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コロナ禍受け 自販機育ちの「安くて丈夫なセルフレジ」開発 オクト・神保周平代表取締役

2021年07月07日

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大手コンビニなどで非接触型セルフレジの導入が進んでいるが、コンビニなどのセルフレジは高価で、個人経営のショップなどではなかなか手が届かない。そんな中、1980年代にアーケードゲームの電子基板開発からスタートし、現在自販機、コピー機などの課金システムを開発・製造している「オクト」が、安価で使いやすく、何より丈夫なセルフレジを開発した。風雨さらされる自販機で培った頑健で正確、ユーザーカスタマイズの自由度の高さが強みという最新機「CB-BOX-Neo」について神保周平・代表取締役に話を聞いた。

オクト 神保周平代表取締役

“1円と1万円問題”割り切って解決

大手コンビニなどの自動レジシステムはPOSシステムと連携した「ポスレジ」と呼ばれるものです。私たちは自動販売機、両替機、券売機などに使われている「コインメック・ビルバリ」という装置を使っている系統が全く違うものです。自動販売機の絶対条件は故障しないこと。自販機にお金を入れてお釣りがちゃんと出なかったら困ります。雨の日も風の日も外にあっても壊れずに正確にお釣りが出せる。それぐらいタフじゃないと自動販売機とはいえません。

新型コロナウイルスの感染拡大でお金に触りたくないという心理から、セルフレジの需要が伸び、釣銭機がよく売れています。しかし、釣銭機は非常に高価です。これでは個人店の導入は難しいと思い、弊社の作ってきた製品を改良して安価な製品を出せないかと考えました。

これまでの製品からアイデアを固めていきましたが、最後に1円問題に突き当たりました。通常、自動販売機では1円に対応していません。1円は軽くて薄いので機械内部に張り付いたり引っかかったりするので使えない。しかし、レジ袋有料化もあって、お釣りで1円を出さないわけにはいかない。そこで“足し算と引き算”です。1円を投入するのは不可だけど、お釣りで1円の対応をする。また1万円、5千円の高額紙幣は対応すると予算がかさむので、割り切って通常のレジで対応する。そう決めて新しいレジシステムを開発しました。

オクト 神保周平代表取締役

店舗の特徴にあわせたカスタマイズ

新製品「CB-BOX-Neo」は、お店での買い物ならば、商品をバーコードで入力、備え付けのタブレット上で決済、そして精算機にお金を投入し、精算という流れで、店員がお金に触ることなく商品を販売できます。

価格も30万円からと安価で、自販機育ちなので頑丈、故障や保守の心配もほぼありません。大きさも幅37センチ、奥行き15センチ、高さ62センチと、POSの釣銭機などと比べるとかなり小さいので、お店のカウンターに置いてはみだすということもありません。もちろんバーコードや他社が提供する電子マネー決済にも対応していきます。

レジ部分のアプリを自前で製作したいという方向けに、精算機のために開発したWindows10やAndroidのライブラリを無償で提供しています。商品や店舗の形態によって、プログラムを変えることも可能で、それぞれの店舗でより使いやすい形にカスタマイズできるのも特徴の一つです。プログラムには、ほかにも商品登録用のコンバーター、バーコードアプリなどのオプションもありますので、それぞれのお店の特徴を反映したレジシステムが構築できます。

CB-BOX-Neoにはレジアプリが付いていますが、レジ部分なしの単体販売も考えています。非接触型でコロナ対策だけでなく、将来的に個人やいろんな形で商売をされている方の力になれればと思って作りました。レジにかける人員も割けますし、レジ以外にもポップコーン販売機などの釣銭機や、行政機関のプリント出力サービスの支払いなど、さまざまな用途で使える製品だと思います。

新製品「CB-BOX-Neo」と神保周平代表取締役

コロナ後は新しい世界で役立つ製品を

元々「雷電」というアーケードゲームの電子基板などを作っている会社でした。当時は優秀な学生たちがパソコンを触りたくて、たくさん手伝いにきて面白かった。それから自販機システムの事業に移りましたが、ものづくりという意味では今でも業種を選びません。突拍子もないお話も時折来ますが、逆にその方が面白いと思います。

弊社で運営しているサイト「OCT888.com(オクト888ドットコム)」では、基板からアクセサリ、モニター、電解コンデンサーなどさまざまなものを売っています。アマゾンやモノタロウでも売っていないようなマニアックな商品で、「こんな商品本当に売れるんですか」と聞かれるのですが、実はこういったところから新しい出会いが生まれるのです。部品や基板をお求めになった方から、じゃあ次は筐体を作ってほしい、専用の基板を作ってほしいといった依頼をいただくようになりました。一般の方が見てもよく分からないものが、ある方にとっては宝箱のように見えるんです。自分で何かを作りたいという熱意のある方のお手伝いは楽しいものですよね。

私自身、作り手としての楽しみもありますが、働いてくれている社員たちを見る楽しみも大きいです。弊社は工場を持たないファブレスな製造業なので、人数は多くありませんが、1人1人それぞれセンスや特徴を持っています。そういう中から素晴らしい何かを発見した時が一番うれしいときですね。

この1、2年はコロナに関連した製品ばかり作っていたので、今後はそこから離れたものづくりをしようと考えています。そのプロジェクトは現在、特許を申請している最中なので詳しい話せないのですが、車、飛行機、船など今までコロナで苦しんできた業界の方々のための製品だと思ってください。コロナが終わった後、新しい世界で役立つ面白い製品になるのではないかとワクワクしているところです。

■プロフィル
1987年、東京・荻窪にアーケードゲームの電子基板の製造・販売会社として株式会社オクト設立。ゲーム基板のほか、自動販売機制御基板などの開発・製造を手掛ける。2008年、本社を茨城県守谷市に移転。自販機、券売機、両替機などの製造を手掛ける。2013年、小型課金装置「CB-BOX Slim」がグッドデザイン賞受賞。

株式会社オクト
https://octy.co.jp