2022.05.24
テクノロジーを駆使し、清掃業にSDGsを提案
2023年に20周年を迎えるビルスキルは、清掃業を中心に建物の維持管理事業を展開している。長谷川雅士CEOは、30代の若さで、最新技術の導入を進め、SDGsに寄与する提案を各企業に行うなど業界に革新を起こし続けている。長谷川CEOが目指す改革について聞いた。

人に頼らないマンション管理を
弊社は建物の維持管理を柱に事業を展開しており、主にマンションを扱っています。元々清掃業から事業をスタートしているのですが、マンションの清掃のボリュームというのは他の建物と比較しても非常に大きく、住民との密なコミュニケーションだったり、常駐しなければならなかったりと、かなりの労力を要します。若手がなかなか業界に来ない状況があり、多くは70代前後の高齢者の方が、この仕事に日々汗を流しています。
業界全体でも安定的な雇用と持続可能な業務の継続が急務ですが、人手不足の中、正直立ち行かなくなっているのが現状です。賃金も毎年上がっていき、管理会社からの委託費とのバランスが取れなくなってきているため、人に頼らないマンション管理、清掃管理をしようと、ロボティクスやIoTを導入した建物管理を手掛けるようになりました。
取引先に「生産性・効率性を進めましょう」「DX化しましょう」と提案すると、やはり創業当初からの事業である「清掃の会社」というイメージが強くあるようで、「そういうこともやるのですか」と驚かれることがあります。そのため、「SKILL LAB」というサービスを立ち上げ、テクノロジーを中心に据えた課題解決のための総合的な提案をできるようにしました。

環境保全の取り組みを付加価値に
「SKILL LAB」では、労働者の負担を軽減するロボットの導入や、清掃業のイメージアップを図るさまざまな施策を行っています。その一つに、各マンションに「廃棄物コントラクター」という専任のごみのプロを派遣したり、常駐させる取り組みがあります。住民が日々出される家庭ごみをコントロールしたり、ごみの量を可視化したりして、「今月はごみがこのくらい減り、リサイクルはこのくらいになります」と、管理組合やマンションの住民に通知、「CO2をこのくらい削減し、環境に貢献できました」というレポートを作成して、環境負荷軽減に貢献するマンションだということを各自治体にアピールしていく取り組みです。「環境保全に何か取り組みたいけれど、やり方が分からない」という住民に対しても、培ってきた知識や経験を生かして、その方法をお伝えしていくのが私たちの役割だと考えています。
またビルや商業施設でしか現状普及していない、建物における環境負荷の低減などの取り組みについて第三者が認証を与えて保証する「グリーンビルディング認証」を、マンションでも取得できる基準となるよう、進めていきます。
こういった取り組みは、物件の資産価値を向上させます。例えば分譲マンションの場合、一度購入すると、大抵の場合ずっとそこに住み続けることになりますが、もし投資物件としてとらえるならば、こういう取り組みをしているマンションは優良物件として付加価値が付き、資産運用としても高い収益を得ることが可能になります。そのため、地球環境に寄与するだけではなく、所有者にとっても直接的なメリットが得られる物件になります。

コロナ禍で社会問題に向き合う決意
こういった取り組みは、5年くらいかけてようやく具現化することができました。正直それ以前は「環境に良いことができればいいな」というくらいで考えている部分があったのですが、昨今のコロナ禍の影響は私たち清掃業に携わる者にとって非常に大きく、事業が立ち行かなくなるのではという恐れが生じました。私たちの仕事はインフラの一部であり、「エッセンシャルワーカー」と呼ばれます。「私たちが休んだら、誰がごみを処理するんだ」と、最初の緊急事態宣言のときも1日も休まずに現場に行き、ごみを搬出しました。とはいえ、コロナ禍の影響でビルや商業施設は一気に閉まったので、「清掃なんかいらない」といわれることもありました。コロナ禍もそうですが、環境問題、賃金上昇、人手不足などさまざまな社会問題にきちんと向き合い、対策をしなければならないと「SKILL LAB」に本腰を入れて取り組んでいこうと決意しました。
現在弊社では清掃の仕事をしたいという人が、直接管理会社から仕事を受けられるマッチングのプラットフォームサービス「CLEAR」の開発をスタートしました。UberEATSや出前館など、配達のプラットフォームは既にあるのですが、清掃に特化したものはまだ存在していません。「CLEAR」を使用して、仲介業者による中抜きを発生させず、信頼できる清掃業者と直接取引でき、人手不足も解消できるなど、さまざまな問題を解決する一助になればと思います。
ITの人力の部分を共存させながら、これまで清掃業に携わってきた方の負担を減らしつつ、業界全体を若者にとっても魅力的で働き甲斐のある業界へと変化させていけるようにこれからも努めていきます。
株式会社ビルスキル
CEO
長谷川雅士
1983年、東京都文京区生まれ。高校卒業後、アパレル業界を経て、ビルメンテナンス業界へ転職。2003年、株式会社ビルスキルのCEOに就任。2021年、SKILL LABを立ち上げ、2022年4月、社内ベンチャーとして、基軸事業であるT5ACTを開始。SDGsビジネスマスターの資格を取得。19歳と18歳の子を持つシングルファザーでもある。
https://www.buil-skill.com/