2023.05.06

フジロックフェスティバルから見る、音楽業界の活況。

初開催以来、25年の歴史を持つフジロックフェスティバル。コロナウイルス感染症が蔓延する以前には、10万人以上を集めてきた同フェスは、国内でも屈指のロックの祭典だ。2020年はコロナ禍の影響で延期を余儀なくされたが、2021年の縮小開催を経て、2022年に再始動。海外からの評価も高いフジロックフェスティバルのこれまでの軌跡を振り返りつつ、音楽業界の現状を見つめてみたい。

自然と音楽の共生がテーマ

1997年から開催されているフジロックフェスティバル。第1回のフジロックフェスティバルは1997年、富士天神山スキー場で開催されている。目指したのは「自然と音楽の共生」だ。その後、東京での開催を経て3回目となる1999年からは、新潟県湯沢町の苗場スキー場で開催されている。金・土・日の3日間をかけて行われるイベントはフードエリアも充実し、まさにお祭りのよう。キャンプエリアも併設しているので現地に滞在しながら楽しむことができる。木曜日の夜には一部のエリアを開放し「前夜祭」も開催。打ち上げ花火、盆踊り、抽選会なども催された。また、前夜祭は地域の人への御礼も兼ねており入場無料で開放するのが慣例となっている。

海内での評価も高い

フジロックフェスティバルは海外からアーティストが参加し、世界での評価も高い。2016年には「Festival250」で、Coachella(アメリカ)、Glastonbury Festival(UK)に次いで、フジロックフェスティバルが3位にランクインした。Festival250はイギリスの音楽業界のリサーチ企業Festival Insightsと市場調査企業CGA Strategyが共同で行った調査。観客動員数や会場の規模、チケットの売上等に加え、世界的アーティストを招聘していることや環境保護への取り組みや助け合い、譲り合いの精神なども勘案し総合的に評価された。2011年から2019年までは、【Benefit for NIPPON】の一環として義援金募金の呼びかけや出演アーティストによるチャリティー・オークションを実施。東日本大震災復興、「平成30年7月豪雨」の被災者への支援活動も行っており、出演者・観客ともに助け合いの精神を体現している。2020年はコロナウイルス流行の影響を受け、開催を一年延期。行政機関との調整や地域との協力体制について話し合い、ステージ規模の縮小や酒類の禁止、新型コロナ検査キットの配布と事前検査の実施などを行い、開催にこぎつけている。

国内屈指のロックフェス

第1回は32組のアーティストで始まったフジロックフェスティバル。観客動員数は3万人だった。第2回には6万7,000人へと大幅に観客を増やし、2003年には10万人に到達。コロナ禍直前の2019年には13万人に達している。参加アーティストは16ステージ295組にのぼった。2021年の開催ではマスク着用、さらに禁酒など多くの制限や制約を設け、規模も縮小した開催ながら、3万5000人余りの観客が訪れた。そして2022年の出演アーティストは全9ステージ総勢162組と回復。目指したのは「特別なフジロックから、いつものフジロックへ」。開催前日の木曜日夜に行っていた「前夜祭」も復活し、「音楽と自然、そしてコロナとの共生」をテーマにした。参加アーティストは日本勢のほか、「FOALS」「MURA MASA」「TOM MISCH」といったイギリス勢アーティストをはじめ、今年グラミー新人賞にもノミネートされた「ARLO PARKS」、若手No.1ソウル・R&Bバンドとも称されるTHE INTERNETの中心メンバー「SYD」、世界的DJ「JONAS BLUE」など、世界各地から著名アーティストが来日。大いに会場を賑わせた。

最後まで可能性を探って実行し続ける

「最後まで可能性を探って実行し続ける、これは1997年のフジロック初開催のときから変わらずに私たちが持っているメンタリティ」。2021年の開催時、フジロック主催者であるSMASH取締役の石飛智紹氏はメディアのインタビューにこう答えている。開催が1年延期となった際にも、約8割の人がチケットを払い戻すことがなかったという。フジロックフェスティバルに対する参加者の熱い思いがうかがえる。こうしたファンの行動からも、音楽業界が世界に冠たる音楽のお祭りがこれからも滞りなく開催されるよう、一音楽ファンとしても切に願うばかりだ。

転載元:Qualitas(クオリタス)