2023.03.06

ダイバーシティ推進の鍵となる、フェムテックの活用。

年々、規模が拡大しているフェムテック市場。「女性(Female)」と「技術(Technology)」を組み合わせた造語である「フェムテック」は、女性特有の健康問題についての悩みをテクノロジーの力で解決するサービスやプロダクトを指す。2035年には市場規模が5兆円を超えるという予想もあり、世界的にも大きな注目を集めている分野だ。国内でもスタートアップ企業だけでなく、大手企業が続々とマーケットに参入。昨年10月には自民党内で「フェムテック振興議員連盟」(会長:野田聖子自民党幹事長代行 / 衆議院議員)が発足するなど、日本において2020年はフェムテック元年と言われるほどの盛り上がりを見せた。

ダイバーシティ推進の鍵となる、フェムテックの活用。

フェムテック市場が急成長している背景

 生理を始め、妊娠や更年期、膣トレ、セクシャルウェルネスまで多分野で展開されているフェムテック。生理周期を管理するアプリや生理時に使用する吸水型サニタリーショーツ、低容量ピルをオンライン診療で処方するサービスなどが代表的なプロダクトと言えるだろう。これまで、女性特有の健康問題はセンシティブな内容とあって、タブー視されることも多かった。だが、女性の社会進出が進むにつれ、女性の影響力や発言力が大きくなったこと。SNSの発展により、性や健康について声をあげやすくなったこと。自分自身の身体と向き合う機会が増えたことなどがフェムテック市場が急成長している背景にあるという。最近、経済的な理由で生理用品が入手できないという「生理の貧困」がクローズアップされているが、そういった問題もフェムテックが広く知られるようになった結果、顕在化してきたものだと考えられる。

利活用を促す仕組み作り

 2021年3月には前述したフェムテック振興議員連盟が、制度の見直しや企業支援について政府に提言を行った。フェムテック関連製品として販売されているものの、現行の薬事法上では医療機器や医薬部外品として承認を得られないアイテムも多い。例えば、生理用として開発されている吸水型サニタリーショーツは生理用品の基準である「使い捨てである」などに該当しないため、医薬部外品として申請ができず「雑品」扱いで販売されている。制度が整っていないことにより、粗悪品が出回る可能性もある。そういった現状も含め、2021年6月に政府が閣議決定した「成長戦略フォローアップ」でも「フェムテックの推進に取り組む。特に、女性特有のライフイベントに起因する望まない離職を防ぐため、フェムテック製品・サービスの利活用を促す仕組み作りを2021年度から支援する」という文言が盛り込まれた。女性がより快適に働ける環境づくりのため、健康経営の一環にフェムテックを活用する取り組みも始まっている。

女性のQOLの向上を目指す上で欠かせない存在

フェムテックは、女性のQOLの向上を目指す上で今や欠かせない存在。現在は、生理や妊活ケアが中心となっているが、今後は高齢化社会に合わせた更年期や老化による健康問題をサポートするサービスやプロダクトが増えていくだろう。国内でも、その需要に応える形でオンラインでの相談アプリや更年期向けサプリメントなどが提供され始めている。そのほか、セルフプレジャーといったセクシャルウェルネスアイテムも注目度が高い。また、男性パートナーとカップルで使用する妊活アプリなども登場し、将来的にはフェムテックにこだわらず、ジェンダーフリーな視点からのプロダクトが増えていくことも考えられる。個々のヘルスリテラシーを高めることで女性だけでなく、多様な人々がいきいきと輝く社会へ。ヘルステックの一環となるフェムテック市場の発展と拡大も、多様性を活かしダイバーシティを推進するための鍵となりそうだ。

転載元:Qualitas(クオリタス)