をしてからサービスを提供しています。さらに、世の中にあるeラーニングサービスは情報のアップデートがなされていないものも多いので、鮮度高く情報を提供できるように定期的なコンテンツのアップデートを行っています。
リハデミーではさまざまな学びの形を想定してつくってきましたが、まずはリハデミーを学びのきっかけにしてもらうことが大切だと思っています。私自身、専門学校ではあまり研究や論文などにもあまり触れる機会がありませんでしたし、実際に臨床に出てから、何を勉強すればいいのか分かっていませんでしたので、コンテンツをレコメンドしたり、系統立てて学んでもらえるようなサービス設計にしています。オンラインの良さは、「いつでもどこでも」だけでなく、こういった個々に合わせた学習が提供できることにあると思います。コンテンツを提供するだけではなく、一緒に成長していけるサービスづくりが重要だと考えています。
上京するとき時、「療法士の教育を変える」と周囲に伝えてきたので、その言葉に責任を持たなければならないと事業を行ってきて、やっとそれを実現できるスタート地点に立てたのかなと思っています。これからも療法士教育を通して、どこの誰にリハビリテーションを担当してもらっても、安心して体を任せられよう、リハビリテーションに関わる全ての方が幸せになる社会を目指していきます。
Rehatech Links株式会社
代表取締役
大北潤
1990年、鳥取県出身。2012年、玉野総合医療専門学校理学療法学科卒業後、医療法人天和会松田病院に入職。2014年、リハビリテーション業界の教育における地域格差を感じ、起業するために上京。2015年、ウェブ制作・広告プロモーション会社を設立。2016年、Rehatech Links株式会社を設立し、オンラインの教育プラットフォーム「リハデミー」を提供。
http://www.rehatech-links.com/