2022.10.27
マッキンゼーが促進する、日本再始動に向けた戦略。
マキンゼー・アンド・カンパニーはアメリカ合衆国に本社を置く大手コンサルティング企業であり、世界60カ国に100以上の支社を持つ。日本でも「マッキンゼー・アンド・カンパニージャパン」を展開し、日本のさらなる成長促進に向けてのインパクト創出のサポートを行っている。日本での設立は1971年。国内状況や市場への理解も深いマッキンゼーが提唱する日本再起動に向けた戦略を紐解くとともに、改めて日本の強みを確認したい。

国内で50年以上の実績
マッキンゼー・アンド・カンパニージャパンでは、上場企業のみならず、非公開企業、政府機関にもコンサルティングサービスを提供。あらゆる業種を対象に、ここ5年間で1,000のプロジェクトを実施してきた。日本のトップ30社の8割をサポートしているという。コンサルタントメンバーの専門も多岐にわたり、対応分野も幅広い。日本の将来の成長を担う産業として自動車、ハイテク、金融、医薬品を中心に、プロジェクトチームによって戦略立案やサプライチェーンマネジメントなどに幅広い知見を提供。2018年には関西オフィスを開設し、国内での活動の場をさらに拡大しているところだ。
国内消費者の動向を調査
2022年3月、マッキンゼーは新型コロナウイルス感染症危機における、日本の消費者心理に関する調査を行った。調査の中では消費者の多くが仕事・ショッピング・旅行など、自宅外での活動を増やしている。消費意欲は旺盛で、2022年春以降から2023年にかけ、日用品以外で最も興味がある消費カテゴリーとして旅行を選ぶ回答が全体の7割以上に上っている。コロナの影響による収入・貯蓄への影響はマイナスの一方、支出は増加傾向にあることが分かった。ただ、同時に全てのカテゴリーで支出を減らすという回答がみられ、慎重な姿勢も垣間見える。レポートでは総論として、日本の消費者行動や家計は、徐々に回復しつつあるものの、景気に対する悲観的な見方が少しずつ増えている、としている。また、消費全般で目立つのがデジタル環境を活用したサービスの利用増加だ。
消費者のニーズは学習や医療から、ビデオ会議、ストリーミングなどのオンラインサービスやフードデリバリーまで、多岐にわたっており、今後も利用したいという高い意向がみられている。7割の回答者が週に1度以上SNSを利用し、特にZ世代(1990年代中盤~2010年生まれ)では、購買時にソーシャルメディアの影響を受けていると推測された。
マッキンゼーが掲げる提言
こうした状況に対し、2030年を見据えマッキンゼーが提唱するのが、日本のデジタル改革だ。在日米国商工会議所 (ACCJ)と共同で作成したレポート「2030日本デジタル改革」の中では、デジタル環境の推進は消費者だけでなく、労働者にとっても必須であると説く。人口の高齢化は労働力不足をもたらし、デジタルソリューションの必要性が増すからだ。また、今後デジタルをけん引する企業はグローバル社会において、高い経済的利益を得るだろう、と同レポートの中で述べられている。
しかし、日本のデジタル競争力は低く、全世界で2015年に23位、2020年は27位と、順位を下げつつある状況だ。そのほかレポートでは愚弟的なロードマップとして、2025年までにデジタル人材を2倍に増やし、工業生産、小売り、ヘルスケアなど、早期に実現可能な産業での実装を進めること。2030年までにデジタル人材を3倍以上へと増やし、産業界におけるデジタル普及2桁台を達成することを提唱。こうした目標は絵空事ではなく、実現可能と分析する。
必要なのは達成への意欲・スキルと人材育成
日本には「数学と科学の適性を持つ若者」、「ロボット工学とハードウェアの卓越性、根強いエンジニアリング文化」、「自動車産業における世界の牽引」「世界上位の特許クラスター」、「卓越した業務遂行力」「ゲームと仮想キャラクター開発に関する専門知識」など、独自の強みがある。また、構築する必要があるデジタルユースの実例はすでに国内外に存在しており、実証済みの技術の利用も含め活用が可能だ。必要なのは、達成への意欲と人材やスキルの獲得のみ、というのがマッキンゼーの見解となっている。
少子高齢化、労働力不足といった現象は既に身の回りで起こりつつある。先進諸国と比べても、身近な消費面においてすら電子マネーの普及などデジタル技術推進の遅れが目立つ。マッキンゼーの指摘は的を射ているのかもしれない。コロナ禍を機に、仕事や生活でのデジタル技術の活用は一歩進んだ。コロナの終息を待たず、一人ひとりがデジタル化の推進へ、今よりもう一歩前へ進んでみるのはどうだろうか。
転載元:Qualitas(クオリタス)