2022.11.09

スポーツ障害の治療・リハビリを地域で提供

成長期の野球選手の投球動作などで生じるスポーツ障害である離断性骨軟骨炎、通称・野球ひじの早期発見のための検診を、京都府丹後地域で初めて実施したよしおかクリニックの吉岡直樹院長。痛みが出てから治療しても、復帰に時間がかかるスポーツ障害だが、都会に行かなければ治療やリハビリを受けられなかった。吉岡院長は、リハビリ施設も設けて、治療やリハビリを地域の中で受けられるように尽力してきた。そんな吉岡院長に、医療と地域に懸ける思いを聞いた。

野球ひじの検診と啓発に注力

当クリニックでは毎年、野球選手の肩ひじ検診を実施しています。治療が必要となった選手を競技復帰までサポートするために理学療法士や柔道整復師、トレーナーが多数在籍し、万全なリハビリテーションを行える施設を整えています。現在では野球選手だけではなく、多くのスポーツ傷害患者の復帰をお手伝いしています。

開業前に勤めていた地元の公立病院で、京都府内初となる「学童の野球ひじ検診」を実現しました。野球ひじは成長期のスポーツ傷害の一つで、早期発見が大切です。ただ、発見はできても、地元には競技復帰までリハビリができるような施設がありませんでした。勤務先にお願いして、診療時間を増やしたり、院内のリハビリ施設のレベルアップをしたりして対応していましたが、病院にもスタッフにも負担をかけてしまうのが心苦しく、自分でやるしかないと思い、開業を決意しました。

2016年の開業から6年経ち、野球ひじ検診とその啓発に注力してきたことで、地域で野球をする子供たちのスポーツ傷害が確実に減少したと手応えを感じています。野球以外にもさまざまなスポーツをする幅広い年代の方が来院し、「先生のおかげで競技に復帰できました」というような言葉をもらった時が一番うれしいですね。

地域医療に奮闘する医師にあこがれ

子供の頃は、地元で人の役に立つ仕事がしたいと考え、教師や公認会計士を目指そうとしていました。しかし、高校2年の時、地域医療に奮闘する医師の姿を描いた『信州に上医あり』(南木佳士、岩波新書)という本に感銘を受け、自分も医師となって地元である丹後に貢献したいと考えるようになりました。父は丹後ちりめんの紋工所を経営し、母は小学校教師と、医師とは無縁の家系で、高校は文系コースでしたので、担任教師にも「今から医学部を目指すのは無謀だ」と言われました。しかし、どうしてもあきらめきれず、高校3年で理系に転科して、苦手だった数学も必死で勉強し、1浪の末医大に合格することができました。

大学卒業後は、長野県や京都府の職員としてへき地医療に関わり、整形外科医として研さんを積みました。その頃、学童野球の指導者となった小・中学校の野球部時代の友人たちに久しぶりに再会し、子供たちが野球でけがをした時に診てくれる医師が近くにいないので、京都市内や大阪の病院まで通わなければいけないということを聞き、「スポーツ整形外科医になって子供たちを診てくれよ」と言われました。当時、出向先の救命救急センターで外傷整形外科医を目指して、命にかかわる大けがを治す仕事をしていました。スポーツ整形外科は、外傷整形外科とは要求される治療内容が全く異なり、患者から要求される治療レベルがとても高く、それまで敬遠してきたのが正直なところでした。しかし、地元で必要とされているならば応えたいと思い、スポーツ整形外科への道を歩み始めることになりました。

丹後のために良いことをしたい

リハビリ期間終了後から競技復帰までをサポートするフィットネスエリアを増設し、低酸素トレーニング室やリカバリー用の高酸素室も導入するなど、リハビリ施設の拡充を行いました。しかし、中にはリハビリを続けても思うように改善しない例もあり、そのデータを分析すると、自律神経系の不調との関連が分かってきました。そこで、自律神経を整える働きが期待できる温熱療法に着目し、米ぬかの酵素風呂とロウリュのできるフィンランド式サウナを併設した温浴施設「ぬかとゆげ」を立ち上げる予定です。フィンランド式サウナには、心血管系疾患や認知症、軽度うつ状態の予防や改善の効果も見込めます。新型コロナウイルス禍であっても、利用者のウェルビーイング向上に貢献できる施設にしたいと考えています。また、バリアフリーサウナについて先進事例の多いフィンランドへ視察に行って、日本ではまだ数少ない、車いすの人や目の不自由な人でも入れるバリアフリーサウナも作ります。現在クラウドファンディングも行っており、多くの方からご支援をいただいております。さらに「医者が教えるサウナの教科書」(ダイヤモンド社)の著者で、日本サウナ学会代表理事の加藤容崇・慶應義塾大学医学部腫瘍センター特任助教の協力も得ながら、医学的エビデンスに基づいた温熱療法を提供したいと思っています。

さらに、丹後を良くしたいという思いを持つ同志が作っているグループ「TANGO TANGO TANGO」にも参加しています。農家や大工、政治家、クラフトビール職人、織物職人、飲食店などさまざまな職業の方が、丹後を盛り上げるために異業種間で楽しいコラボレーションを考え、実現しているところです。地域の方々が「丹後に住んで良かった」と思えるようなお手伝いができればと考えています。今後も地域のために良質な医療サービスを提供し続けながら、いろんなことに挑戦していきたいですね。

よしおかクリニック

院長

1976年生まれ、京都府出身。2002年自治医科大学卒業後、京都府立医科大学整形外科入局。長野県や京都府の職員としてへき地医療に従事し、県立病院や救急医療センターなどに勤務。京都府立医科大学整形外科教室スタッフとして同大附属病院での診療と研究にも従事。2016年、よしおかクリニック開業。2022年11月末、予防医療を目的に米ぬか酵素風呂とフィンランド式サウナを併設した温浴施設「ぬかとゆげ」をオープン予定。

https://yoshiokaclinic.jp/